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神伝物語 第一部  作者: 自認神
第一章
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第一話「とある少女」


かつて世界に’力'が満ち、やがて混乱がもたらされた。


力の使い方を知った人類はかつてない争いを繰り広げ、やがて全てを治める原初の王が誕生した。


神は世界の秩序と安定を求めてその王と臣下五名に力を与え、王国は繁栄を迎えることとなり、約五百年もの間世界を統治した。


しかし、長期に渡る支配体制により王族は腐敗し、耐えかねた臣下五名は離反。

それぞれ建国し独立した。


5人の臣下に神より与えられた力の属性にならい、それぞれ火の国、水の国、木の国、光の国、闇の国と名付けられ、それと原初の王族が統治する神の国を含めた六国による戦国時代が始まった。

ーロトスの「歴史」、序章より引用











ーーー

戦国歴318年、戦争を続ける闇の国、水の国の国境付近の川のほとりにて、1人の少女が闇の国の軍により捕えられた。


2年前から失踪したという水の国の王女、アクア・ジュリである疑いがあったため、闇軍により本国まで護送されることとなった。




闇軍四番隊隊長ダーク・ラスは伝達を受け、護送部隊との合流に向かう。



しかし、彼からすると、この状況は簡単に理解できるものではなかった。


ラス「…なぜ急に見つかったのですか?」

伝達者「国境付近を警備中に、眠っているところを発見しました。キャンプの跡と、紙切れが一枚あり、この少女は水の国の王女であると記載されていました。」



…ますます訳がわからないな

そう考える他なかった。











暫くして、護送部隊と合流した。


早速少女への尋問の成果を聞いたが、口を開かずただ何の情報も得られなかったとだけ伝えられた。



ラス「…仕方がないか」


彼は自身で尋問を行うことに決めた。

少女が乗せられている馬車へと案内され、初めて対面する。




見た目はただの旅人のようであったが、静かに座るその姿勢が平民ではないことを物語っていた。


顔に目を映すと、可憐な印象を受けたが、視線はじっと足元を見つめていて、口元は硬く結ばれている。



ラス「私は、闇の国四番隊隊長にして、国王ダーク・イスカンダルの息子、ダーク・ラスです。これからいくつか質問をさせていただきます。」

少女「…」


ラス「まず、名前は?」

少女「…」

ラス「年齢は?」

少女「…」

ラス「なぜあのような場所にいたのです?」

少女「…」


一向に答えない。




ラス「…これ以上の尋問はやめましょう」

少女「…」


ラス「これから貴公を闇の国の王宮に連れて行きます。残念ですが暫くは貴国の女王には会えないでしょう。」

少女「…!」



口元が少しばかり緩んだように見えた。



ラス「親に暫く会えないというのに、それでも良いのですか」

少女「…」


ラス「失踪したというのは、おおかた貴公が望んで行ったのでしょう」

少女「…」


ラス「水の国の女王が過保護であるというのは有名な話です」

少女「…」


ラス「…自分が言えたことではないが、親兄弟は大事にした方が良いですよ」

少女「…。」


様子は変わらないように見えた。












ーーー

国境付近から歩いて約1ヶ月が過ぎたころ、四番隊は王都へ到着した。




ラス「降りてください」

少女「…!」


王宮を目の前にして、少女が少しばかり目を見開いたように見えた。




しかし、おそらくはその一国の王宮には似つかわしくない小さな建物に対して驚いたのだろう。


ラス「…小さく見えるかもしれませんが、これでも我が国の王宮です。国王は倹約家なので。」




そのまま少女を国王の元へと連れていく。

広間を東側に行き、廊下を進んだ何でもないような普通のドアの前に立つ。




ラス「陛下!ラスでございます」

国王「おお!入っていいぞ」


悪く言えば腑抜けた声の先には、少し広めの机と、その奥の椅子に座る男がいる。



ラス「…陛下、臣下以外の前でそのような口調はお辞めください」

国王「堅苦しいな、お前こそその変な呼び方はやめろよ」


ラス「…まぁそうですね。父さん、例の少女を連れてきました」

国王「ほう、この子が」




男が少女の方に目をやると、少し呆気に取られたような顔が目に入った。


はっとしたのか、再び口元を硬く結んでいる様子であった。




イスカンダル「こんにちは。私は闇の国19代目の王、ダーク・イスカンダルである。どうぞよろしく」

少女「…」


イスカンダル「この様子じゃなんも聞けてないみたいだな」

ラス「そうです」

イスカンダル「ふむ…」



イスカンダルは再び少女に目をやったあと、納得したように頷いた。


イスカンダル「よし、お前にこのお嬢さんの世話係を任せる」

ラス「…はい!?」

少女「…!!」







ラス「なんで私が??」

イスカンダル「そりゃどうやら2人とも歳が近そうだし、うちの王子様でもあるお前が国を案内するのが妥当だろ」


ラス「そんなこといっても…」

イスカンダル「てなわけで頼んだわ」

ラス「ええ、、」

少女「、、」




2人とも困惑した様子である。


ラス「しかし私は男性ですし、異性の世話というのは難しいのでは?」

イスカンダル「そりゃそうだろ、身の回りの世話は俺の家内と使用人がやるさ。何変なこと考えてんだ。」


ラス「そういうわけでは…」

イスカンダル「お前はこの国について案内してやれ、いきなりの異国では不安も大きいだろうからな。それと…」




顔を近づけて小さな声で話す。


イスカンダル「できれば仲良くなって、情報を聞き出して欲しい。今回の件はわからないことだらけだが、次第によっては有利に進む」

ラス「…そうですね」




一通り言い終えたあと、イスカンダルは少女に視線を向けた。



イスカンダル「いきなりこんなところに連れてこられて不安だろう」

少女「…」


イスカンダル「俺だって本当はこんなことしたいわけではないんだが、お前の母ちゃんをなんとか諌めるまではこうするしかないんだ」

少女「…」


イスカンダル「俺たちはお前のことを雑に扱ったりはしない」

少女「…!」



イスカンダルは優しく微笑んだあと、再びラスに目を向ける。


イスカンダル「てなわけでよろしくな」

ラス「…分かりました」


イスカンダル「そう不満そうな顔をするな、お前にしか頼めないんだよ」

ラス「分かってます」




イスカンダル「…これはお前のためでもあるんだからな」

ラス「…」


少し表情を固くして言った。


イスカンダル「空き部屋をすでに掃除して用意してある、そこをこの子に使わせてやれ」

ラス「承知しました」

少女「…」







ラスは少女を部屋へと案内した。


ベットと机、クローゼットなど置かれた簡素な部屋だが、埃ひとつなく整然としている。


ラス「今日からはここで暮らしていただきます」

少女「…」


ラス「困ったことがあったらこの鈴を鳴らしてください、使用人がやってきます」

少女「…」


ラス「食事は日に3回、夕方には風呂にも入ってもらいます。このあと使用人がやってくるので、まずは風呂に入って服を着替えてください。」

少女「…」

ラス「…では、私はこれで」




ラスは部屋から出た。部屋の中で少女は座り込む。






遠ざかっていく足音を聞いて、ラスが遠ざかったのを確認すると、俯き、足を抱え込んで丸くなった。


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