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階段下の少女  作者: 尾見環
序章
1/13

階段上の少女

 私立徳星(とくせい)学園中等部にはお姫様がいる。

 名前は学織がくおり沙詠さえ。一年生。彼女には様々な肩書がある。

 近辺では最難関の進学校と評される徳星学園に主席で入学した才女。学織不動産の社長令嬢。そして、誰ともつるまない一匹狼。

 そして、学園一の美少女。

 優し気な印象を抱かせるウェーブしたロングの亜麻色の髪。透明感溢れる澄んだ水色の大きな瞳。芸術品のような整った目鼻立ちに、潤いがあり血色のいい唇。レースにも譬えられる細やかな白肌。弱冠十二歳ながら洗練された品のある佇まい。華奢な体つき。滅多に見せない笑顔は愛愛しく、言い表せない程可憐だ。

 あらゆる生徒のあらゆる視線を受けながら今日も彼女は学校に通う。

 その心の内を知ろうとする者はいなかった。偏見や下心なく彼女と対等に向き合おうとする者は。

 ただ一人、相馬(そうま)たくみを除いて。今のところ。 

 

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