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階段下の少女  作者: 尾見環
第一章
8/13

階段下の少女⑦

 家に帰った僕を待ち構えていたのはニヤニヤと笑う姉さんだった。

「やるじゃん、たくみ」

 どうやら僕の帰りが遅かったことを告白されたと勘違いしたらしい。すぐに否定する。

「全然そんなんじゃないから」

「じゃ、なんで遅かったの? いつも学校ダルって顔して遅くとも終礼前には帰ってるのに」

 そんな顔してないし、一年の時は終礼までいた。二年に上がってからは今日が初めてだけど。

「というか、カバンどうしたの? やけに膨らんでるけど。やっぱり何か手作りのお菓子を」

「貰ってない」

 姉さんの勘違いの悪化を防ぐため、スクールバッグを持ち、自室へと急いだ。隠し場所を探す。手作りじゃなくて商品だし、告白じゃなくて口止めだったけれど、女子から貰った事実に変わりない。追及の際、上手く言い訳できる自信がなかった。まあ、一人で食べきれる量じゃないからどのみち知られるけど。

 僕の予想は当たった。夕食を作りに来た僕は姉さんに誘拐され、様々な拷問と誘惑に耐え……切れず洗いざらい喋った。

「へえ、じゃあ、これ沙詠チャンに貰ったんだ」

 僕から奪い取ったブツを手中に収めた姉さん。それをしげしげと眺めている。

「なんでいきなりちゃん付け?」

「学織サンじゃお祖父さんと紛らわしいでしょ。たくみは学織市長って呼ぶの? 政治家のことずっとさん付けしてるのに今更」

 学織さん、学織沙詠さんの父方祖父は僕たちが住むこの市の市長を担っている。僕が物心ついた時からそうだから、任期が十年を超えていることは間違いない。所謂地元の名士だ。学織不動産自体、関東を中心にしている中堅企業で、経営者一族の学織家は何人か市会議員を輩出している。元々は呉服屋を営んでいたらしく、旧華族というわけではないものの名家と名乗っても差し支えない家柄なのだ。

「ちなみに私は誰にも喋ってないから安心していいよ。沙詠チャンに伝えといて」

「もう話す機会なんてないと思うけど」

 そもそも学年が違う。ついでに言えば過ごし方も。向こうは教室登校で、こっちは保健室登校だ。学生なんてクラスと部活が違えばほぼ他人。コミュニケーション能力の低い僕にそんな度胸はない。

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