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59話 真面目でギャルで噂

「ここのパフェって美味しいの?」


「俺がいつも来てる場所だぞ? 美味しいに決まってるだろ」


「ふん」


 まだ、名前も知らない金髪ギャルが俺の目の前に座る。


「おすすめある?」


「イチゴパフェだな」


「そう、じゃあ、チョコパフェにしようかしら」


 それなら聞くなよ。なんだったんだよ今の会話。


「すみません、イチゴパフェとチョコパフェをお願いします」


「かしこまりました」


 二十代くらいの店員に頼み、俺は真剣な顔をしてギャルの方を向く。


「まず、名前を聞いてもいいかな?」


「東山楓、そっちは」


「真治拓哉だ」


「それで、なんで俺の手を握って来たんだ?」


「別に、ただ暇だったから」


 確実に嘘だ。暇なだけで人の人生を潰すようなことはしない。いやできるはずがない。


「そっか、ってなる話だと思うか?」


「別にどうでもいいでしょ?」


「どうでもよくないぞ? 俺の人生が壊されるところだったんだぞ? 責任とれるのかよ」


「それは、」


「ほら、無理だろ?」


「ふん」


 顔を横に向ける。拗ねてるのか? 待てよ俺悪いことなんてしてないからな。


「お待たせしました」


 テーブルに頼んだ商品が届く。やっぱり、ここは、いつ来ても美味しそうだな。由衣と一緒に食べた店より4倍安いし。


「やっぱり、これがいい」


 俺のイチゴパフェを取る。俺のことを無視して食べ始める。


「そうですか~? じゃあこのカフェで一番人気なチョコパフェを頂きますね」


「そっちも食べたい」


 そして、俺のチョコパフェを取る。


「ちょっと、それは強欲すぎないか?」


「いいじゃん」


「いや、駄目だと思うが? それに、ふと..」


 踏みつぶすかのように俺の足を踏む。


「何か言ったかしら?」


「いえ、ただ、可愛いなと言いました」


「そう」


「って、可愛いって言うなよ」


「照れてるのか?」


「あんたって女心分かってないね」


「確かに、でも楓が助けを求めてるのは分かるがな」


「そう」


 視線を落とす。


「いったい、何をしたかったんだ?」


「あんたなら助けてくれると思ったの」


「何があったんだ?」


 楓は嘘ついているだろう。助けて欲しいならこんなことをしない、多分俺の噂を聞いて俺を利用しようとしたんだ。俺に罪を擦り付けるために。


「私って実は真面目な性格だの」


 真面目な性格? 今日ってエイプリルフールじゃないぞ?


「ごめん、その」


「あ~、この金髪は、自分を殺すために染めたの」


「自分を殺すため?」


「そう、親の期待とかがストレスで、その反動っていうか反抗みたいな感じで染めたの」


「そうか」


 親の期待か、確かにストレスになるな。親の期待は何も悪くないと思うが、子にとってはストレスでしかない。


「私の髪って今は短いでしょ? 元は長かったんだけどね。なんか全部どうでもよくなって短くしたの」


「長い方が似合うと思うが?」


「まあ、私も長い方が似合うと思う、けど、もう遅いかな」


 後悔を含みながら楓は言う。


「それでね、私ってこんなギャルっぽい恰好してるでしょ。それである男子から告白されたの、私は好きじゃなかったから振ったのそしたら次の日から楓はビッチって噂を流されたの」


 震えながら言う。無理もないよな、真面目な性格なだけあってこんな根の葉もない噂を流されたら嫌だよな。


「それで、クラスからも浮いてしまってね」


「そうだったんだ」


「これ以上は心がもたなかったの、もう限界だったの、だから私はあなたに...」


「ちゃんと話して欲しかったな」


「え?」


 戸惑う楓。


 助けて欲しいならあんなことをしない。


「俺に罪を擦り付けようとしていなかったか?」


「それは」


「俺の噂は知っているだろ? それを利用すれば、自分の噂は消えるかもって考えなかったか?」


「そうだよ、あんたに罪を擦り付けようって考えたよ」


 目を赤くして言う。少しは否定するかと思っていたが、こんな素直に認めるのかよ。


 まあ、利用しようとしてても俺は助けるがな。


「そうか」


「ごめん」


「反省しているのか?」


「うん、馬鹿なことをしたなって思ってる」


「そっか、じゃあ俺に任せろ。必ず助けるから」


「本当に? 私はあなたの人生を潰そうとしたんだよ」


「楓もわかってるだろ。俺は馬鹿なんだよ」


「ありがとう」


 手で涙を拭きながら感謝を伝える楓。


 俺たちは、少し苦いパフェを食べてカフェを出る。


「学校に行くか」


「うん」


 希望に満ちた顔をする。


 けど、俺は今から起こる地獄を想像して気持ちが沈む。


 そして。次の日。


 『楓は、次期生徒会長の拓哉に脅されていた。楓の噂も広めたのも拓哉だった』


 とんでもない、噂が流れる。


 


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