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魔術師スクルージ

 事前に訪問の連絡はしているから、スムーズに案内された。


 研究室の一室をノックすると、「どうぞ」という声がする。

 俺たちが部屋に入ると、真ん中には机が置かれ、多くの魔術書が積み上げられていた。


 その奥に腰掛けているのが、魔術師エリック・スクルージのようだった。

 スクルージは、茶色のスーツに身を包んだ紳士だった。燃えるような赤毛に、金色の瞳が印象的だった。


 彼は立ち上がると、俺たちに微笑み、会釈した。

 物腰柔らかだが、独特の迫力がある。


「はじめまして。ハリソン研究所の研究員のエリック・スクルージです。水晶の魔術師、といったほうが通りが良いかもしれませんが」


「お噂はかねがね伺っています」


「あなたも時計塔の魔術師という方が有名ですね。ストリックランドさん?」


「ありがたいことに、そのような称号も授かっています。私には過分な名誉です」


 俺とスクルージは視線を交わした。沈黙のうちに、互いの思惑を読み取ろうとする。

 スクルージの金色の瞳は、虚ろだった。まるで何も見ていないかのようだ。


 俺は、背筋が凍る思いをした。俺が人を見る目が確かとは言えないが、危険人物だ。


「……スクルージさんの同僚のジョージ・ブラックさんの保険金の件で調査に来ました。調査の結果が問題なければ、保険金は問題なく払われますのでご安心ください。あくまで、形式的な調査です」


 最後の言葉を、俺は強調した。

 相手を警戒させず、調査を円滑に行うためだ。


 保険金殺人の疑いがあるなんて言われれば、誰だって気を悪くしかねない。

 スクルージは両手を広げた。


「どうぞご自由に調べてください。私に協力できることであれば、何なりと協力しますよ」


 スクルージは相変わらずにこやかだった。

 そして、スクルージはちらりとクレアに視線を向けた。


「可愛いお弟子さんですね。しかし独身の身で女の子の弟子を取るといろいろと不都合があるのでは?」


 スクルージの言葉にクレアはちょっと顔を赤くした。


「あ、あのっ……そのっ……お師匠様はわたしに優しいですから、不都合なんてありません」


「おっと、これは失礼しました」


 スクルージが眉を上げて、くすりと笑う。まあ、たしかに困ることがないとはいえないのだけれど、おおよそクレアとは上手く師弟関係を築けていると想っている。


 早速、俺達は事故の現場を見ることにした。


 スクルージが歩く途中、俺たちに言う。


「亡くなったブラックは、良い奴だったんですよ」


「お二人は共同研究者だったお聞きしました」


「新型の魔力導出機の開発を一緒に進めていましてね。あと少しで完成というところだったのですが」


 この世界において、魔法を使うためには、魔力と呼ばれるエネルギーが必要だ。それは個々の人間に備わっているもので、血統にその量は左右される。


 ただ、ここ百年のあいだに、空気中の魔力を人工的に集積し、魔力量が少ない人間でも、魔法が使えるようにする機械が発明された。


 それが魔力導出機だ。

 さしずめ蒸気機関の発明といってよい革命的な出来事だった。


 その新型の機械をスクルージとブラックは共同開発していたのだという。


「私がブラックの保険金の受取人になっていたのも、万一のときに開発を続けるための資金とするためでした」


「魔術の研究も資金が必要ですからね」


「あなたが保険の調査員をされている理由も同じでしょう?」


 その言葉には、魔術保険の調査員なんて、魔術師――それも称号持ちのやる仕事じゃないというニュアンスがあった。


 クレアが物言いたそうな顔をしていたが、俺は手で制して、「そうですね」とだけ答えた。

【お願い】


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