62話 凜先輩の告白
※凜視点。
拓哉の噂が流れる前日。
自分の部屋でスマホを眺めながら考える、私って誰の役に立っているんだ。
名門高校の生徒会長として、ちゃんと務めることはできているのか。不思議に思う、本当に私が生徒会長で良かったのか。
私は本当に拓哉のことが好きなのか。
スマホで時刻を確認する。
すっかり深夜だな。深夜になるといつも考え事をしてしまう。不安にもなる時間だ。
誰にも言えない私の秘密は拓哉は気付いてくれるのかな。淡い期待をする。
そんなわけないか。拓哉は私なんかに興味すらないだろう。
夏なのにどこか寒く感じる。
多分私は負けヒロインになるだろうな。誰の相手にされないまま死んでいくだろう。悲しい人生だ。
拓哉、君は優しすぎるよ。誰でも助けよとする君には少し嫉妬してしまうよ。
いつも、必ず助けた人は君のことを好きになっていく。それってさ罪な男じゃないか拓哉。
いつか、選ぶ日が来るだろうな。けど、私はきっと選択肢に入っていないだろう。
自分で考えて泣きそうになる。
私は拓哉のことが好きだ。だけど、付き合うことができない。
なあ、拓哉。私はどうしたらいんだ。誰を好きになって、誰と付き合えばいい。教えてくれよ、罪な男。
私は、どうしたら。
熱くなる体、熱くなる心。きっとこれは風だな。
※拓哉視点
ここが凜先輩の家だよな。
凜先輩はどうやら無断で学校を休んでいるらしい。なんで俺が凜先輩の家に向かっているかって?
俺は、昨日何故か泣いていたが、咄嗟に言い訳をしてなんとかなった。そして、楓と学食を食べた後。急に生徒会室に呼びらされて、凜先輩の家に行くよう言われたから今ここに居る。
どうやら、俺が次期生徒会長だから、らしいが、本当に俺で大丈夫なのか。
だって、まだキスされたあの日からちゃんと話していないし。
まあ、何とかなるだろ。そう思いインターホンを押す。
出てくる様子はない。大丈夫なのか、中で倒れているんじゃないか、不安になる。
待つこと五分。出てくる様子はないな。これは、仕方ないよな。
ドアに手を掛ける。犯罪にならないよな? いや、ちゃんと犯罪だな。
でも、凜先輩が無断で休むなどはしないと思う、なにか大変なことがあったんだ。
俺はゆっくりとドアを開ける。
中に入ると、とても暗かった。一人暮らしなのか? 靴は一足しかなく、それは凜先輩の靴だった。何考えてるんだよ俺。
靴を脱ぎ恐る恐る、中に入る。
「凜先輩いますか~」
返事がない。
階段を上り凜の部屋と書かれてある、ボードがぶら下がっている。
この部屋か。
コンコンとノック音が響く。
「開けますよ」
ゆっくりとドアを開ける。
「凜先輩」
凜先輩は倒れていた。うつ伏せな状態で。
急いで駆け寄る。体を仰向けにし、頭を膝の上に乗せる。
多分熱がある。
「凜先輩大丈夫ですか?」
「あ、あー、拓哉好きだ」
寝ぼけているか本当に言っているのかわからない。けど、今考えることじゃないのは確か。
「凜先輩? 何か飲みますか?」
「あー、拓哉か」
俺の頬を触る。小さい手で。
こんな状態になっているのに家族はどうしたんだよ。
「はい、ここに居ますよ」
「あ、り、がとうな。私は拓哉が好きだ、嘘じゃないんだ。私は拓哉さえ居れば生きていける」
意識が遠くなっていく凜先輩。いや、意識はしっかりとある、ただ弱い部分を見せているのかもしれない。
「いますよここに」
「なあ、拓哉私は家族を失って寂しんだ、なのに拓哉までいなくなったら私はもう、もう、生きる意味が無いんだ」
部屋の奥を見る。家族の写真が飾ってある。失っているか。多分この世にいないんだろう。
「いますよここに」
「いや、必ずいなくなる。私の前から消える」
「消えませんよ」
「拓哉はいつか好きな人と付き合うんだ、そしたらこの関係を終わってしまう」
「消えませんよ」
「消えるよ、優しい嘘を付くな拓哉、君は優しすぎるよ。君が助ける人は必ず君を好きになっていく」
「そんなことありません」
「いや、そんなことあるよ、ましてや、琴音、志保、早百合、この三人は拓哉のことが好きだぞ」
「多分違いますよ」
「違くないよ、そして見つけるんだ好きな人を、そしてその人と付き合うだ」
「わかりませんよ?」
「本当に罪な男だな」
「私は怖いんだ本当に、拓哉もいなくなってしまったら私は生きていけない」
俺の髪を優しく触る。
「好きだ拓哉」
俺の首に手を回し、少し体を起こす。
そして、唇にキスをする。
甘くて長いキスを。そして凜先輩は言う。
「私と付き合ってくれ」




