24話 愛が重いのは、その人のことが好きすぎるだけ
手の甲から出る血はいつもより赤くなっていた。どんな色でも食べる勢いの赤さだった。
体は痛いと思っているのに、心は痛いとは想っていなかった。
「だ、大丈夫?」
志保は戸惑っていた。今起きていることがありえないと思っている。
「大丈夫だよ」
「なによそれ」
「これが証だ、だから約束を守ってくれ」
「でも」
「頼む、志保は可愛んだから」
「わかったよ。けど、拓哉の心を傷つけるよ」
「いいよ」
「やっぱり、拓哉は最低だよ」
「そうかもな」
俺は、志保の手を握り家を出た。
※
俺たちは病院に着いた。志保は、琴音に会いたくないため外で待つことにした。
病院に入って、琴音の病室に向かう。病室に入ると琴音と、早百合がリンゴを食べながら話していた。
琴音はベットに横になっていた。
「大丈夫なのか琴音」
俺は琴音の横にある椅子に座り琴音をみる。
「ちょっと、怖くなちゃって。ごめんねどうしても拓哉に会いたくて」
「別に大丈夫だよ。俺が隣にいるだけで救われるならいつでもいるよ」
「やっぱり少しまだ怖いの、どうしてもプレッシャーが私を殺してくるの。もしかしたら、私のピアノの音は汚いじゃないかって、満足してないんじゃって、考えてしまうの」
「大丈夫、琴音のピアノは世界で一番綺麗だよ。連弾した俺だからわかる」
「そうかな」
照れる表情に俺も照れてしまう。
「私にはそんな言葉言ってくれないのに」
早百合が不満そうに愚痴を零す。
「そうか?」
「そうよ」
「早百合と拓哉って仲良いんだ」
「よくないぞ、だって俺にだけ冷たいし」
「ええ、そうよ、何が悪いの?拓哉だって私にだけ優しくしてくれない」
「おい、そっちが先に俺に冷たくしたんだぞ」
「なによ」
「てか、琴音って早百合と友達だっけ?」
「ええ、結構前から」
「いつ?」
「あなたの噂が広まってから」
「えええええ」
いつの間に。てか、コミュ力高。
「あのさ、私だけ拓哉に頼るのは嫌だから、なんか悩みとかないの?私も頼って欲しい」
真剣な表情で言う。
「悩みか」
悩みが、ないと言ったら嘘だ。けど、誰にも話せないんだよな。絶対に誰にでも話せない、親友でも家族でも。
「ないかな、なんせ俺はスクールカースト最底辺だぞ、悩みなんかあるともうか?」
「何よそれ」
笑う琴音と、また、なんか言ってるよこの人みたいな表情をする早百合。
俺は、みんなには幸せに生きて欲しい。悲しむの俺だけでいい。
その後、30分程度話した。
「少し落ち着いたよ、ありがとね拓哉」
「うん」
「また、一緒にピアノを弾こうね」
「楽しみにしとくよ」
「うん、ありがとね」
「呼ばれたらすぐに来るよ、約束したから」
「ありがとう」
「じゃあな」
俺は、早百合と琴音に手を振る。忘れていた、手の甲に傷があることを。家に帰ったら手当しないとな。
「ねえ、さっきから気になったけど、手の傷どうしたの?ついさっきできた傷みたいだけど」
俺は、一瞬固まった。なんて言おう。転んで怪我をした?それは、違うな。志保のことを話す?それも、違うな。
「まあ、色々あってな」
「色々って?」
「今度話すよ」
「そう、待っとくよ」
早百合と琴音は腑に落ちていなかったが、今はそれでいいだろう。
俺は、病室を出て外に向かった。
志保の待っている場所に行くと志保はいなかった。
俺は、わかっていなかった。今は、志保を一人にしてはいけないと。
俺は、志保の家に向かった。とりあえず、走って、走りまくった。
家に着くと志保はベットに横になっていた。
「なんで来たのよ?」
「そりゃ、来るだろ」
「一個質問していいかな?」
「うん」
「私の愛って重いのかな」
「まあ、世間一般的にみたら重いと思うよ」
「でもさ、悪いことじゃなくない?ただ、その人のことが好きすぎるんだよ」
「そうだな、悪いとは思わない、俺もいいと思う」
「それならさ」
「それなら?」
「私は拓哉を愛してもいいの?」
額に腕を当てながら言う志保。
「いいよ」
「やった、ちゃんと受け取ってね私の愛を」
「うん」
「俺も質問していいか?」
「うん」
「どうして、俺なんだ?」
少し、間をおいて言う。
「似てるの、私が好きだった人に」




