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やがて光は消える

「俺は...」

 体から力が抜け俺は膝から崩れ落ちる。

 どうすればいいんだよ。

 地面を殴る。

 どうすればよかったんだよ、何を選んだらよかったんだよ。

 俺が志保を悲しませた。俺が、俺が。

 ただ、ひたすら泣くことしかできなかった。

 考えることもできない、立つこともできない。

 俺は何ができるんだ。

 小雨は強くなっていき大雨に変わる。

 俺は、俺は。

 もうやるしかないんだ。

 光を殺し、闇を吸い込む。

 心を殺し、鬼を宿す。

 俺が生徒会長になって誰も悲しまない学校を作る。

 そして、重い思い想い足に力を入れて立ち上がる。

 

 放課後。

 「まず、拓哉の印象をどうするかだよね」

 早百合は険しい顔で言う。

 俺たちは部室に来ていた。

 早百合と有紗と俺の三人で話し合をしている。

「それが一番大切だよな」

 まずはトップ4に入らないと話にすらならない。

「でも、どうするのがいいんでしょうかね」

 有紗は首を傾け俺たちを見る。

「そうね、どうしようかしら」

 早百合は疲れ切っている声で言う。

「何もないよな」

「それなら...」

 三人で意見を出し合っても、どうしても穴がみつかる。

「それもだめだな」

 いくら話し合っても答えは出なかった。

「今日はここまでにしよう」

 俺の解散の一言で部室を出て行く。有紗は鞄を持ちすぐに帰っていた。

 早百合は俺が部室を出るのを待っていた。

「俺、今日やることがあるから先に帰ってといてくれないか?」

「分かったわ」

 早百合はそう言い。階段を降りて行く。どこか不安そうな足取りで。

 明日から何かしらの取り組みをしなきゃいけない。

 最初が肝心だ。

 それに、環奈が何をしてくるか分からない。

 もしかしたら、俺は急いで部室を出る。

 一方早百合は環奈から勧誘されていた。



 ※早百合視点

「一緒に拓哉を退学させない?」

 私は今どんでもない提案をされている。

「私がそんな提案を受け入れると思いますか?」

「ふん、思わないな、だけど君も拓哉に対する険悪感があるだろう」

「そんなの一ミリもないんですけど」

「そんな冗談はやめようよ、君も思っているはずだ心の奥底で」

「いえ、私はただ拓哉のことが好きなだけです」

「その好きは叶う恋なのか?」

「分かりません、けど、叶わない恋はしちゃ駄目なんですか?」

「いや、全然いいと思うよ、ただ馬鹿だと思うがな」

「馬鹿とは?」

「君は拓哉の過去を知っているか? 拓哉は雪が好きだと知っていたのに勇気がなくて付き合わなかった」

 そうか、環奈は本当のことを知らないんだ。

 どうする、言うべきか。いや拓哉本人が言うべきだ、私は邪魔しちゃ駄目だ。

「へーそうなんですか」

「そうだよ、つまり拓哉は優しいと自負しているくせに最低な人間なんだよ」

「あなたに拓哉の何がわかるんですか?」

「分かるとも、雪からすべて聞いている。それに雪がどんなに拓哉のことを好きになっても拓哉は応えてくれない、そして拓哉はクズだぞ、ずっと逃げているクズだ」

「理解してませんよ、何も」

「は?」

「それに、拓哉はそんな人じゃないし、雪も知っていたと思いますよ」

「何がわかるんだ、雪の何が分かる?」

「全部、雪の気持ちも全部分かりますよ」

「何? 雪の気持ちが分かる? ふざけるな雪は拓哉をずっと愛していたそれなのに、拓哉はあいつは現実から目を背け逃げていたんだぞ。こんな辛い想いをしたんだぞ雪は」

「拓哉は雪と付き合ってましたよ」

「は?」

 走ってくる足音。

 この足音を聞くのは二回目だな、いつも困ったときにいつも聞こえる安心する音。

 荒い呼吸で私たちを見つめている拓哉に目を向ける。

 拓哉の目は迷いのない目をしていた。

 その目を見て思う、きっと拓哉ならこの残酷な世界を救ってくれると。




「環奈」

 俺を冷たい目で見つめる。

「どういうこと? 付き合っていたの」

 ちゃんと言うんだ。俺が今思っていることを、もう忘れない。

「ああ、付き合っていた」

「そんな、じゃあ私と話していた雪は偽物なの」

「違うよ、きっと俺が、俺があんな風に付き合ったから雪は環奈に相談したんだ」

「あんな風?」

「うん、俺は雪のことが好きじゃないのに付き合った、付き合えば雪が救われると思ったから」

 泣きながら呆れた顔をする環奈。

 そして俺の方に向かって歩く。

「それは、本当なの? 本当に好きじゃなかったの」

「う、うん」

 志保に言われたんだこんな嘘は優しさじゃないって。だからもう、嘘を付くな。

 環奈は俺にビンタをする。

「最低、最低、最低、地獄に落ちろ、二度と雪の名前を呼ぶな」

 俺の胸を叩く。何度も、何度も。

 「だから、雪は環奈に相談したんだ、俺が好きじゃないのはバレていたんだ。それで環奈に相談したんだと思う」

 自分でも、嫌いになる。どうしてこんな最低なことが言えるんだ。

「もう、私はお前のことは嫌いだ。二度と人を救うなどの発言はしないでくれ、お前に資格がないから」

 そう言い、環奈はゆっくりと歩いて行く。

 俺たちはただ見守るしかなかった。

 早百合は固まっていて、俺は絶望していた。

 雪は俺の気持ちを知って付き合っていたんだ。

 知っていたんだな。知って、いたんだ。もう後悔しても遅いよな。

 ああ、地獄に行きてえよ。

 俺たちは静かに帰った。

 まるで世界から音が消えたように静かに。

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