49話 事件は起きていく
カーテンから光が差し込み、朝になって行くのを実感する。
早百合はぐっすりと寝ている。
俺は、もちろん一睡もできていない。こんな抱き枕みたいにされたら寝れるわけがない。
俺は、ここ数ヶ月で起きた出来事を振り返る。
裏表がある早百合と、天才ピアニスト琴音、愛が重い志保、生徒会長の凛先輩。
これが、たった数ヶ月の出来事か。
俺ってスクールカースト最底辺だぞ。そんな俺がこんな出来事してもいいのかよ。
キスをされたことを思い出し、頭を振る。
青春じゃねーかよ。
やがて日差しが強くなっていく、体を動かす早百合。
俺は壁側にいるため、脱出不可能である。動いたら、何かに当たってしまいそう。
早百合の寝顔は、本当に美しい。世界のどんなに美しく花でも勝てないほど、美しい。
なんで、俺の隣に寝てるのか不思議だ。
ヒラヒラと机から紙が舞落ちる。
紙には文字がびっしりと書いてあった。あんまりこういうのは見ないようにしよう。人のプライべートだ。
早百合は起きる様子が一切ない。俺は早百合の頭を触る。やましい気持ちとかじゃなくて、さすがに近すぎるから。
起きないように頭を触る。
「変態ね」
突然起きる早百合。まるで触るの待っていたかのように。
「この、抱き枕みたいに抱いてる方が変態じゃねいか?」
「ふん」
と呟いてさらに強く握る。
この状況誰かに見られたらどうするんだよ。まあ、誰もいないか....
「おはよ~」
ドアが開き、純恋先輩が入ってくる。
純恋先輩は何も言わないまま部屋を出る。
終わった。終了だ。
早百合の方を向く。
小悪魔みたいにニッコリしている。この悪魔め。
俺は、早百合の手をどかしてベットから出る。腕を伸ばす、体の力が抜けそうになる。けど、どこか気持ちよさがある。
「起きてるか?」
「寝てるわ」
「そうか、寝てるか」
って、なるかよ。俺は毛布を引っ張って無理やり早百合を起こす。
忘れてた、早百合の服装が天使だったことを。綺麗なくびれに朝から目の保養だ。
「ちょっと、先に部屋出とくから」
「私もすぐに行くわ」
俺は、部屋を出る。
部屋を出て、すぐに横を見る。もちろん、純恋先輩がいる。
「あのー本当になにもてませんから」
「隠さなくていいのよ、親にも内緒にするから」
「いや、本当になにもなかったんです」
「大丈夫、私は口が堅いから」
多分誤解を解くのはもう無理だな。唇に指を当る。
「この、指に誓うよ」
なんの誓なんですか。
「ところで、体調大丈夫なんですか?」
「まあ、私の心配をしてくれるの?」
「そりゃあ、もちろん」
「もしかして、早百合に飽きたの?」
あのーとんでもないこと言ってますよ。この人。
「心配した俺がバカでした」
「うそよ~。もー拓哉ったら」
親しげに肩を叩く。
「まあ、私がいなくても早百合を支えてくれるんでしょ?」
「もちろん、俺が死んでも早百合を助けますよ」
「ってよ、早百合」
早百合は部屋から出てくる。
頬を赤くしながら。
「さ、さあ行きましょ」
そっと俺の手を握る。
あのー色々事件が起きてます。助けて~。お巡りさん。
豪華の朝食を食べ終え。俺は早百合の家を出た。
朝食の時、早百合は終始無言だった。
夏本番の暑さにやられる。歩きながらアイスを食べる人や、頭にタオルを巻いてる人。夏が始まったな。
ちなみに、俺は夏より、冬派だ。冬はココアも美味しいし、なにより、雪が好きだ。
雪か。冬が好きなのは忘れられないからかもしれない。何考えてるんだよ。
代表者旅行当日。
「お兄ちゃん荷物ちゃんと持った?」
「ダイジョウブだ」
「絶対大丈夫じゃないよ」
「本当に、多分大丈夫」
「そっか、行ってらっしゃい!」
「ああ、お土産買ってくからな」
「うん、キーホルダーと、お菓子と、お菓子と、お菓子、お願いね」
「うん、無理!」
俺は玄関を開け。家を出た。
家から、空港まで遠いのでバスを利用する。タクシーを乗ればいいのに?ないんだよ、お金が。由衣に奢ってからピンチである。
バスは時刻通りに来る。少し古びたバスで、中に客はいなかった。
俺は、奥側に座る。座ると同時にバスが動き出す。
久々のバスも悪くないな。
10分後バスが止まり、新しい客が入ってくる。どこか、見たことがある人だな。
その人は、バスの中を見渡していた。俺と目が合う。無表情のまま俺に近づいてくる。
奥の席に座るのか。そう安堵する。あれ、横にある荷物を持って隣に座ってくる。
彼女は荷物を膝に置き。俺の腕を引っ張る。
指を絡ませ、恋人繋ぎをする。
大人びてる顔に、美しい口紅をしている。
で、なんで俺は恋人繋ぎをされているんだ?
「あのー」
「...」
無言のまま、俺の手を持ち上げる。
持ち上げた手を唇に持ってくる。そして、手の甲にキスをする。
綺麗な跡が付く。洗っても、落ちなそうなくらい綺麗な跡が付く。
「共犯者だね」
そう言い。今度は首にキスをする。
「逃げられないよ」
思い出したぞ。この人は、代表者会議に居た、山内花梨だ。あの、イチャイチャしていたカップル。
違う、それどころじゃない。このキスマークはどうすればいいんだよ~。




