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11話 理想と現実

花の香りがする保健室。落ち着く香り。

 目が覚めると周りには、凜、志保、早百合、成瀬が居た。

 俺は自分の手を上げ見つめる。この手は、汚れている。誰かの手を握る資格もない。ただ、離すこともできない。

 俺は作り笑いをする。

「ごめんなさい」

 早百合が言う。大丈夫だ君は何も悪くない。

「成瀬から話を聞いたの、私はなんてことを」

「大丈夫だよ」

「ごめんなさい」

 ごめんなさい、としか言っていなかった。

「私たちも話を聞いた。その、大変だったな」

 どうやら、早百合たちは成瀬から聞いたみたいだ。相馬が話していない、本当のことを。

「そうですね、けど、俺の手はもう汚れているんです」

「汚れてなんかいない、君は大切な人を守ったんだ」

「守ったか」

 保健室には、花の香り以外に悲しい匂いがした。

「早百合、俺のこと嫌いか?」

 俺は知りたかった。あの時言ったことは本当なのかを知りたかった。

「違う、私は相馬から話を聞いて、あなたのことが怖くなったの、写真を見せてもらった。その写真はあまりにも君じゃなかった。だから、私を騙してるって思ったの。本当は性格が悪くて、いつか豹変してあの姿になるんじゃないかなって、それに、相馬を殴った原因が分からなかったから余計に怖かった」

 そっか、色々説明不足だったな。勝手に全て分かっていると思っていた。

 あの姿か、どうしても思い出したくない、忘れよう、今だけは。

「相馬を殴った原因は、志保が可哀そうだったからだ。動画にもあったようにあいつは志保を利用していた。利用してるって言った時怒りが沸いた、お前はそれほど優れている人間なのかって、人の気持ちを弄んで楽しいのか、こいつは殴らなきゃダメだって思った。だから、殴ったんだ。殴らないと志保の悲しみや、俺の怒りが落ち着かなかった」

「それで、あの姿は、そうだな、」

 言葉が見つからない。どれだけ探しても、深海の奥を探しても、見つからない。

「あの姿は、何も言えない」

「そうだったんだ」

 早百合は暗い表情を浮かべながら言う。

 人を傷つける人が許せない。

 人は、自分が一番の生き物だ、必要のないものは排除する。そんなのってあんまりじゃないか、俺はそんな人間になりたくない、全員が必要だ。俺の人生で誰も泣かしたくない。

 俺が犠牲になれるならなってやりたい。

 せめて、俺の隣に居るなら幸せに笑っていて欲しい。悲しむことのない人生を歩んで欲しい。

 けど、理想と現実は違う。

 必ず邪魔者が出てくる。

 人を傷つける人が出てくる。

 怒らせる人が出てくる。

 理不尽な人が出てくる。

 悲しくさせる人が出てくる。

 あまりにも、傷つく機会が多い。

「俺は、俺の隣に居る人たちは幸せであって欲しいんだ、いつだって笑っていて欲しい」

 理想を語る。

「だから、俺のことが苦手だと思うなら俺と距離を置いてもいい」

 早百合の方を見つめる。

「私は、あの時言ってしまったことを後悔している。私はあなたに興味があるの、だって私に興味無さそうで忖度もしてくれなかった。それが嬉しかった。

 けど、私は君を傷つけた、思ってもないことを言ってしまった。」

 容姿端麗な女性は様々なストレスがある。本当はその人に興味がないのに近づいて来る人、勝手に期待される。模範生でなくちゃいけない。いい事なんて1つもない。

 深く反省していた。ずっと神に願い続けるみたいに。

「私は、あなたの隣に居てもいいのかな、あんな酷いことを言ってしまったのに隣に居てもいいの」

「いいよ、許すよ」

「なんで、なんでそんなに優しいの、私は、あなたのことを雑な扱いをしていたんだよ。それに相馬の話を信じて、本当のことを知らないであなたを傷つけた、それなのに許すの」

「ああ、それでも、許すよ。」

「なんでよ」

 泣きながら、後悔しながら早百合は言う。

「失ったんだ」

 周りの人たちは俺を見る。

「まだ、今は言えないけど、いつか話すから信じて欲しい」

 まだ、俺自身向き合えていない。忘れるように逃げていた。だって、認めると、俺と成瀬の心にある何かが消えてしまうか。

 滲む視界で、天井を見つめる、いつか、言える時が来るのかな。

「私は信じるよ」

 志保は言う。

「私も」

 凜が言う。

「お前は次の生徒会長だぞ、自分に自信を持て」

 なんも、慰めになってませんよ。

「私は、ずっとあなたの隣に居ると決めた」

 早百合が言う。告白ですか?と心の中で思うが今は気にしないでいよう。

「今度は信じてくれよ」

 冗談交じりに言い。俺は体を起こす。

「さてと、みんなでパフェを食いに行こうか」

「じゃあ、私はイチゴパフェで」

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