表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/91

62話 凜先輩の告白

 ※凜視点。

 拓哉の噂が流れる前日。

 自分の部屋でスマホを眺めながら考える、私って誰の役に立っているんだ。

 名門高校の生徒会長として、ちゃんと務めることはできているのか。不思議に思う、本当に私が生徒会長で良かったのか。

 私は本当に拓哉のことが好きなのか。

 スマホで時刻を確認する。

 すっかり深夜だな。深夜になるといつも考え事をしてしまう。不安にもなる時間だ。

 誰にも言えない私の秘密は拓哉は気付いてくれるのかな。淡い期待をする。

 そんなわけないか。拓哉は私なんかに興味すらないだろう。

 夏なのにどこか寒く感じる。

 多分私は負けヒロインになるだろうな。誰の相手にされないまま死んでいくだろう。悲しい人生だ。

 拓哉、君は優しすぎるよ。誰でも助けよとする君には少し嫉妬してしまうよ。

 いつも、必ず助けた人は君のことを好きになっていく。それってさ罪な男じゃないか拓哉。

 いつか、選ぶ日が来るだろうな。けど、私はきっと選択肢に入っていないだろう。

 自分で考えて泣きそうになる。

 私は拓哉のことが好きだ。だけど、付き合うことができない。

 なあ、拓哉。私はどうしたらいんだ。誰を好きになって、誰と付き合えばいい。教えてくれよ、罪な男。

 私は、どうしたら。

 熱くなる体、熱くなる心。きっとこれは風だな。

 

 ※拓哉視点

 ここが凜先輩の家だよな。

 凜先輩はどうやら無断で学校を休んでいるらしい。なんで俺が凜先輩の家に向かっているかって?

 俺は、昨日何故か泣いていたが、咄嗟に言い訳をしてなんとかなった。そして、楓と学食を食べた後。急に生徒会室に呼びらされて、凜先輩の家に行くよう言われたから今ここに居る。

 どうやら、俺が次期生徒会長だから、らしいが、本当に俺で大丈夫なのか。

 だって、まだキスされたあの日からちゃんと話していないし。

 まあ、何とかなるだろ。そう思いインターホンを押す。

 出てくる様子はない。大丈夫なのか、中で倒れているんじゃないか、不安になる。

 待つこと五分。出てくる様子はないな。これは、仕方ないよな。

 ドアに手を掛ける。犯罪にならないよな? いや、ちゃんと犯罪だな。

 でも、凜先輩が無断で休むなどはしないと思う、なにか大変なことがあったんだ。

 俺はゆっくりとドアを開ける。

 中に入ると、とても暗かった。一人暮らしなのか? 靴は一足しかなく、それは凜先輩の靴だった。何考えてるんだよ俺。

 靴を脱ぎ恐る恐る、中に入る。

「凜先輩いますか~」

 返事がない。

 階段を上り凜の部屋と書かれてある、ボードがぶら下がっている。

 この部屋か。

 コンコンとノック音が響く。

「開けますよ」

 ゆっくりとドアを開ける。

 「凜先輩」

 凜先輩は倒れていた。うつ伏せな状態で。

 急いで駆け寄る。体を仰向けにし、頭を膝の上に乗せる。

 多分熱がある。

「凜先輩大丈夫ですか?」

「あ、あー、拓哉好きだ」

 寝ぼけているか本当に言っているのかわからない。けど、今考えることじゃないのは確か。

「凜先輩? 何か飲みますか?」

「あー、拓哉か」

 俺の頬を触る。小さい手で。

 こんな状態になっているのに家族はどうしたんだよ。

「はい、ここに居ますよ」

「あ、り、がとうな。私は拓哉が好きだ、嘘じゃないんだ。私は拓哉さえ居れば生きていける」

 意識が遠くなっていく凜先輩。いや、意識はしっかりとある、ただ弱い部分を見せているのかもしれない。

「いますよここに」

「なあ、拓哉私は家族を失って寂しんだ、なのに拓哉までいなくなったら私はもう、もう、生きる意味が無いんだ」

 部屋の奥を見る。家族の写真が飾ってある。失っているか。多分この世にいないんだろう。

「いますよここに」

「いや、必ずいなくなる。私の前から消える」

「消えませんよ」

「拓哉はいつか好きな人と付き合うんだ、そしたらこの関係を終わってしまう」

「消えませんよ」

「消えるよ、優しい嘘を付くな拓哉、君は優しすぎるよ。君が助ける人は必ず君を好きになっていく」

「そんなことありません」

「いや、そんなことあるよ、ましてや、琴音、志保、早百合、この三人は拓哉のことが好きだぞ」

「多分違いますよ」

「違くないよ、そして見つけるんだ好きな人を、そしてその人と付き合うだ」

「わかりませんよ?」

「本当に罪な男だな」

「私は怖いんだ本当に、拓哉もいなくなってしまったら私は生きていけない」

 俺の髪を優しく触る。

「好きだ拓哉」

 俺の首に手を回し、少し体を起こす。

 そして、唇にキスをする。

 甘くて長いキスを。そして凜先輩は言う。

「私と付き合ってくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ