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拓哉の居ない学校

 ※凜視点

 朝早く起き、弁当を作り始める。

 拓哉はどんな料理が好きなのかな、ピーマンを切りながら考える。

 私の作った弁当を美味しく食べてくれたら嬉しいな。

 いつも、朝起きるのは憂鬱だったのに、今日はどこか楽しい目覚めだった。

 昨日の拓哉の料理は本当に美味しかったな、毎日作って欲しい。けど、絶対に無理だよね。

 スマホの通知音がなる。

 私のスマホは拓哉からの連絡以外通知を消している。

『ちょっと一週間休みことになった』

 また、人助けか。

 はあ、拓哉は本当に罪な男だ。

 本当は私の作った弁当を今すぐにでも食べて欲しいが、諦めよう。

 私は、少し意地悪な文を送る。

『また、人助けか。まあ、また作りに来てくれるなら許そう』

 これくらいなら、いいだろう。

 すっかり焦げてしまったピーマンを皿に移す。

 これくらい、私もできたらいいのに。



 「あのー聞いてますか」

 「すまないちょっと疲れていて」

 生徒会室では二年生だけの会議が行われていた。

 朝早くから起きているからか元気が出ない。いや、拓哉が居ないから元気がないんだろう。

 私は依存しているのかもしれない。

 なんで、拓哉のことを好きになったんだろう。

 今一度考える。

 多分あの時だ、私をしつこい男から守ってくれた時に好きなになったんだ。あの時とても格好良くて、まるで王子様に見えた。

 それに、何が起こっても私を庇ってくれる。そんな優しさが魅力的で、好きにさせる原因だ。

「では、これで会議を終わります」

 副会長の一言で解散していくと思ったがある一人の女子が手を挙げる。

「すみません、その、凜さんに次期生徒会長の拓哉さんに関することで聞きたいことがあります」

 私の目を見て言う。

 何を聞きたいんだ?

「ええ、どうぞ」

「その、今元気がないのって拓哉になにかされたんですか?」

 何を言ってるんだ、拓哉になにかされた?

「確かに、こんなに元気がない凜さんは初めて見るよな」

 男子が言う。

「いや、私は本当に何もされていないんだ」

「大丈夫ですよ、隠さなくても、私は凜さんの味方です」

「俺もですよ」

 生徒会室では、拓哉に対して酷い男という印象が付いていた。

 そして、誰一人私の意見を聞く人はいなくて、全員が拓哉を嫌っていた。

「本当に違うんだよ、疲れているだけなんだ」

「凜さん、拓哉を退学にさせましょう」

 だめだ、そんなこと絶対に駄目だ。

 なんでだ、私はただ拓哉のことが好きなだけだ、それに私の方が拓哉に酷いことをしている。急にキスをしたり、毎日迷惑を掛けているのは私の方だ。

 それなのに、なんで私じゃなくて拓哉の方に責任が行くんだ。

 私はただ拓哉が好きで付き合いたいだけなのに、それだけなのに、どうして、どうしてこうも、現実は残酷なんだ。

 なあ、拓哉この状況をどうにかしてくれ、私じゃもう無理だ。

 拓哉ならきっとどうにかしてくれる。

 そして気付く、私は拓哉がいないと確実に生きていけないと。

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