表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/91

52話 必ず後悔するだろう

機内から見える景色は普通と違っていて、全く飽きなかった。飽きないというのは嘘で景色を眺めるしかやることがないんだ。

 スマホに電源を入れ、ライトノベルを読み始める。確か前に買っていたやつだよな。すっかり読み忘れていた。ラッキー。

 待てよ、タイトルが。なんでこれ買ってるんだよ。

『キス魔からは逃げることは絶対にできない!キス逃げ』

 絶対に買うのミスってるよ。過去の俺は何をしてるんだよ。いや、当時はキス魔ってなんだ? 的な感じで気になってたんだろうな。

 こんな数か月でキスされることなんて知らないだろうな~。

 てか、このままじゃだめだよな。いろんな人からキスされるのってどうなんだ。俺はまだ高校生だぞ? さすがにちょっと。

 もー頭を抱えながら、買ったキス逃げを読み始める。

 このラノベ神だぞ。誰かにおすすめしてえ。いや、できるかよおすすめなんて。おすすめしたらお前ってこんな本読むんだって引かれるな。

「間もなく到着いたします。シートベルトを着用してください」

 アナウンスが流れる。

 みんなはだんだんと起きてシートベルトをする。

 俺だけじゃね寝てないの。志保のこともあり、この本もあり。全く寝るっていう選択肢がなかったわ。

 まあ、なんとかなるだろう。

 荷物の審査も終え、やっと空港から出ることに。

「inアメリカ――」

 腕を伸ばしながら大きな声で叫ぶ幸。

「あんまり浮かれるなよ」

 三年の厳しそうな先輩が言う。あのー多分一番楽しみしてるのは先輩だと思いますよ。

 浮かれてる服に、アメリカ風のサングラス。

「さあ、並んでくれ」

 凜先輩が声掛けを始める。それを聞き俺たちは並び始める。

 一年の列。

 二年の列。

 三年の列。

 三年の列に結婚を命令してきた彼女が並んでいた。あの人先輩かよ。

 先輩は俺の方を向き呟く。

「ホテルで答え聞かしてね」

 可愛い仕草をする。答え? あの結婚の話かよ。

「分かりました」

「楽しみにしとくよ」

 俺たちはバスに乗ってホテルに移動する。

 もちろん、バスの中は地獄である。

「さっきから手を握りすぎだと思うですけど?」

「あら、そう?」

 大人の色っぽさを出し。綺麗な口紅をしている。

「本当になんでこんなことをしてるんですか?」

「別れてから寂しいの」

 高校生の言うことではない。大人が言いそうな発言だ。禁断の恋みたいな雰囲気をどこからか感じる。まして、禁断の恋など一切していない。

「けど、どうして俺なんですか?」

「なんとなく」

「怒りますよ?」

「君は怒れないよ」

 なんだよそれ、実際に怒る気持ちなどなかった。ただ、一刻でも早く花梨が立ち直れるように俺が支えるしかない。人間は支え合いをしないと生きていけない。

 俺の今していることは、優しいとは言えないだろう。まして、今やっていることはクズみたいなもんだ。凜先輩の気持ちや、琴音の気持ち、早百合の気持ち、志保の気持ち。それだすべての気持ちを俺は無視をしている。本当にクズだ。

「俺ってクズですよ?」

「知ってるよ、いろんな女を弄んでる」

 それは、違くね? いや本当だな。

「まあ、それはそうかもな、けど俺は助けを求めてる人を助けます。男女関係なく」

「あら、じゃあ私も助けてくれるの?」

「今、この状況で助けてないと思いますか?」

 繋いである手。力を入れたらすぐに抜くことだってできる。けど、花梨の手はあまりにも冷たい。

「悪い男ね」

「そりゃ、お互い様」

「ふふ」

 椅子が蹴られる感覚がしたが今は気にしない。だって気にしたら終わるから。

 


「今日はもう遅いから明日から自由時間で、好きなように調べて、生徒会長になれるように頑張りたまえ」

 凜先輩が言う。

「うおおおおおおおお」

 一致団結するかのように、俺たちは叫ぶ。ちなみにホテルのロビーで。

 一年生用のホテルの階に行く。

 俺と成瀬は同じ部屋である。

「今日は疲れたな」

 ベットに飛び込む成瀬。

「そうだな」

「なんか浮かない顔してるな」

「まあ、行かなきゃいけない所がるんだよ」

「あーあの結婚がどうとか」

「そう、ほらちょうど」

 成瀬にスマホを見せる。電話の名前は彼女になっている。彼女は名前を隠している。不安になりながら電話に出る。

「もしもし」

「拓哉、早く来ないとまた失うよ」

 それだけ言い電話が切られる。

 力いっぱいにスマホを握る。高鳴る胸。脈が速くなる。心臓の鼓動が速くなる。

 深い、深い深呼吸をする。

 行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ