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48話 早百合

 酷く震えながら今日起きたことを説明し始める。

 「今日ね、お姉ちゃんが倒れたの、それで、病院に行っていたの」

 不安を殺すように、強がりながら言う。

 今の、早百合は裏の性格や、表の性格関係なしに。一人の人間として不安や恐怖と戦っていた。けして勝つことができない勝負と。

 酷く震える体を支える。優しく。

「一人になるかもって恐怖があったの、それが、怖くて、怖くて」

 不安との勝負に負け、早百合は泣き始める。もちろん、不安なんてやつに勝てるはずがない。だって、強敵だから。

「...」

 ただ、無言で泣き続ける。人は誰だって、不安がある。その不安が大きくなればなるほど、泣いてしまう。

 もしかしたら、こうなってしまったら、明日には、なんていろんな想像をしてしまう。

 人間は、弱いんだ。簡単に壊れる。

 昔先生が言っていた。人は、簡単に壊れる。だって、物じゃないから、と言っていた。今のなら理解ができる。

 人は、繊細だ。人の心は糸だ。

 太い糸でもあれば、細い糸でもある。でも、どんなに太い糸でも、どんなに細い糸でも、簡単に切れてしまう。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないかも」

「そうだよな」

 俺は、ただ立ち尽くす。早百合が落ち着くまで。

 早百合の不安を取り除くには、どうすればいいんだ。誰かに頼るのが一番だ。

 早百合は今助けを求めている。

 救えるのか。自分の力のなさを恨む。何かいい選択肢があるか? 俺は、早百合に聞いてみる。早百合は今何をして欲しいのか。

「なあ、俺にできることあるか?」

「今日だけは、ずっといて」

「わかった」

 何時間もいてやるよ。それで、こんなに悲しそうにしている顔が、笑えるようになるなら。

 そして俺は、早百合の家にあがる。多くの人の成功によって建てられた立派な家に。



 早百合の部屋に案内される。早百合は、部屋の前に止まる。

「ちょっと、着替えてくるから待ってて」

「あ、ああ、ゆっくりでいいよ」

 部屋に入っていく早百合を見て。俺は周りを見渡す。この家大きすぎないか。ありえないほどの長い廊下。ありえないほど、壁に絵が飾ってある。

 これは、凄いな。

 早百合を待ちながら、由衣に連絡をする。

 今日は多分帰れないな。天井を見上げ、素晴らしいほどに輝いてるシャンデリアと目が合う。

 早百合が部屋に入ってから10分が経っていた。大丈夫かな。

 俺は部屋をノックする。返事がない。もしかして、俺はドアを開ける。

 そこに立っていたのは、完璧な天使だった。

 サイズが小さい服を着て、腹を隠していなく、綺麗なくびれに、思わず呼吸を忘れる。

 に、似合いすぎだろ。あまりの、衝撃的に時が止まる。

 これ、金払わないと。

「ちょっと、勝手に開けないでよ」

 顔を下に向けながら言う。

「ちょっと、なんか言ったらどう?」

「そ、その、めっちゃ似合ってる」

「あ、ありがと」

 俺と顔を合わさず礼を言う。

「さあ、入っていいよ」

「お邪魔します」

 ゆっくりと早百合の部屋に入る。花の香りがする部屋で、綺麗に整理整頓されていた。

 壁にかけられている時計を見る。時刻は22時となっていた。

 もう、こんな時間なのか。

  早百合はベットに座る。

「拓哉、ここに来て」

  ベットポンポンと叩く。

  あーの、え?もしかして。

  俺は、心臓の鼓動が速くなっているのがバレないように早百合のとこに向かう。

「一緒に寝よっか」

 俺を引っ張り、ベットに落ちる。

  ベットから、いい香りがする。いや、何を考えてるだよ俺。

 俺を壁側に押して、早百合はベットに入ってくる。

 俺を抱き枕みたいに強く抱きしめる。

 あのーどういう状況? 絶対にバレている心臓の鼓動を必死に隠した。

 そして、早百合は何も言わないまま、眠りにつく。

 それで、俺はどうしてるかって?

 寝れるわけねぇなだろ!!

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