表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/91

変わりゆく拓哉の気持ち

※早百合視点

 拓哉は今、寝室で静かに眠っている。私は拓哉の横に座り。考える、拓哉どうしたの? 病院の時の拓哉と違って、今にも死にそうな顔をしていた。

 大丈夫かな。絶対に大丈夫じゃないよね。

 眠っている拓哉の頭を優しく触る。

 どうしてそんなに怯えてるの、どうしてそんなに死にそうな顔をしていたの。

 教えてよ、きっと救えるからさ。

 でも拓哉は教えてくれない、自分のことは絶対に話さない。

 どうしてなのさ、もっと弱い部分を見せてもいいのに。

 けど、私は拓哉の役に立っているのかな?

 いつも、泣いてから気付くこんなに追い詰められているんだと。

 私って無能ね。拓哉の優しさに頼ってばっかりだな。

 頭を撫でる。大丈夫だよ。私がずっと隣に居るから。



 ※拓哉視点

 ちょっとだけ見慣れた天井を眺める。

 瞼は酷く腫れていて、目を開けるのに力がいる。

 寝室は俺だけだった。

 忘れていたのにな、決して逃げることも忘れることもできない。

 どうして今なんだよ。

 早百合に余計な心配を掛けてしまった。

 早百合はどう思っているんだろう。あんなに酷く弱った俺を見て何を考えたんだ。

 深呼吸をする。深い深呼吸を。

 眠るが怖いな。また、同じ夢を見るんじゃないかって思ってしまう。考えただけで嫌になる。

 はあ、早百合になんて説明しよう。

 全部話すか。いや駄目だ、早百合を巻き込むのはなしだ。

 どうすれば、どうすればいいんだよ。

 近くに置いてあるスマホを取る。

 環奈に今度話すか。信じてもらえるのか。

 いや信じるはずがないな。

 「拓哉?」

 寝室のドアが開き。

 早百合が入ってくる。

「拓哉」

 ベットに飛び込む。

「よかった、目が覚めて良かったよ」

「ごめんな」

 俺を強く抱きしめる。

 俺も抱きしめたくなったがやめた、この手は誰かを幸せにする手じゃない。

「拓哉、ちゃんと話して」

 真剣な表情で言う。なんの迷いもない目で。

「無理だよ」

「なんでさ、私に相談してよ、そしたら救えるからさ」

「無理なんだよ、早百合を巻き込みたくない」

「いいよ巻き込んでも、大丈夫だから安心して」

「ごめん」

「私ってそんなに頼りない? そんなに無能そうに見える?」

「違うよ、本当に話せないんだ」

「なんでよ、頼っていんだよ、私ばかり頼るのは嫌」

「落ち着て早百合、俺は今大丈夫だから」

「大丈夫じゃない、あんなに死にそうな顔をしていた。それなのに大丈夫? ふざけないで」

「もう、本当に大丈夫なんだから」

「大丈夫じゃない、もう嫌なの、拓哉が壊れそうになるのが、泣いてるのが嫌なの、だからお願い私を頼って」

 泣きそうな目をして俺に問いかける。

「本当に頼ってもいいのか、俺のこと嫌いになるかもしれないぞ、酷くて残酷で悲しくて救いのない話だぞ、それでもいいのか」

 震えながら言う。

「私は拓哉のことがずっと好きだから安心して、ずっと傍に居るから」

 その言葉を聞き俺は泣く。

 そして、今までかけられていたバリアに少しだけ溶け始める。

 俺は幸せになりたい。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ