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66話 俺は〇〇〇を選ぶ

「明日の七時の便で飛ぶから。もし明日一緒に行ってくれるなら空港に来てチケットも用意してるから、じゃあ、帰るね」

「ま..」

 俺の声を無視して玄関に向かい家を出た。止めることはできなかった。なんて言えばいいのかわからない。

 明日の七時の便か。

 俺がもし、早百合を選んだら、他のみんなはどうなる。まして、凜先輩は明日から弁当を作ってくれるって言っていた。明日行かなかったら確実に悲しむ。それに琴音との旅行もいけなくなる。

 しかし、早百合を選ばなかったら一番悲しんでしまう。限界だったから俺に頼ってきた。

 選べないよ。

 二か月か。

 確かに、俺がいなくなった二か月なんて想像できないな、少し怖いよ。俺が居た居場所が無くなっている可能性だってある。

 琴音や凜先輩が新しい恋をしている可能性だってある。いろんな可能性があるよな。

 二か月で変わらないって、言ってた俺をぶん殴りたいぜ。

 誰を選ぶか、だよな、早百合かそれ以外か。

 まだ、楓の問題だってある。それに解決していない問題だって沢山ある。

 けど、一番大切にすのは早百合じゃないのか。

 しかし、俺が居なくなったら他のみんなはどうなるんだ。

 志保はまた自分を傷つけるかもしれない。

 琴音はピアノを辞めるかもしれない。

 凜先輩は生きる意味が無くなるかもしれない。

 直美は勉強のやる気が無くなるかもしれない。

 幸の問題だって解決していない。

 花梨の問題も解決していない。

 楓の問題も解決していない。

 それに、また由衣を一人にしてしまう。

 これだけ考えると、早百合以外を選ぶ方がみんな幸せに笑っていられる。

 早百合を選んだら悲しむ人が出てくる。

 みんなを選んだら早百合が悲しむ。

 どうすればいいんだよ。誰も悲しまない道はもうないのか。

 必ず誰かが悲しむ。

 俺は誰を選べばいいんだ。どの選択が最善なんだよ。どの選択が最悪なんだよ。もうわからないよ。

 テーブルに伏せる。

 早百合、俺はみんなを選びたい。



 考えること7時間。時刻は朝6時になっていた。

 もう決めなきゃ。

 お風呂も入り、学校の準備も終わっている。オールだから今にも眠りそうだが、寝ている暇はない。

 俺は考えなくちゃいけないんだ。

 紙に書いた文字を眺める。

『早百合を安心させる方法』

 何も思いつかないや。どれだけ考えても、何も思いつかない。

 倒れそうになる体を無理やり起こす。手で顔を叩き気合を入れる。

 よし、考えるんだ。

 俺はもう早百合以外を選ぶことを決めていた。

 仕方ないよな、仕方ない、そう自分に言い聞かせる。

 九月は琴音と旅行で今日から凜先輩は弁当作ってくれる。それに学園祭やイベントがある。それをみんなと回る。その方がみんなが幸せになる。

 だから、だから、俺は。

 俺は、俺は、俺は、俺は。

 スマホだけを持ち家を出る。時刻は6時20分まだ、まだ間に合う。

 やっぱり、無理だ。いつも横に居た。早百合が学園祭に居ないって考えることはできない。

 いつも隣に居て、俺に優しくしてくれた。最初は最悪な出会い方だったが、今は隣に居ないって考えるのは無理だ。

 いつも隣で笑って、美味しそうにパフェを食べて楽しそうにしていた。そんな彼女が死にそうな目で助けを求めていたそれなのに、俺は何を迷っていたんだよ。

 一番大切にしないといけないだろ。俺の、馬鹿、クズ。

 早百合が病院に来てくれなかったら壊れていた。救われたんだ。だから今度は俺が助ける番だ。

 他の問題は明日の俺が何とかしてくれるだろ、だって俺は次期生徒会長だぞ。

 格好よくてダサい考えを浮かびながら俺は走る。

 久々に走ったはずなのに体力は残っていた。

 早百合を一人にしない。

俺は車よりは遅いけど、鳥よりも遅いけど。世界中で一番速く走っている。

 

 

 

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