22話 愛情は愛で始まり情で終わる
「早く服を着てくれないか?」
「ええええ?なんでよ?」
「嫌なんだ、こういうのは」
「嫌って?」
「そのまんまだ、だから服を着てくれ」
「もーそこまで言うなら」
志保は制服を着た。俺は、こういうのは嫌いだ。体が拒絶をするんだ。こんな展開は嫌だ。
「俺は、お前を救うと決めてる。けど、そんなのは違う人にしてくれ」
「違う人って?私には拓哉しかいないよ」
「でもさ、こんなに傷があるのに、私を幸せにできるの?」
「俺の、心に傷をつければいい」
「ほんと?じゃあ、明日から楽しみだな~」
「え?明日って?」
「え?今日は家に帰さないよ」
「うん?え?」
「え?だって、明日遊びに行くんだから」
俺に拒否権はないのかよ。てか、洋服も何も持ってきてないんだけど。
「まって、両親は?」
「ああー私を置いてどっか行ったよ」
なるほど、そうか、そうかよ。なんだよそれ、無責任すぎるだろ。
「もしかして、同情してる?そんなの要らないよ、だって拓哉がいるもん」
ニッコリと笑う志保。そして、それをみて寂しい気持ちになる。俺が隣にいるだけで救えるならずっと隣にいるよ。
「どうやって暮らしてるんだ?」
「ああーそれは、親が毎月お金を送ってくれるんだ」
「え?」
お金を送ってる?いや、なんで一緒に暮らしてやらないんだよ。まだ、16歳だぞ。
俺は、怒りが沸いていた。
「だから、今日は一緒にいてよ」
なんとも言えない表情だった。
「じゃあ、今日だけな」
「ありがとう」
「今からゲームしない?」
「なんのゲーム?」
「私の長所を拓哉が言って、拓哉の長所を私が言う」
なんですかそれ、いかにもカップルがやりそうなやつじゃないかよ。
「私からね、誰にでも優しい」
褒められてるのに全く照れないのはこの部屋が異常だからだろう。
「そうだな、可愛い」
「ぐへへ」
聞いたことのない笑い方やめてよ。
「んーと、人を容姿で評価しない」
人を容姿で判断しないか。確かに俺は容姿では判断しないと思っている。誰でも助けを求めたら助けたい。それが俺だ。
「じゃあ、目が可愛い」
待ってくれよ、このゲーム俺にはきついよ。ちょー帰りたい。
「そうなの、まさか私の目を可愛いと思ってたの?嬉しいよ」
「そうだな拓哉の長所多すぎるよ。ん-と、誰にでも平等」
平等ね。平等は絶対にないんだよ。なぜ、同じ人間なのに歩む人生が違う?なぜ、同じ人間なのに悲しいことが多い人生がある?
これは、平等とは言えない。この考えは屁理屈かもしれない、けど、納得できないんだ。
俺だって全員に平等でいたい。けど、それは無理だ。必ず邪魔者が出てくる。
「えーと」
「そうだ、私ご飯作ってくる」
「え?でもまだ、ゲーム終わってないけど?」
「私の手料理食べて欲しいの、隠し味もたっぷりと入れるから楽しみにね」
無理、楽しめるはずがないだろ。隠し味がたくさんあったら、隠し味じゃないだろ。
「俺ができることあるか?」
「じゃあ、私のナイフ捨てといて」
「え?捨てるのか?」
「うん、だって家に来てくれたもん」
「あ、ああ」
志保は料理を作りに部屋を出た。
そこで、俺は考える。次に何が起きてもいいように、最善の策を。
俺は、志保の部屋からナイフを探す。
俺は収納棚を見つけた。四段まである棚だった。
一段目を開ける。これは、見なかったことにしよう
二段目を開ける、おい、見なかったことにしよう。
三段目を開ける、まじかよ、見なかったことにしよう。
四段目を開ける、そこには、大量のナイフがあった。どれも綺麗とは言えないよ状態だった。
すると、俺の視界が暗くなる。
「だーれだ」
「志保」
「正解」
どんな問題だよ。
「私の手料理を食べて」
そう言われて、テーブルに置かれているカレーを食べる。意外にも味は普通に美味しかった。
「めっちゃうまい」
「本当?よかったー隠し味バレないんだ」
「その言い方、怖いから辞めて」
「やめてって?私のカレーはあなたには重すぎるの?」
「そうじゃない、その、髪の毛とか入れてたら怖いだろ」
「髪の毛?まさか、そこまではしないよ」
そこまでね、そ、こ、ま、で。つまりそれ以下はあるのかよ。
「まあ、隠し味なんて入れていないし」
「よかった」
俺は、カレーを食べ終える。
「本当に美味しかったよ」
「ならよかったよ、私の拓哉」
※
カレーを食べ終えてから4時間が経過していた。妹には友達の家で泊まると送ってある。今度、好きな物を買ってあげないとな。
「妹可愛いね」
「おい、妹になにかしたら絶対に許さないからな」
「なにそれ、いいな、その愛情。私にも欲しいよ。頂戴よ」
俺に近寄ってくる。顔と顔の距離が近くなる。
「私にも頂戴よ」
「まて、落ち着け。明日遊びに行くんだろ?」
「行くよ」
「その時間に愛情を注ぐから」
俺は、自分の言ってることが理解できなかったが。志保は納得していた。
「本当に?嘘じゃないよね。もー本当に好き」
今日だけで、何回好きって言われたか。
「もう、寝るか」
「うん」
志保はベットに向かう。俺は床に布団を敷く。
部屋は完全に暗くなり、深夜を表していた。
「ねえ、起きてる」
「起きてるよ」
「私のこと好き?」
「わからない」
「ねえ、私のこと好き?」
「好きって言ったら救われるのか?それなら、わからない」
「ねええ、私のこと好き?」
「強いて言えば、好きではない、けど親友だ」
「ねえ、ねえ、私ってさ生きる意味なんてあるのかな?」
「生きる意味はあるだろ、俺の隣にいないと寂しい。だから、自傷行為はもうやめてくれ」
「ねえ、私ってさ拓哉の隣にいてもいいのかな」
「いてもいいよ」
「でもさ、噂を流したのは私だよ?憎んでないの」
「憎んでいないよ」
「私は君を地獄に落とそうとしたんだよ、それでも許すの?」
「許すよ。ただ、今地獄に落としたら、志保も一緒だけどな」
「優しすぎるよ」
「そうかもな」
「ねえ、本当に私のこと可愛いと思ったの?」
「思ったよ」
「ねえ、私の隣にずっといてくれるの?」
「なるべくな」
「好きな人はいないの?」
「いないな」
「好きな食べ物は」
「イチゴ」
「じゃあ、じゃあ、」
「大丈夫、俺は明日も、いるよ。だから、安心してくれ」
「うん」
そして、志保は静かに眠った。
俺は、立ち窓の前に立つ。星を眺める。
傷つくのは、俺だけでいい。そう思いながら流れ星を眺める
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