29話 それでも、俺が責任を負えばいい
夏休み前にあるテストは高校生の運命が懸かっている。そう、赤点を取れば夏休み中、学校に来ないといけない。
そんなのって、ありえないと思うだろ?けど、この高校はそんなことがある。まあ、俺には縁のない話だ。
直美もあの日から勉強を真面目に取り組み頭が良くなっている。そもそも、勉強の仕方が変だった。だから、勉強の仕方を変えるだけで頭が良くなっていた。
そして、テスト当日。事件が起こった。
テスト始めと先生が言う。それと同時に紙をめくる音が教室に響く。
制限時間は4時間。そう、休憩など無い。一言で言うなら、地獄だな。
俺は最初に、国語を解く。以外にも簡単ですぐに解けた。
残りの、数学、英語、歴史、などの教科もすぐに解けてしまった。
その時だった、机がブーと振動がした。
誰にもバレないように、引き出しに手を入れる。
誰かのスマホが入っていた。
スマホが机の中に入ってる時点で俺も失格になる、また、そのスマホの持ち主も失格になる。
スマホをつける、壁紙が直美と友達の写真だった。すぐに誰の持ち主がわかった。
テストの席は番号順で行う、いつもは、バラバラに座っている。つまり、この席は直美が座っている席だ。
どうするべきか、残り時間は二時間程度ある、隠すことはできないだろう。最後の1時間に机の中身を見られる。
さて、どうするべきかとか、考える必要がなかった。
俺は、直美がたくさん勉強をしてるのを知っている。あんなに、頑張って来たのに、こんな風に踏みにじるのは嫌だ。だから、俺だけが責任を負えばいい。
このスマホの持ち主がバレるわけにはいかない。まずは、壁紙を変える必要がある。
監視役から見た俺は絶対に怪しい人だろう。みんなが集中している中俺だけが下を向いて、壁紙を変えている。
どうにか、バレないように壁紙を変更することに成功した。
次に、どのようにバレるかが、重要だ。
スマホが入ってました。っていうのは直美のスマホかと思われてしまう。
じゃあ、通知音を鳴らせば俺のスマホだと思うだろう。
はあ、やるしかないか。なんで、いつもこうなるやら。
俺は、カメラを開き写真を撮る。
パシャと音が教室に響く。
全員が俺の方を向く。
いやー人間て本当に良くできてる。音の方向なんてすぐにわかるようにできてるからな。
監視役の先生が俺の方に向かってくる。
「君、立ちなさい」
俺は、立つ。
「これは、なにかな?」
「スマホですね」
「君のなのか?」
「はい」
「今すぐ教室から出なさい」
「はい」
成瀬、早百合、直美は驚いていた。
そして聞こえてきた、あいつって本当にやばいやつ?本当は生徒会も誰かを脅して入ったとか噂あるよね。きも、あんなやつ。
などの、暴言が聞こえてきた。
「こら、テスト中だぞ」
先生の一言でみんなが静かになる。
直美の方を向くと、どこか、悲しそうだった。
テスト頑張れよ、と思いながら教室を出た。
放課後、生徒会室。
「はあ、本当のことを話してくれよ」
花より綺麗な、生徒会長の凜先輩が言う。
「言えません」
「はあ、次期生徒会長の話は見送りとなったよ」
「はい」
「それで、もう一度聞く、このスマホは君のじゃないのはわかっている、誰のスマホなんだ」
「言えません」
「ほう、喧嘩を売っているのか?」
目が鋭くなる。
「いいえ、凜先輩でも言えません」
「はあ、君には失望したよ」
声のトーンが低くなる。
「はい、すみません」
「君には、夏休み中ずっと学校に来てもらう。それから、テストはまた今度受けてもらう」
「はい」
「わかったなら、早く私の前から消えてくれないか?見てると虫唾が走るから」
酷く怒っていた。
「失礼しました」
そう、言い俺は生徒会室を出た。
学校を出ると、成瀬が待っていた。
「よ!問題児さん」
「お待たせ!ってなるかよ」
大爆笑をする成瀬。
「そりゃそうか、お前のスマホじゃないのよくかばったな」
「色々あるんだよ」
「お前はあの頃から変わってないな」
「そうかもな」
俺たちはゆっくり歩き始めた。




