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38話 言わなければ伝わらない

重たい荷物を持ちながらゆっくりと歩いている由衣。

 走って由衣に追いつく。

「はあ、はあ、ちょっと待って」

 夏休み中体を動かす事をほとんどしていないため、体力が落ちていた。

「なに?」

「いや、ちゃんと話そう」

「何?昨日のこと反省したの?」

「うん、しっかり親にも謝った。だけど、話したいのはそれじゃない、教えてくれ由衣は今何を思っているのか」

 俺は勝手に由衣の気持ちを想像していた、聞いてもいないのに。しっかり話さないといけない。

「嫌だよ」

「頼む」

「じゃあ、あっちの店に行くならいいよ」

 指をさす。その店は、少し高い店である。けど、今日はいいだろう。甘いものや美味しいもの食べて欲しい。親のお金だけど。足りなくなったら俺がバイトすればいい。

「わかった、行こ」

 俺は由衣の横に行き。パジャマのまま店に入った。

 メニュー表を見つめること五分。俺は商品の値段を見て、絶望していた。いつものカフェで頼んでるパフェの4倍くらいするぞ。

 俺は、バレないように由衣を見る。由衣の目は輝いている。さらば俺の貯金。

 親は毎月生活費として、数十万送ってくれる。また、生活費の他にお小遣いをくれる。俺はそれを貯金している。何があるかわからないから。今日は俺の貯金から払っておこう。

「どれを頼むか決めたか?」

「うーんとこれとこれかな」

 指をさしているのは、パフェにパンケーキだった。もちろん、値段は想像を絶する。

「じゃあ、それ頼むぞ?」

「うん!」

 呼び鈴を鳴らす。

「注文はお決まりで...」

 ? どうした? 俺は横を向く。そこに居たのは幸だった。あの、代表者会議にいた幸である。ずっと話している人だ。

「もしかして?時期生徒会長の真治拓哉??」

「多分人違いかな」

「何その恰好、ちょー面白い」

 この人アルバイトしてるんだよな? 幸は大爆笑する。

「はー久しぶり笑ったよ」

「いつも笑ってそうだけど」

「まあ、確かに?」

「じゃあ、久しぶりじゃないじゃん」

 ニヤニヤしながら幸は言う。

「まあ、それより、この人は?」

「あ、拓哉の妹の由衣です」

「あー妹さん。可愛いね」

「けど、大変でしょ?」

「何がですか?」

「だって、拓哉帰るの遅いでしょ?次期生徒会長で仕事も多いみたいだし」

「確かに、帰るの遅いです」

「だよねー、はあ、拓哉もすぐに帰らないと可哀そうだよ?」

「はい、反省します」

「よろしい、じゃあ、何をご注文ですか?」

「この、パフェとパンケーキを1つずつお願いします」

「かしこまりました」

 何故かアイドルみたいなポーズをする幸。

 数分経ち、由衣が疑問そうな声で言う。

「初耳なんですけど?」

「えーと?」

「初耳なんですけど、お兄ちゃんが次期生徒会長って」

 確かに、由衣とゆっくり話す機会はここ最近なかったな。いや、機械ならたくさんあったはずだ。ずっと後回しにしていた。それは、反省しないとな。

「ごめん、話していなかったな」

「そうだよ、最近話していないし」

 少し間をおいて由衣は語り始める。

「今日家を出たのは、私はここに居ても意味ないんじゃないかなって思ったの、親も私を置いて海外に行くし、お兄ちゃんも私と話してくれないし」

 なんで、俺は勝手に由衣はもう大人だと思っていたんだろう。まだ、中学三年生だ、中学三年、まだ子供だ、いや、全然子供だ。

「それで、さっきお兄ちゃんが次期生徒会長でずっと忙しいと知ったの、それでね、私が勝手に勘違いしていたの、最近お兄ちゃんと私は話す機会が減ってねそれで、お兄ちゃんは私を必要としてないと思ったの」

「違うぞ、俺は話す機会があったのに、俺は後回しにしていた。それは俺がわるい、ごめん」

「大丈夫!これは私が勝手に勘違いしていただけだから」

「それでさ、昨日怒ったでしょ?」

「うん」

「あれはね、なんで怒ってるのって思ったの。私を避けてるくせに、いい人ぶってと思ったの」

「けどさ、全部勘違いだった。お兄ちゃんは次期生徒会長で毎日忙しくて大変だったって今知ったの。ごめんなさい」

 俺は、妹になんで謝らせてるんだ。こんなに寂しい気持ちにさせといて、何が全員幸せにするだよ。大切な家族を泣かせて、謝らして。一番大切な人を幸せにしてないじゃん。

 「俺こそごめん、忙しいを理由に話す機会を後回しにしていた」

「うん、私こそごめん」

「えーとパフェとパンケーキを持ってきました」

 幸が言う。

「しっかり、自分の気持ちを伝えないと」

 腕を組んで女神さまみたいに言う。

 そう言い。幸は違う客の所に向かった。

「これ、お兄ちゃんの」

 俺の方にパフェを置く。

「いいのか?」

「うん」

「だって、もう一個頼むもん」

 そう言い、呼び鈴をもう一度鳴らす。

「すみません、もう一個お願いしてもよろしいですか?」

「かしこまりました」

 それだけ言い。店長は台所に戻って行った。

「あのー俺、許可してないんだけど」

「え――だって今日お兄ちゃんの貯金から払うんでしょ?」

「まあ」

「それなら、いいじゃん!!たくさん食べよ!!」

 さっきまでの暗い顔をしていなくて、明るい顔に戻っていた。

 俺たちは高めのパフェやパンケーキを食べた。

 俺は、会計を済ませるため、会計所に向かった。

 この値段あってるんか?本当に。さらば俺の貯金。

 会計を済ませ店を出る。

 店に出ると、由衣はココアを飲んでいた。

「さあ、帰るか」

「うん」

 俺はたちは、少しだけ分かり合えたと思う。言わなければなにも伝わらない、言ったとしても伝わらないこともあるだろう。

 けど、伝わるまで言えばいい。何度喧嘩しても、話合えばいい。

 俺は、大切にしようと思う。家族は大切な存在だ、そんな大切な存在を泣かすのは嫌だ。

 ちゃんと由衣と話して、時間を大切にする。これからは、ちゃんと時間を作って由衣との時間を増やそう。

 前向きな気持ちのままゆっくり、由衣と並んで歩く。

 その時、奥の方に見たことがある女性が立っている。

 その女性は、口パクで俺に言う。

 う、え、の、ゆ、き。

 ああ。ダメだ。

 強く心臓が握られるような感覚になる。

 呼吸が乱れる。

「どうしたの?大丈夫」

 俺は、倒れる。

「お兄ちゃん?お兄ちゃん」

 由衣は俺の体揺らす。

 中学の時の記憶が頭に流れてくる。

 お前のせいだ、お前のせいだ。

 違う俺じゃない。俺じゃ、な、い。

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