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階段下の少女②
「おかえり」
聞こえた声に返事して僕は一階に下りた。リビングに向かう廊下からドアを開けると、高等部の制服を着た女子が歯ブラシをくわえ、スマホを弄っていた。姉のあゆみだった。
「ただいま」
視線を一切こちらに寄越さず、姉さんは言った。
「今日もまた告白されたの?」
彼女がスクールバッグから筆記用具等を出す傍ら、会話に興じる。姉さんは少し間を置いて、気だるげに返事した。
「まあ」
「すごいね。これで三人目ぐらいじゃない?」
「いや、告白されても別に嬉しくないし」
わが姉ながら姉さんは美しい。韓流アイドルのような左右対称の端正な顔立ちに加え、高い位置でお団子にしたダークブラウンのミディアムヘア。怜悧な印象を受ける切れ長の翠眼。存在感のある涙袋に透明感のある白い肌。潤いのある赤い唇。女子にしては低めだが、玲瓏な声。スレンダーな体つきだから、どんなファッションも彼女に似合う。
「ご飯食べる? もうできてるけど」
キッチンで食器をお盆に乗せ、ダイニングテーブルまで運ぶ。両親は共に医者で、二人きりで食事することも少なくなかった。