あなたに出逢えて…
あたしは普通の女子高生だった。
何にも取り柄なんてない。ただ普通の女子高生だった。
里中 椿
十六歳、高1。
その日のあたしは、友達と約束していた。
約束の時間になって、急いで電車に。
ゆらゆら揺れてる電車の中…。
『ハァ…つーか疲れた』
そんなことを思いながらうとうとしていた。
…「…さん、お客さん、」
と、誰かがあたしを呼ぶ声。
「…ん、あ…すいません」
辺りを見回すといつもの電車の風景ではない。
「…あの、ここって…」「何言ってるんだいお客さん、ここは江戸だよ」「え、江戸~!?」
私はビックリして叫ぶ。「そういや、お客さん、どっから来たんだい?この辺じゃ見ねぇ服来てるけど…」
『…な、なんて説明すればいいんだろ…』
なんて思いながら、私は口にした。
「えっと…『どーしょ!?てかこれってタイムスリップ!?だよね!?』
「あぁ、わかった、この辺に引っ越して来たんだな?」
「え、はい…まぁ…」
「だから見ねぇ面だったんだな」
「そ、そうです、あ、用事あるんでこれで失礼します」
私は焦って、降りた。
辺りは、見たこともない建物。明らか現代の服ではない着物を来ていた。
『えっと…江戸ってことは昔の東京…だっけ!?』あたしはパニック状態。ていうかさっきからじろじろ見られてるし…
当たり前か。この時代にショートパンツにニーハイにキャミだからなぁ…。
『って言うか、とりあえずどうしよう!?まずは泊まるとこ…って…この時代のお金ない…(汗)』
なんて一人百面相。
そしたらよくわかんない不良みたいな人に絡まれた。
「おいおい姉ちゃん ちょっと付き合えよ~??」
どうやらそいつらは昼間から酔ってるみたい。
『…は。なにこいつら、今で言うナンパ?てか昼間から酒飲むなよ』
そいつらはあたしの肩をつかみ始めた。
「なぁなぁ~姉ちゃん」「…ウザ。」小声で言い、あたしはそいつらに蹴りをかました。
「…ウザイんだよ、黙れっつの!!!」
「…グハァ!!!???」
そしたらそいつの仲間が来た。
「おいおい姉ちゃん、なにやってんだよ~?」
「…ウザ。」
ボカッ!!!ドカッ!!!
「ウワァ…!!!!」
「グハァ!!!???」
やがてそいつらは逃げていった。
自慢じゃないけど(いや、ちょっと自慢かもしれないが)私には二人兄がいて、小さな頃からずっと兄のけんか相手だった「フン…弱い…」
《ズキッ!!!》
「…っ!?」
足が腫れていた。
「っ…痛い…」
あたしはふらふらしながら壁に寄りかかった。「…っ痛」
痛くて痛くて頭がボーッとする。
必死にこらえた。
「大丈夫かい?」
誰かが声をかけてきた。「大丈夫…です…」
必死に声を出す。
「…大丈夫じゃねーな…ちょっと我慢してろ」
「…っ!!痛っっ」
……
しばらくすると痛みを感じなくなり、少しだけ、楽になった。「大丈夫か?ほら、立てるか?」
「…あ、ありがとう」
「どういたしまして、あんた名前は?」
「椿、椿…です」
「椿、か。俺は十矢よろしく」
「あ、うん…」
「そういや椿、お前泊まるとこないんだろ?」
「!?な、何で知って!?」
「見てたから」
「は!?《カァ!!!》」
「一人で百面相してたの。(笑)」
「あ、そっち…」
『っていやいやいや!!!そういう意味じゃないけど!!!』
「何?もしかして期待した??」「《カァ!!!》し、してない…!!!!」
「顔真っ赤だけど?(笑)」「うっさい///!!」
「んじゃ、行くか」
そう言って彼は、手を繋ぐ。
「え!?どこに!?」
「どこって、俺の家。お前泊まるとこないんだろ?」
「そ、そうだけど///」
「遠慮すんな、ほら行くぞ」
「う、うん///」
あたしは歩く。
しばらく沈黙…。
『な、なんか話そう…!!!』そう思い、
「あ…「足。大丈夫か?」彼はあたしの言葉を遮り話した。
「…あ、うん!!大丈夫…」
「そっ?ならよかった」
彼は優しく笑う。
「っ…《カァ!!》」
「どうした?」
優しく彼は言った。
「な、何でも…」
「ふーん?」
そう言って歩き続けた。 『つーか、何でこんなドキドキしちゃってんの!?』
おかしいよ、あたし。
何で初めてあった人に?てかあたしそういや友達と遊ぶ約束あったんだ(汗)忘れてた…
まぁ、いいか。どうせ、ドタキャンするつもりだったし…
あたしは携帯を開き、メールしようとした。
…って…圏外だし…
マジかよ。ありえねー。
そんなことを思いながら、十矢の家。
小さいけれど←失礼
安心感があった。
「どーぞ。」
「あ、ありがとう…」
…そういやありがとうと言ったのは何年ぶりかな…。 ずっと素直になれなかったし。
あたしが素直になれないせいで傷付けた人もたくさんいた。中学生になってからは嫌われまいと、無理して笑顔作ってた。
知ってた?作り笑顔って案外難しいんだよ。
あたしはそれをずっと続けてきた。
「…い、おい?」
「《ハッ》ごめん…」
「いや、そうだ、椿、」「え?」
「これ、着てみない?」「これ…?」
それは淡いピンクの着物。
「か、可愛い…」
「だろ?」
「これ…あんたの?」
「なわけねーだろ!?妹のだよ!」
「妹さんいるんだ」
「ああ、まぁな、二年前死んじまったけど…な」十矢はどこか寂しげに、言った。
「…ごめん…なさい」
「なーに謝ってんだよ! ほら、着てみれよ?」
「う、うん…」
そう言ったけど…着物の着方なんて全くわからない。浴衣はわかるけど。着物なんて着ないし。
「…あの…着物の着方…わかんない…」
「ハァ!?」
「…だって…」
「ほら、こうだよ」
「あ、うん…」十矢の手が、私の体に触れる。
「…っ、」
「…ほら、できた。」
「…あ、ありがとう」
「いえいえ」
その着物は淡いピンクで桜柄 桜の花は椿が大好きな花だ。
今はもういない父と母とずっと昔桜を見に行ったことがあった。
「ところで椿、お前どっから来たんだ?」
「…信じてくれないかもしれないけど、未来から来たの。」
「未来…?」
「…うん。」
「……」『やっぱり、信じてくれない…か…』
「…スッゲーよ!!!未来って!!俺 実は未来気になるんだよなー!」
「…信じてくれるの!?」
「当たり前だろ?」
「…ありがとう。本当にありがとう」
あたしは涙を流しながらそう言った。
…本気で泣いたのは、
久しぶりだろう。
無理して笑顔を作ってた。
そんな自分、嫌いだった 大嫌いだって、ずっと言ってきた。
でも今、私を信じてくれる人がいる。
それだけで、強くなれる私、この人が好きかもしれない…
そう思ったとたんに、
顔や手が熱くなった。
「どうした?」
「な、何でも…///!」
「そっ?」
「うん///」
「そうだ、椿、どっか行きたいとこあるか?」
「え、えっと…どこでもいいよ…///」
「そっつーか、椿、顔赤くね?」
「へっ!?」
そう言ってあたしのおでこと十矢のおでこをくっつけた。
『うぁぁぁ!?』
「うわ、熱っ、大丈夫かよ?!」
「だ、大丈夫…だよ!!!」