雪の手紙
お兄ちゃんお帰り...」
「すまん、ちょっと休ませてくれ」
由衣は俺を見て驚く、それもそのはずだ俺は今は光を失っている。
俺は二階に上がり、自分の部屋に入る。
椅子に座る。
ここで志保と話したよな、あの日を思い出す。
当時は女性をこんな風にしたことに怒りを沸いていたな。
まあ、実際志保は俺を騙していて、相馬は利用されていただけだったな。
でも、俺と雪の写真を広めたのは相馬だったけどな、まあ、殴れたからいいや、雪も悲しまないだろう。
悲しまないって何様だよ、俺が一番悲しませてるのに。
結局志保も俺が一番悲しましてるし。全部俺が一番悪いじゃん。
琴音はピアノちゃんと弾けてるかな。
てか、俺って心配する資格もないよな。
気持ちが沈んで行く、どこまで、どこまでも深く。一度沈んでしまえばもう戻ることができないくらいに。
久々にアルバムでも観よ。
俺は立ち上がり、棚に向かって歩く。
確かここだよな、中学のアルバムを取る。
すると、一枚の手紙が落ちる。
あ。
拓哉へと書かれている手紙が落ちる。
なんで、なんでだよ。
後ろを確認する。
雪が死ぬ三日前の日付が書かれていた。
俺は、読み始める。
既に、泣きそうな目で。
『拓哉へ。私ってもう死んでいますか? てかこの手紙を読んでる時点で確実に死んでるよね。嫌だな、死ぬの。怖いよなんで私なの、もっともっと拓哉と一緒に生きたかった。
花火を観に行ったり、遊園地に行ったり、旅行に行ったり、沢山したいことがあるのに現実は残酷だね。
私が拓哉に傷を見せた時覚えてる? あの時はごめんね。どうせ死ぬなら拓哉には私を愛して欲しかったの。けど、愛情表現の仕方をミスったよ。
それなのにさ、拓哉は優しいから私に幻滅しないで救おうとしてくれた。
とっても嬉しかったよ、本当に嬉しかった。
けど、私はどんどん追い込まれていたの、死ぬという恐怖感、拓哉と会えなくなってしまう不安感。
そして私は自殺しようとした。その時だった、その時私を強く抱きしめて付き合おうって言ってくれた。
本当に罪な男だよ好きでもないのにさ、付き合おうなんて普通の人は言えないよ。優し過ぎるよ。
その優しさは罪だよ。
私は気付いていたよ、好きじゃないってことを。
でも恨んでなんかいないよ、だから安心して。逆にもっと好きになったし、救われたよ。
もし、今罪悪感を感じているならさ、地獄でも私の面倒を見てよ。
多分私と拓哉は地獄行きだよ。先に待ってるからね。
最後に、二つ約束して。
拓哉、自分自身の気持ちに向き合って、そして言いたいことをちゃんと言って。やりたいことをちゃんとやって。じゃなきゃ恨むよ。
そして、幸せになってね。
胸が張り裂けそうなくらいの恋をして、そしてその人を幸せにして約束だよ。
拓哉、私はずっと愛してる、ずっと愛してるよ。
じゃあ、地獄で待ってるね。バイバイ愛しの拓哉。ずっと大好きだよ』
雪、雪。
俺は本当に馬鹿だ、気付くのがいつも遅い。
いつも笑っていて、いつも楽しそうで、俺の隣に居てくれた。
どんなに辛くても笑顔で笑ってくれた。どんな時も笑顔を絶やさなくて優しくて俺の全部を受け入れてくれた。
そんな雪が、雪が。
俺は好きだった。
決して止むことない雨が降り続けた。




