61話 真面目な性格で噂がギャル
俺はみんなに頼み噂を流してもらった。
『拓哉は楓を脅していると』
翌日。
俺は今居場所のない教室でライトノベルを読んでいる。このライトノベル相変わらず面白いな。ブックカバーを付けないと公共の場で読めなさそうなタイトルだが。
本を机に置き。周りを見渡す。明らかに俺を汚い物を見るかのような目で見ている。
けど、俺はこの光景に慣れている。まあ、慣れてちゃ駄目だと思うがな。
誰も俺に興味がないんだろう。いや、興味はあるんだろう、どれだけクズなんだって。
はあ~。俺って本当に馬鹿だな。
噂が広まってから、俺は居場所を完全になくしていた。俺の周りから人が消えた。誰も俺に話そうとしない。
疲れるな。
再びライトノベルを読み始める。
『学園一の美少女が実は変態なことに気付いた俺は波乱万丈な人生を謳歌する』
学校でこのライトノベル読んでるのは俺だけだろ。確実に。
てか、タイトルで判断するのはよくないな。面白すぎるぞこれ。
午前の授業も終わり俺は学食に向かっていた。
廊下を歩く。
俺が歩くとひそひそと話し声が聞こえてくる。
あのー全部聞こえていますよ? 怒りの感情なんて沸かない。
食堂に着き。俺は学食特有の激安チャーハンを頼む。
チャーハンってなんであんなに美味しんだ? 考えに浸る時間はなかった。
奥のテーブルに楓が絡まれいる。
陽キャそうな男が二名。
本当に大変だな。変な噂を流された時点で否定しても遅い。だから、噂を流したもん勝ちだ。
俺はチャーハンが入った皿を手に取り。楓の方に向かう。てか噂が流れてから楓と会ってないな。
「お~楓じゃん」
楓の前に座る。
「てか、こいつら誰? なんか用なの?」
男たちに向かって指を指す。
「この人たちがやらして欲しいって」
ほらみろ、根の葉もない噂を信じてるんだぞ? やっぱり噂は言ったもん勝ちだ。
てか、やらして欲しいってマジかよ。こいつら本当に高校生だよな?
「はあーそれってマジなのかよ?」
男たちを睨む。
俺の性に合ってないよ~心で叫ぶが誰にも届くことはない。
「お前か、楓を脅してるクズって奴は」
「クズって、お前らの方がクズだけど?」
俺は立ち上がり男たちに近寄る。
「てかさ、俺の女に近寄るなよ」
今の俺ちょー恥ずかしいこと言ってるよ。
「ちっ、帰るぞ」
男たちは萎えた様子で帰っていく。ふうーよかった。何事もなくて。
俺は楓の前に座る。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよ、拓哉のあの噂は何? 私を脅しているってなに? そんなので私は救われないよ」
確かに、それじゃ救われないかもしれない。だけど、これしか方法がないんだよ。俺が犠牲になる、これが一番なんだ。
「でも、これしかないんだよ」
「違うよ、私はこんなの望んでない。拓哉だけが真実を知っていて、拓哉だけが味方で、それだけ良かったのに」
「それは、違うだろ。俺だけが真実を知っていても救われない、俺だけが味方だったとしても救われない」
「救う、救う、救うって、何様の? 神様? 違うでしょ、それに、私は助けを求めた覚えなんてないよ」
「なんで、そこまで否定する?」
「逆になんでそこまで優しくできるの? もしかして体が目的なの」
「違う、ただ助けを求めた人がいたら絶対に助けたい。それだけだ」
「言い訳なんて聞きたくない、ただ私の体にしか興味ないんでしょ? あんたも同じね」
「なあ、ちゃんと聞いてくれよ」
「聞きたくない、あんたも同じなんだみんなと、最後には見返りを求めるんだ」
「見返りなんていらない、ただ楓には笑っていて欲しんだ」
「なにそれ、気持ち悪い」
気持ち悪いか、そうか、キモいよな。
「確かに気持ち悪いよな」
「そうよ、あんたなんかに相談しなければよかった。こんな奴に」
「楓、よく聞いてくれ、俺は楓には笑っていて欲しんだ、だからさ、もう強がるのはやめてくれ」
「強がってない、強がってない」
何かが吹っ切れたように泣き始める。
「私のせいで拓哉が傷つくのは嫌の、誰も悲しんで欲しくない。拓哉に迷惑を掛けたくない」
一回だけ一緒にパフェを食べた仲なのに、それだけなのに彼女の情は凄いな。
「大丈夫、俺は慣れてるから。もう、自分に嘘をつくのはやめよう楓。自分の気持ちを話してくれ、どうして欲しいか」
「助けてよ、苦しいよ、根の葉もない噂が流れて学校が好きじゃない、生きた心地がしない。だれも話してくれない。私をちゃんと見てくれない。苦しいよ、苦しいよ」
泣きじゃくる楓。風船が飛んで行ってしまって泣く子どものように。どうしても自分では解決できない。だからただ泣くしかない。大人が友達が助けてくれるのを待つまで。
楓は本当に真面目な子だ、誰かの幸せを願って、自分は我慢をする。真面目なんて言葉で解決してもいいことじゃない。
「任せろ、今度は俺を信じろ」
涙を手で拭く。そして俺の方を見て驚く。
「た、くや?」
「?」
「どうして泣いてるの?」
泣いてる感覚なんてない。
ただ、自然と涙が流れる。
あれ、俺なんで泣いてるんだ。




