58話 ギャルと真面目と噂との三角関係
夏休みも終わり、俺は今体育館に向かっている、そう、いつもの、あの集まりだ。全校生徒が朝から校長先生の話を聞く。長くて何を言ってるのか理解ができない話を。
憂鬱だ。ましてや、体育館の暑さは異常だ。それなのに集まりがある。これってなんかの問題にならないか? 理不尽な考えを浮かべなら体育館に入る。
改めてうちの高校って人多いよな。周りを見渡す。金髪の人。身長が高い人。静かに座っている人。騒がしい人。
俺たちの高校は校則が殆どない。だから、金髪の人などがいる。まあ、頭が良かったら自由みたいなもんだ。それがこの高校のモットーだと思う。
俺は自分のクラスの列に並び。始業式 が始まるのを待つ。
俺の隣には金髪でギャルっぽい人がいる。けど、制服などの身だしなみはちゃんとしてある。ギャップ萌えかこれが。多分違うけど。てか、なんで俺の隣にいるんだ? 前までは全然違う人だったのに。不思議に思ったが気にしないでいよう。なんか事件の匂いがするから。
「そうだな、匂うね」
この声は優香だ。右側を向くと優香がいた。もちろん近くに。当たりそうで当たらない距離に。
「なんでいつも近いんだよ?」
「そうかな?」
首を傾ける。
近いですよ? 本当に。
「じゃあ、頑張ってね」
「何を頑張るんだよ」
「ふ、ふふ」
不気味な笑い方をして自分のクラスに戻って行く優香。不思議な子だな。不思議より恐怖が勝つがな。
「皆さん今日は元気そうな顔で登校していることに私はとても喜んでいます。夏休みと言ったら海でしょう。海に関する事故や事件は毎年多く起こっています、それに...」
相変わらず長いな。校長先生は長く離さないとクビになったりするのか?
暇すぎるため周りを見渡す。真剣に聞いてる人、髪の毛を触っている人、爪を触っている人。俺の手を握ってる人。手を握ってる人? ん? 誰かに握られてるよな、俺の左手。
ゆっくりと左側を見る。金髪のギャルが俺の左手を握ってた。これは、事件だよな。いや、事故だ。
「あの~どうしました?」
俺の声は聞こえているはずなのに、微動だにしない。俺って手を握りやす個性でもあるのか? 金髪のギャルは微かに手が震えていた。今から何かを起こすかのように、その恐怖が手に表れていた。
「大丈夫?」
「...」
やっぱり俺のことを無視している。
「この人が私の手を握ってしました」
校長先生の話より、意味の分からないことを大きな声で言う金髪のギャル。周りを俺たちを見る。そしてしっかりと握られてる手を上に上げる。
周りの人が驚く中、金髪ギャルのクラスの人たちは、またあいつかよ、あいつって噂の人じゃん。とこそこそ話していた。それを聞いて俺はまた、バカなことをする。
ギャルの手を引っ張って体育館から出る。
「おい、待ちなさい」
体育の先生が俺たちに言うが、それを無視して俺たちは走る。まるで、怪盗団のように派手に目立ちながら。
後で、みんなに説明しないとな。
多分俺の考えは間違っていないはず。
体育館を出て、学校を出る。深呼吸をして俺は口を開く。
「どこか行きたい所あるか?」
「あんたってバカ?」
「馬鹿じゃなかったら、手を引っ張ってここまで来てないが?」
「馬鹿ね」
「いや待て、俺って被害者だぞ? まして、お前から手を繋いできたのはそっちだぞ?」
「そうだけど、けどずっと繋いできたのはそっちじゃない」
「いやいや、手が震えていたのに離すことはできないだろ」
「はあ~? あんたって本当に馬鹿? 」
「分かったよ、俺は悪いでいいですよ。ギャルさん」
「それ、やめてくれない」
真剣な顔をして言う。本当に嫌なんだな言われるの。じゃあ、なんでそんな見た目してるんだよと思うが、何か事情があるんだろう。
「私、パフェ食いたい」
「いいね、俺もパフェ好きなんだよ」
「じゃあ、私好きじゃない」
「おい」
「はいはい、怒りん坊さんですね~」
「行くか」
「行くのは良いけど、いつまで私の手を握ってるのかしら?」
「ああ、お前がちゃんと話すまでかな」
「じゃあ、無理かもね?」
「それなら、ずっと握ってるかもな」
「ふん」
怒っているような、楽しそうにしている。そして、ニッコリと笑いながら俺の手を引っ張る。
「離さないでよ」
俺は初めて、校則違反を犯しただろう。けど、こう思う。
校則なんてクソくらえ。
そして、何故か手を繋ぎながら、カフェに向かってる。
これが、ギャルで真面目で噂されている。金髪ギャルとの出会いだった。




