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森へ向かう

『キーン…コーン…カーン…コーン……』


「じゃあね〜美夜子〜」

「バイ」


学校の帰りのチャイムが鳴り響き、

カスミと校門で別れた後、

私は校舎の西にある、噂の森に向かっていた。


夢見(ゆめみ)の森」


広さはおおよそ1エーカー。

サッカーグランド一個分の大きさの、小さな森である。


ちなみに童話『くまのプーさん』に出てくる

100エーカーの森は、

東京ドーム8.5個分くらいの大きさらしい。


校門から歩いて10分程度で着くので

学校の関係者は、この森を訪れることが多い。


小さな森ではあるが意外にも長〜い歴史を持つ、

由緒ある神聖な霊地とのことだ。


森の奥には小さなお社が「ちょこん」っと佇んでおり、

縁結びの伝承も残っている不思議な雰囲気のある森だ。


……っと、さっきカスミに手渡された

新入生に配られる学校案内のパンフレットに、

そう書いてあった。


「よくこんなもの取っておいたわね、あの子…...」


美夜子は友人のマメさに感心しながら、

くしゃっとパンフを握りしめた。


美夜子は この森を訪れたことはない。


普段通っている通学路とは反対側にあるし、

休みの日に訪れるような機会も一度もなかった。


その事実に対して、

美夜子は心の奥底で「ちぇっ......」と、

少し悔しい気持ちを抱いていた。


美夜子は幼いころから

不思議なものが好きだった。


テレビもラジオも あまり好きじゃないけれど、

外で起きる偶然や、言葉では説明のつかない

ちょっとドキッとする不可思議な現象に触れるのが、大好きだった。


自分では意識していなかったが、

気づくとオカルト関係の読み物が部屋にいっぱい溜まっていたり、

たま~に普段自分が絶対に行かないような怪しい場所に、

ふらっと立ち寄ったりしてしまう。


中学時代は、こういう行いを何度も実行したせいで、

両親に多大な心配をかけさせてしまったこともあり、

高校に入学してからは、パタッと止めるようにした。


カスミは自分のそういう事情を、

よく理解してくれているのだろう。


「ここか……」


そうこう考えているうちに、

あっという間に森に着いた。


ふと周りを見渡すと、雪が降り始めていた。

12月21日。もうすぐ冬休みに入る時期だ。

16才の、高校1年生の時間も、もう少しで終わる。


美夜子はちょっぴり悔しかった。


中学を卒業してから、

あっという間に時間が過ぎて、

もうすぐ大人になるしかなくなる。


世界にはどうしてこんな不思議な人がいるのか。

世界ではどうしてこんな不思議なことが起こるのか。


それを通して自分がいちばん知りたかったこと。

自分が何故そういうものに心を奪われるのか。

自分の気持ちの不思議さを、解明したかった。


人生でいちばん素直な気持ちでいられる子供時代に。


それももう、叶わないのだろうと思うと、

心臓が締め付けられるくらい切ない想いが、

胸に押し寄せてきた。


そんな時に、小倉美夜子は一生に一度の

不思議な体験をすることになる。


挿絵(By みてみん)

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