変わりゆく拓哉の気持ち
※早百合視点
拓哉は今、寝室で静かに眠っている。私は拓哉の横に座り。考える、拓哉どうしたの? 病院の時の拓哉と違って、今にも死にそうな顔をしていた。
大丈夫かな。絶対に大丈夫じゃないよね。
眠っている拓哉の頭を優しく触る。
どうしてそんなに怯えてるの、どうしてそんなに死にそうな顔をしていたの。
教えてよ、きっと救えるからさ。
でも拓哉は教えてくれない、自分のことは絶対に話さない。
どうしてなのさ、もっと弱い部分を見せてもいいのに。
けど、私は拓哉の役に立っているのかな?
いつも、泣いてから気付くこんなに追い詰められているんだと。
私って無能ね。拓哉の優しさに頼ってばっかりだな。
頭を撫でる。大丈夫だよ。私がずっと隣に居るから。
※拓哉視点
ちょっとだけ見慣れた天井を眺める。
瞼は酷く腫れていて、目を開けるのに力がいる。
寝室は俺だけだった。
忘れていたのにな、決して逃げることも忘れることもできない。
どうして今なんだよ。
早百合に余計な心配を掛けてしまった。
早百合はどう思っているんだろう。あんなに酷く弱った俺を見て何を考えたんだ。
深呼吸をする。深い深呼吸を。
眠るが怖いな。また、同じ夢を見るんじゃないかって思ってしまう。考えただけで嫌になる。
はあ、早百合になんて説明しよう。
全部話すか。いや駄目だ、早百合を巻き込むのはなしだ。
どうすれば、どうすればいいんだよ。
近くに置いてあるスマホを取る。
環奈に今度話すか。信じてもらえるのか。
いや信じるはずがないな。
「拓哉?」
寝室のドアが開き。
早百合が入ってくる。
「拓哉」
ベットに飛び込む。
「よかった、目が覚めて良かったよ」
「ごめんな」
俺を強く抱きしめる。
俺も抱きしめたくなったがやめた、この手は誰かを幸せにする手じゃない。
「拓哉、ちゃんと話して」
真剣な表情で言う。なんの迷いもない目で。
「無理だよ」
「なんでさ、私に相談してよ、そしたら救えるからさ」
「無理なんだよ、早百合を巻き込みたくない」
「いいよ巻き込んでも、大丈夫だから安心して」
「ごめん」
「私ってそんなに頼りない? そんなに無能そうに見える?」
「違うよ、本当に話せないんだ」
「なんでよ、頼っていんだよ、私ばかり頼るのは嫌」
「落ち着て早百合、俺は今大丈夫だから」
「大丈夫じゃない、あんなに死にそうな顔をしていた。それなのに大丈夫? ふざけないで」
「もう、本当に大丈夫なんだから」
「大丈夫じゃない、もう嫌なの、拓哉が壊れそうになるのが、泣いてるのが嫌なの、だからお願い私を頼って」
泣きそうな目をして俺に問いかける。
「本当に頼ってもいいのか、俺のこと嫌いになるかもしれないぞ、酷くて残酷で悲しくて救いのない話だぞ、それでもいいのか」
震えながら言う。
「私は拓哉のことがずっと好きだから安心して、ずっと傍に居るから」
その言葉を聞き俺は泣く。
そして、今までかけられていたバリアに少しだけ溶け始める。
俺は幸せになりたい。




