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68話 過去に向き合う時間

早百合視点

 「フライト時刻になりました」

 アナウンスと同時に飛行機は走り出す。2ヶ月間拓哉とアメリカにいる。

 私の事情で勝手に巻き込んだのに、楽しそうな顔をしている拓哉が横に座っている。

 私って本当にわがままだな。視線を下に向けて考える。

 なんであの場面で、好きって言ってしまったのかな。

 絶対言うべきタイミングじゃなかったよ。

 拓哉は驚いた表情していたけど、どう思ってるんだろう。

 うん、ってだけ言って私の荷物を持ってここまで来たけど何を考えているのかな。不安と淡い期待をしている。

 もしかしたら、拓哉も私のことが好きなのかもしれない。だって、みんなじゃなくて私を選んでくれたから。

 いや、そんなことないわね。

 考え事をしていると拓哉は私の肩に頭を乗せる。

 拓哉の方を向く、優しい顔をして寝ていた。きっと、色々考えていたんだろうな。

 ごめんね。

 頭をそっと撫でる。バレないように。

 ありがとね、拓哉。私を選んでくれて。

 淡い期待は否定すればするほど、どんどん大きくなっていく。

 きっと、窓から見える雲にも負けないほどの淡い気体だ。

 飛行機が飛んでから早4時間。拓哉はまだ私の肩に頭を乗せ眠っている。

 一方私はスマホで動画を見ていた。

『男性の脈あり行動』

 こんな動画なんて見ても意味ないと分かっているのに、いつの間にか見ていた。

 別に気になったわけじゃない、ただ、どんな行動が脈あり行動なのかな、って知りたかったから見ている。

 なるほどね。

 男子は、好きな子の前だと声が大きくなったりする。

 男子は、好きな子と話していると自然と笑顔になっている。

 全て当てはまってないな。でも、でもよ、女子の肩に頭を乗せて寝ているのってある程度脈があるってことだよね。

 何故か、新しい考えを浮かべ自分に言い聞かせる。

 何してるんだよ私。

 でも、多分拓哉は好きな人はいないよな。いたらこんなことはしてないと思う。

 けど、チャンスってことだよね。

 寂しい気持ちなんてどこか行っていて、今は拓哉のことばかり考えてしまう。

 私は、誰にも譲らない。




 ※拓哉視点

「お前は、幸せになったら駄目だ。お前は、人を殺しかけてる。お前は、優しい自分を演じて人を騙している。お前は、 みんなを騙している。お前の内なる性格は暴力的だ」

「違う、あれは雪や成瀬を馬鹿にされて怒りに身を任せてしまったんだ、それに、俺は何も演じてないし騙してもいない」

「何も違くない、お前がいない方がみんな幸せになる」

「違う、違う」

 涙を流しながら目が覚める。

「どうしたの?」

 心配そうな表情をして俺を見つめる。

「俺って、怖いか」

「何も怖くないよ。あの写真を見たとき怖いと思ったのは確かだけど、事情を知ったら怖いっていう感情は無くなっていたよ、ただ、大切な人を守ったんだよ」

「そ、そっか」

「ごめん、トイレ行ってくる」

「う、うん」

 俺は立ち上がりトイレに向かう。

 トイレに入り。

 便器に顔を向ける。

 うぇ。便器に向かって吐く。

 気分が悪い。それに また、この夢かよ。この夢を見るとどうしても不安になってしまう。今まで積み上げてきたものが崩れて行ってしまうように思ってしまう。

 いったい俺はどうしてしまったんだよ。もう問題は解決したのに。雪のお姉さんだって仲良くなれたのに。

 何が俺をこうさせるんだよ。

 何がトラウマなんだよ。

 この夢を見る意味を教えてくれよ。

 頭が痛い。

 俺ってなんでみんなを助けようと思ったんだ。

 理想と裏腹に、だんだん闇に飲み込まれていく。

 俺って何がしたいんだ。

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