30話 それでも、いや、もう無理だ
朝早く登校をして生徒会室に行きスマホを受け取った。夏休み学校に来るように言われたが、まあ頑張るしかないな。
しかし、俺は、どこか腑に落ちなかった。なぜ、天才といわれている直美がなぜ勉強ができないのか。なぜ、あんなに真面目なのにスマホを机の中に忘れていたのか。不思議だな。
まさか、まさかな。
俺は自分の教室に向かう。教室内はまだ人が少なくて、早百合、成瀬、直美しかいなかった。いつもこの三人が教室にいる。早く登校することはいいことだと思うが、疲れないのか?
俺は、直美の前に行き、スマホを渡す。
「テストお疲れ」
そっと、机にスマホを置く。
「......」
何故か無言だった。何かしたのか俺?不安感に襲われる、次の瞬間その不安が当たる。
「私の前から消えて」
怒っているのか、それとも、それとも、嬉しいのか?いや、今は考えるのはやめよう。まだ、証拠はない。
この発言に成瀬と早百合が俺たちの方を向く。
「俺が何かしたのかな?」
「聞こえなかったかな?私の前から消えて、お馬鹿さん」
それだけ言い残し直美は教室を後にした。
直美が教室を出た後、成瀬と早百合が近づいて来る。
「何があったの?」
早百合が心配そうに聞く。
「だ、大丈夫だ」
「そ、そう」
俺たちは自分の席に着く。
まず、考えをまとめるか。
俺の考えでは、直美は馬鹿ではない。テストも点数は高いと聞く。
じゃあ、なぜ俺に勉強を教えて、とお願いしてきたか。
次に、スマホをなぜ忘れていたのか。これは、忘れていたより、仕込んでいたと考えた方がいいな。
直美は俺の性格を知っていた、だから、俺の性格を利用した。そう考えるべきだな。
でも、理由がまだわからない。なんなんだよ。なんでいつも俺なんだよ。もっとカースト上位にやってくれよ。
はあ、ため息が漏れる。俺って多分馬鹿だな。
お昼休み。生徒会室には14名が集まっていた。どうやら、俺の今後の話のようだ。
「真治拓哉を生徒会から追放する」
「え?」
他の人たちも同じように動揺する。生徒会長の凜先輩が俺の目を見て言う。
成瀬が大きな声で言う。
「どうして?」
「告発があった、次期生徒会長の真治拓哉はいつもカンニングをしていると」
今、この状況でこんな告発されたら、信じるしかない。
「そんな奴じゃなってわかってるでしょ?」
「仕方ないんだ、私たちも拓哉がそんな人じゃないのはわかっている、けど、生徒会の名誉と地位のためだ。すまない」
深く頭を下げる。もう、噂が広まっているだろう。
俺は慌てて言う。
「大丈夫ですよ。俺、いかないといけない場所があるんで!!今までありがとうございました」
俺は、お辞儀をして、部屋を出ようとする。その時成瀬があのことを話そうとする。
「あの時のスマホは」
「成瀬、だめだ」
「けど」
なんとも言えない雰囲気になる。俺は、静かに部屋を出た。
部屋を出て、窓から見える景色を見る。
落ち着け、怒るな俺。落ち着け。大丈夫。大丈夫なのか、なんで俺がいつもこうなるだよ。なんでだよ。
怒りが溢れる。だめだ、壊れる。人を助けた結果がこれだ。隣にいる人を幸せにするとか言ってるけど、俺は幸せなのか?あれ、なんで俺は助けてるんだ。
大丈夫、落ち着け。俺はみんなに平等だ。平等、平等?そんなのってないよな。平等なんてこのように無い。あるわけない、あるならこの痛みもみんな味わっているのか、味わっているわけない、俺だけだ、俺だけが味わっている。そんなの平等じゃないだろ。なにが平等だよ。
俺の目の前に直美が現れる。
俺は助けを求める。
「助けてくれ」
俺の声は聞こえているはずなのに、無視をして生徒会室に入っていく。
俺は、理解した、直美が告発者であることを。そっか、そうかよ。
俺は左手を強く握る。
そして、窓ガラスを思いっきり叩く。
窓ガラスが割れる。
大きい音で教室に居る人や、生徒会室から人が出てくる。
左手はガラスが刺さっていて、血が溢れている。
キャーと悲鳴が聞こえる。
生徒会室から出てきた、凜先輩、成瀬、早百合、志保は、俺をみて驚いていた。
こんな世界に平等なんてない。




