69話 これから始まる恋
何を考えているんだ。俺はもう逃げないって決めたんだ。
何か理由を探して逃げるのはやめよう。俺はもう後悔したくない、失いたくない。だから、助けを求めている人は全員助けたい。
そのために俺は、こんなことをしている。
大丈夫だ俺のやっていることは意味がある。だって救われている人も実際にいる。だから俺のしてきたことは間違いではないんだ。
しっかりしろ俺。
俺はいくら傷ついても大丈夫だ。
だけど、他の人が傷つくのは嫌だ。だからこそ俺はみんなを助けたいと思った。そう思ったから俺はこんなことをしている。
排泄物を流し。トイレを出る。
自分の席に戻る。
早百合は寝ていた。バレないように横に座るそして思う。
ちょっと楽しみだな。
「早百合着いたぞ」
早百合の肩を掴み体を揺らす。一向に起きる気配はない。もしかして死んだか。なんて冗談を考えていると早百合は目を開ける。
「あら、おはよう」
目を少し開き俺の顔を見る。
「ずいぶんぐっすりと寝ていたぞ」
「そう、でも私の肩で四時間も寝ている人もいたけど」
「すまん」
「寝顔可愛かったよ」
確か人間て寝て起きたとき脳はまだ起きてないって聞くよな? どこからこんな言葉が出てくるんだよ。
「早百合もな」
「知ってるわ」
いつも通りの早百合に戻ってると、思ったがそれ違った。
俺の方に向かって手を伸ばす。
「手、繋ぎましょ」
早百合の手は、あれだ、よく映画とかでダンスを誘う時みたいに手を伸ばしている。多分この世で断れる人はいない。
俺はそっと手を伸ばす。
そして早百合は強く握る。
「ありがと」
今までで一番な笑顔を見せる。なんだこの破壊力は。
俺たちは荷物を持ち、飛行機から出る。不安と淡い期待と悲しみを持って。
「その、本当にここなのか?」
「うん」
早百合と二カ月間住む場所はとんでもない場所だった。
でかいっていう言葉が安く感じてしまう。
二カ月間ここに住むのか。
俺たちはドアの前に立つ。
早百合はカギを手に持ち、ドアを開ける。
ドアが開く。
そこから見える景色は、まるで博物館だった。これ、住んでいい場所なのか。不安になるほど綺麗に整備されており。全部が高級品だった。
俺たちは中に入る。
「拓哉」
「どうした?」
「その、部屋どうする?」
どうするってもちろん俺と早百合は別々の部屋だと思うが。
「部屋が二つあるなら別々じゃないか?」
「多分寝室は一部屋しかないの、昔ここに来たことがあるの、その時言われたの、寝室は一部屋だけって」
「なるほど、じゃあ、一緒に寝るしかないな」
「うん」
どこか嬉しそうに返事をする。
また、抱き枕にされるんじゃないかって考えてしまうが、考えないようにしよう。多分されるから。
俺たちは、大きいリビングに向かう。
リビングであっているのかここは。
貴族が長いテーブルでご飯を食べる場所にそっくりだぞこれ。
荷物を置き。
俺は気になったことを早百合に聞く。
「てか、二カ月間何をするんだ?」
早百合は鞄を漁り、大量の資料を俺に見せる。
資料にはこう書かれていた。
1アメリカの経済について
2私たちとの経済の関係
3世界の財閥
4アメリカについて
5世界の問題
6偉人について
などの、レポートを書くように指示されていた。
「これを二カ月間でレポートを書いてきてって言われたの」
「これって、二か月必要なのか?」
「え?」
「いや、その、多分俺3番以外全部書けるかもしれない」
「え?」
「もしかしたら一週間で帰れるかも」
「え?」
早百合は言葉を失っていた。
早百合の親は天然なのか。
「拓哉」
「?」
「頑張りましょ」
大爆笑をする早百合。それを見て思わず俺も笑ってしまう。
この時は知らなかった。早百合の気持ちが爆発することを。
そして、長くて短い一週間が始まる。




