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8話 優しさは時々凶器となる

いたってシンプルな結果になった。3週間の自宅待機を命じられた。3週間か。

入学して数週間しかたっていないのに3週間も学校に来なかったら、悪目立ちするはずだ。

 後悔なんかなかった。変わったことは早百合から連絡が来なくなったことだ。

 仕方ないことだ。俺のことなんか嫌いになっているはずだ。

 数日しか過ごしていないのに、彼女がいないと寂しい気持ちになっていた。

 けど、仕方ない。だって、早百合はスクールカーストの最上位だ、

 そんな人が俺と関わると落ちてしまう。

 ※

 明日から登校か。正直怖い。俺は悪い事なんてしてないのに、してる気分になっていた。

 ある、1つの考えが浮かぶ。俺がしたことって志保の助けになっているのか。

 俺は救えたのか。時々自暴自棄になってしまう。この3週間で性格が変わってしまった。

 大丈夫俺は悪い事なんてしてない。大丈夫、大丈夫。

 ココアを飲み、落ち着く。今日は早めに寝よう。

 朝起きると、いつもより早く起きてしまった。

 妹は学校でイベントの準備があるため早めに学校に行ってしまった。

 今日は月曜日じゃないのにどこか憂鬱だった。

 行きたくねー。独り言が漏れる。朝食の目玉焼きをずっと見つめていた。意味なんて無いのに。

 頑張れ俺。俺は何も悪い事なんかしてない。大丈夫、いつもと変わらない学校だ。そう、自分自身に問いかけて家を出た。

 教室に着くと、早百合がいた。無言のまま自分の席に着く、教室には俺と早百合しか居なかった。

 春なのに風が吹く音がうるさかった。風なんかいつもはうるさいとは思わないのに。

 勇気を振り絞って早百合に声を掛ける

「久しぶりだね」

 俺の声は届いている。いるよな、、

 そうか、そうか。

 俺は自分の席に戻り、泣いてることがバレないように顔を伏せた。

 数十分経つと成瀬が教室に入って来た。

「お、久しぶりじゃん拓哉」

 涙を拭きとり顔を上げる。

「久しぶり、成瀬」

「相当、噂になってるぞ、お前が相馬先輩を殴ったって。」

「そっか」

「けど、理由があるんだろ、後で教えろよ。」

「俺のこと嫌いにならないのか?」

「なに、3年間親友だったんだぞ」

「ありがと」

「その人のこと知ってるのかしら?」

 俺たちの話に割り込んできた。早百合が。

「拓哉は私を騙していた」

 騙した?まて、俺は早百合に何もしてないぞ。やられた、相馬が何かを吹き込んだんだ。あいつは普通に登校している。この3週間で何かをしたんだろう。

見落としてた。だから、俺のことを無視していたんだ。

「は?」

 成瀬が怒っていた。

「あのさ、俺とこいつの話を邪魔しないでくれる?お前の話なんか興味無いんだけど」

「そうね、拓哉の友達だから性格悪いか」

 早百合やめてくれ、俺の友達の悪口だけは言わないでくれ。頼むから。騙されているのは分かっている、けど、これ以上は何も言わないでくれ。

「その人には気をつけた方がいいですよ」

「はいはい、ありがたき忠告です。天使様」

「あなたも彼と全く同じね、クズで性格が悪いのが、目を覚ました方がいいよ」

「あのさ、何が言いたいわけ?てかお前が一番性格悪くね?天使とかいわれてるけど、どうもそんな風に見えないな」

「あら、私が性格悪かったら彼はどうなるのかしら、それと、二度と話しかけてこないでね最底辺のお二人さん」

「お前って本当に性格悪いんだな、人を評価して勝手にランク付けしてるのきもすぎ、で自分の都合が悪くなったら捨てると。さすが天使様。後、俺お前ら二人が仲良さそうにしてたの知ってるし、お前だけは信じてくれると思っていたのにな」

 冷たい目で成瀬は早百合を見つめていた。

「そうね、私は彼とは絡みたくなかったよ。私の優しさで絡んでいただけ」

 え、え、嘘だよね。じゃ今までの時間は何だったんだよ。俺は寂しいと思っていた気持ちが馬鹿らしくなった。

「お前って奴は、本当にゴミだな」

「私には、二人の方がゴミだと思うけど、特に成瀬。君はゴミね」

「早百合もう、やめろ」

 これ以上友達を傷つけないでくれ。もう、どうでもいい。立場が違い過ぎた。関わるべきじゃなかった。

 「俺が悪かったから、これ以上成瀬を傷つけないでくれ。これ以上言うなら早百合のことが嫌いになりそうだ」

「嫌いになりそうって、私は嫌いだけど?なに、またやり直せると思ってた?後、あなたの友達も嫌いよ」

 「うるさい、何が分かるんだよ。俺がお前に何かしたか?相馬になんて言われた?それを信じるのか、それまでの関係だったのか、俺はお前といるのが心の底から楽しかった。なのに優しさで絡んでた?ふざけるなよ、俺のことを可哀そうな人みたいな目で見やがって」

 ダメだ、止まれ。言うな。言うな。

「そんな優しさ最初から要らなかった。俺の目の前から消えてくれ」

 ああ、思ってもない事ばかり口にしてしまう。

「そう」

 とだけ言い彼女は席に戻って行った。朝の教室は3人しか居なかった。悲しい雰囲気に包まれていた。俺は隣にいる成瀬に言う。

「ごめん」

「ああ」

 平等なんて無いんだ。

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