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彩式+救済者 -さいしきあっど すまいる!-  作者: かみきほりと
ノルトの収集者(コレクター)
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03 奇妙なお茶会 後編

 冗談抜きで、推薦するのだからコトリには全力で頑張って欲しいのだが……


「おっ、それ、新作だな。ちょっとだけもらうぞ」


 なんてことを言いながら、シノが半分ほど食べてしまった弾けるモナカに手を伸ばす。

 それを見て、気負ってたぶん拍子抜けしたフレディは決心する。

 もう、腹は決まった。この場では一切遠慮しない。そもそも、ここの払いは全部オレなんだから、この際、言いたいことは全部言わせてもらおう……と。


「あー、カグラ、ちょっといいか?」

「えっ、はい。フレディさんも食べますか?」

「い、いや、そうじゃないんだが……」


 苦笑しつつも、弾けるモナカという名前が気になっていたフレディは、シノが切り分けたカケラを、指でつまんで口に放り込む。


「うぉ、これは……スゲーな」

「ですよね。びっくりしますよね」


 見た目はアイスクリームのモナカなのだが、口の中に入れると激しくシュワシュワと発泡する。

 あっという間に溶けてしまった、という印象だが、あれほどの甘みにも関わらず、後味がサッパリしている。

 思わず、もうひと口食べたくなるような、そんな一品だ。


「よかったら、全部食べてもいいですよ」

「いや、美味ぇけど、もういい。ありがとう。あー、それよりカグラ、許可証は取ったか?」

「許可証って、ファレンシア滞在許可証のことですよね。まだ持ってませんよ。初等部ですから」

「あー、そういやそうだな。でも、下界……じゃねぇや。ファレンシアに長く住んでたんだから、割と簡単に取れんじゃねぇか?」

「んー、どうでしょ。ファレンシアと言っても広いですから。場所が違ったら言葉とか風習とか、全然違いますし」


 共通語もあるが、独自文化を大事にしている人たちも多い。シノやコトリの出身地もそうだ。


「あー、いやいや、そうじゃねぇ。あくまでも重要なのは、現地の人たちと仲良くできるか、だからな。それも術士だから尊敬されるってんじゃダメだ。鬼や悪魔が退治できる以外は、普通の人と変わらないって思われるのが理想だな」

「なんだか、あまりイメージできないですね……」

「まあ、実際に体験してみねぇと分かんねぇかもな。でも、取るなら早いうちに取ったほうがいい」

「そうですね。今度、先生に聞いてみます」


 フレディがニヤリと笑う。


「そこでだ。お詫びついでに、もうひとつプレゼントでもどうかと思ってな。今度ファレンシアに降りて、小さな女帝様の戦いを見学させてやりてぇと思うんだが……」


 コトリのスプーンが止まる。


「おい貴様、何を考えている」


 疑問ではない。詰問だ。

 コトリの表情や視線に鋭さが戻っている。


「いや、ほら、術士としてファレンシアに行くって体験をさせるのも悪くないだろ? ならついでに、堕ちたるモノ(ソルカイル)との戦いを見せておくのも悪くないって思うんだが。小さな女帝の戦いだったら、最高のプレゼントに……」

「そういうことではない。私は、一体何を企んでいるのかと訊ねているんだが?」

「た、企むって、人聞きが(わり)ぃな……」

「私の推薦も不自然だが、まあある程度は事情を知っているので良しとしよう。だが、彼女を巻き込んで何をしようとしている。下手に誤魔化せばより心証が悪くなるだけだぞ」

「いや、だから別に、何も企んじゃいねぇって」

「なら、なぜ見学なんて話になる? この子に許可証を持たせるのはいい。あって損はないからな。それが委員会に勧誘するための下準備だとしても構わない。だが、私やこの子を委員会に引き込んで、お前に何の得がある?」


 コトリに脅す意図はないが、詰め寄られたフレディは顔を引きつらせる。

 それを見たシノは、机越しにフレディへと顔を近づけると……


「私、あまり目立ちたくないんですけど。何を企んでいるのか、全部話してくれますよね。フレディさん☆♪」


 炸裂する極上スマイル。

 シノは、遠慮のない振る舞いを楽しんでいるだけだが……

 フレディは、自分が何か悪い影響を与えてしまったのではないかと心配する。


「いや、本当に何も企んじゃねぇんだが……。なあ、女帝はリタ術士会のことをどう思う?」

「過去の栄光にすがる落ちこぼれ集団」


 身もふたも無い事を、よどみなく即答する。


「ったく、容赦ねぇな。まあ、その通りなんだが……。つまりだ、能力のあるヤツや向上心のあるヤツにゃ居心地が悪いってのは感じてるよな。でだ。ここに居りゃ、……極端に言えば、目立って潰されるか、潜んで腐るかって選択を迫られるわけだ」

「相変わらず話が長い」

「って言われてもな。これを聞いてもらわねぇと、先の話ができんからな……」


 お代わりしたコーヒーをすすり、気を取り直して続ける。


「でだ。実力で目立っちまったオレは、リタ上層部の権力闘争に巻き込まれたんだが、そんなゴタゴタはゴメンだからな。委員会メンバーになって逃げたってわけだ。他にも選択肢があったかも知れんが、あの時はそれしか考えられなかった。まあ、運が良かったんだろうな。これがまた、大正解だったわけだ」

「ふむ。つまり、リタの術士は上から下まで腐っていると。貴様は、その朽ち行く術士会から私とこの子を救い出そうとしている。その解釈で間違いないか?」

「あっ、えっ……まあその、なんだ。あー、その通りなんだが……。ったく、オレの苦労がバカらしくなるほど簡単にまとめたよな、おいっ」


 ドッと疲れが噴き出たフレディは、天井を見上げる。

 呪いにも似たリタ術士会の悪習から、将来有望な術士を解き放ちたい……とは思っている。

 だが、助けてやるだなんてカッコイイことを言うつもりは無い。

 ただ、袋小路に入り込む前に、選択肢を増やしてやりたいだけだ。


「貴様の話が長くて回りくどい。その上、まだ肝心な部分が聞かされていない。まあ推測はできるがな」

「肝心な部分?」


 別にフレディは、とぼけているわけではない。

 本当にもう、これ以上は何もないのだが……


「貴様に何の得があるか、だ。ファレンシアでは堕ちたるモノ(ソルカイル)が狂暴化している上に、数も増えている。そのせいで、優秀な術士は討滅委員会に引き抜かれ、ただでさえ人員不足の調査委員会が困り果てている、という事情は知っている。大方、勧誘に成功したら報酬が出るってところか」

「あー、いやいやいや、そんなもん出ねぇよ」

「なに、違うのか? なら、徒党を組んで、委員会を牛耳るのか?」

「ちょっと待て。なんかオレ、すっげぇ誤解されてねぇか?」

「これも違う、となると……」


 コトリの常識では、無償の奉仕などあり得ない。

 まあ、それをフレディが聞けば、自分のことを棚に上げてよく言うと呆れるだろうが、とにかく何か裏があるに違いないと思考を巡らす。


 不意にコトリが顔を上げる。

 視線はフレディに固定され、気味が悪いほど、妙に納得した表情を浮かべている。


「ちょっ、なんだ? すっげぇ怖いんだが……」

「いや、貴様のことを少し見直しただけだ。なるほどな……」


 当の本人(フレディ)には、何のことだか分からない。


「貴様の目的は『意識改革』だな。確かに、短期間のうちに委員会メンバーが何人も生まれれば、リタにとっては快挙だ。他の術士会はもちろん、術師協会全体が注目するだろう。その結果、リタの術士たちに向上心が芽生え、この現状に疑問を持つ者も増える。頑張れば上を目指せると知れば、怠ければ落ちこぼれるという当たり前のことにも気付くだろう。ふむ……なかなかの策士だな」


 狼狽するフレディを無視して、コトリは勝手に話を進める。


「それを主導したとなれば、委員会内だけでなく、リタの中でも実力は評価されるだろうし、発言力も増す。結果、全てが良いほうへと向かうのなら、その口車に乗ってもいい」


 変な方向に話が流れ始め、フレディは困惑する。そして、ふと気づく。


(やべぇ、こいつ、オレに改革の旗振り役をやらせようとしてんじゃね?)


 リタ術士会で培ったフレディの危機察知能力が反応し、盛大に警鐘を鳴らす。


(いやいや、小さな女帝に限って。オレに役目を押し付けるなんてことを考えちゃいねぇはずだ。オレが改革を考えていると、本気で思っているに違いねぇ。しかも見直したとか、らしくねぇことを……? 見直した?)


 つまり、コトリ自身、改革が必要だと思っているってことだ。

 それが本当ならば、驚愕すべきことである。

 他人のことなどお構いなしで我が道を行く、あの小さな女帝が、術士会の現状を憂いているのだ。


(あー、いやいやいや、落ち着け……)


 女帝にとって重要なことは、堕ちたるモノを討滅しファレンシアの平和を守ること。なので、その本分を思い出した術士が増えることを、単純に期待しているだけとも考えられる。


(まぁ、あの女帝様が、少しでも他人に期待を抱いたってんなら、そりゃそれで嬉しいこったが……)


 考えてみれば、この気まぐれお茶会(スイーツパーティ)にも疑問がある。今までなら、迷惑をかけた相手を気遣ったりなんてしない。

 保護対象である小さな子供を不注意で危険にさらしてしまい、怖がらせてしまったことへの詫び……とも考えられるが、それは裏を返せば、カグラを特別扱いしていることに繋がる。

 これは、コトリに何か心境の変化があったと考えられるが……


 思考の迷宮を彷徨いそうになったフレディは、慌てて引き返す。

 早く否定しないと、本当に改革者に仕立て上げられてしまいそうだ。


「あー、なんだその。術士会の改革なんて、オレにゃ無理だ。オレもリタの術士だから、リタがより良い場所になりゃいいとは思っちゃいるが、上層部がアレじゃ無理だろ」

「つまり、今のリタの体たらくは、無能な上層部が招いたと、そういうことか」


 誰も無能とまでは言っていないが、フレディは訂正しない。


「あのアーリステリアならともかく、オレにゃ先を見通すなんて能力はねぇからな。それでも、このままじゃリタがヤベエってことぐらいは分かる」

「先を見通す? あっ、ごめんなさい」


 二人の話をできるだけ邪魔しないように大人しくしていたシノだが、思わず口走り、あわてて謝る。


「おっ、なんだ? カグラはこういうのに興味があるのか?」

「そういうわけじゃないんですけど、そんな能力があったら便利かなって……」

「使い方次第だろうな。研究もされてるみてぇだが、今んとこ成功したって話は聞かねぇ。古の術式じゃねぇかって噂になっちゃいるが……まあ、再現できても公表はできねぇだろうな」

「アーリステリアさんって、凄い術士だったんですね……」


 しみじみと呟くシノに、フレディが驚愕する。


「ちょっ、待てカグラ。伝説の術士を知らねぇってことはねぇよな」

「伝説の術士……ですか?」


 フレディの認識では、アーリステリアと言えば、術士だけでなくファレンシアの人間にも広く知れ渡った存在なのだが、シノは不思議そうにしている。


「あーなんだ。アーリステリアってのは、永遠の少女とかチャグの守護神とか、殺戮の魔女ってのもあったっけか。まあ、そんな異名をゴロゴロ持ってるような伝説の術師で、ウソかホントか分かんねぇが、年齢不詳ながらも百年は生きてるって話なのに、未だに見た目が少女のままっていうトンでもねぇ存在だ」


 シノがアゴに指を添えて、不思議そうに首を傾げる。


「えっと、それって……まだその人、生きてるってことですよね。じゃあ、その術式、本人から教えてもらったら……って。ごめんなさい、そうですよね。教えてもらえないか、教えてもらっても扱えないってことですよね」

「たぶんどっちも、だろうな。守護者との相性もあるだろうし」

「同じ術式でも、発動しなかったり、効果に違いがあったり……でしたっけ」

「まあ、そんな感じだ。ちなみにカグラは、この術師協会にどれだけの術士会があるか、知ってるか?」

「ん~、たしか……二十二でしたっけ」

「まあ、そうだな。広報とかに出てんのはそんなもんか。全部で四十九だ。まあ、近いうちに整理されるってこったが……。なら、このイージスリング以外に、術師協会がどんだけあると思う?」

「えっ!? ほかにも術師協会ってあるんですか?」


 驚くシノの様子に、逆にフレディが驚かされる。

 でも考えてみれば、シノは年齢こそ十代だが、まだ来て日が浅い。単純計算で五年かけて得る知識を、必死で詰め込んでいる所なのだから、知識に偏りがあっても仕方がない。

 とはいえ、ファレンシアでも得ることが出来る知識ですら、あまり知らないっていうのは不思議だ。だが、辺境なら、そういうこともあるのかも知れない。


「あっ、いや……まあ、そうだな。あるんだよ。大きなとこは五つ。小せぇのも含めたら十七だっけかな。ウチは三大術師協会のひとつってことになってんだが……。アーリステリアってのは、どこの術師協会にも入ってない、いわゆる『ハグレ』ってやつで。あー、まあ極端な言い方をすれば、小せぇ組織ぐれーなら一人で対抗できんじゃねぇかってほど、でたらめな力を持ってる術士ってこった」

「ハグレ……ですか。すごい人なんですね」

「まあそうだが、それだけじゃねぇぞ。今の形式に落ち着く前の法術は、もっと複雑で、術師の資質が……ってスマン。そんな事を言われても分かんねぇよな。つまりだな……」


 正直な所、シノは難しい話に飽き始めていた。

 決して理解できないわけではない。言っていることは分かるのだが、初めて聞くことも多くて、頭がパンクしそうになっていた。

 なのに話が脱線していて、いつまでも目的地にたどり着かない。

 それじゃ、飽きても仕方がない。


 フレディにしてみれば、折角の機会だから教えられるだけ教えてあげようと頑張っているわけだが、空回りしている感じは否めない。

 何かを思いついたのか、おもむろに栗のロールケーキを手に取る。


「オレたちが使う近代法術ってのは、すでに美味しく焼きあがったスポンジやら、糖蜜漬けの栗やら、きめ細かく泡立てられた生クリームやらが用意された状態から、コレを作るようなもんだ」


 皿の上で、ロールケーキが分解されていく。


「だが、近代法術が出来る前……つまり、古代法術だと、栗を茹でて皮をむいて糖蜜に漬けたり、その糖蜜を作る所から始めたり、牛乳や卵白、砂糖などでクリームを作ったり、スポンジ生地をこねる所から始める事になる。もっと言えば、いい材料を集めるところからだ。……って言えば、ちょっとは違いが伝わるか? ……ってなんだ、その顔は」

「フレディさんて、ケーキ作りに詳しいのですね。私も作ってみたいって思ってたんですよ。まあ、私は和菓子のほうに興味があるんですけど」

「いや、そういう話じゃないんだが……」


 近代法術は材料がそろった状態、古代法術は素材集めから……というのは、昔からよくある例え話だが、それを自分なりにアレンジして、なかなかいい感じにまとめたと思っていたのに、この反応だ。

 上手く伝わってないようで、フレディはガッカリする。


「ちゃんと分かってますよ。材料から集めるって、ちょっと面白そうですよね。工夫したり、隠し味を入れたりも、いいですよね」

「いやだから、ケーキ作りの話をしてるわけじゃねぇんだが……」

「ちゃんと分かってますよ。同じ術式でも人によって効果が少し変わったりするのですよね。それが、古代法術だと相性や能力の差、体調や精神状態、場所や天候などの、様々な要因で、場合によっては全く違う効果が出たり、失敗するから、それだけ調整が難しい……でしたよね」


 さすがに難し過ぎたかと反省していた所に、不意打ちを食らったフレディは、目の前の少女を信じられないモノでも見るかように、驚愕の表情で見つめる。

 シノが語ったのは、大人でもなかなか知らない知識だ。


「本を読むのは好きですし、術式の基礎は最初にいろいろと教わったので……。その時に、これってお料理に似てるな……って」

「これは将来有望だな。術式を料理のように扱うだけでなく、古代法術さえも面白そうだと言ってのけたぞ」


 あのコトリが笑っている。それも心の底から愉快そうに。


「あっ、ごめんなさい。ちょっと良くなかったですよね。危険だってあるのに」

「なあに構わんさ。料理も失敗すれば腹を下すし、死人も出る。それと同じだ」

「たしかに……そうですね」


 なんだか勝手に結論が出たようだ。

 古代法術は、昔話程度にして触れられていない、なんだか良く分からないがスゴイもの……というのが一般的な解釈だ。

 詳しい人に聞いたり、専門書を読むことで、ある程度は理解できても、実際に使えることはまず無い。

 普通の術師なら、わざわざ危険な古代法術に興味を持つより、近代法術の修練を積む。その方が安全だし有意義だ。


「あー、スマン。話が横道に逸れたな。……って、何の話をしてたっけ?」

「あっ、ごめんなさい。私のせいですよね。えっとたしか……、フレディさんが策士で、リタ術士会出身の委員会メンバーを増やして、術士会の意識改革を企んでるとか、そういう話だったと……」

「そうそう……って、違うからな。オレ、そんな面倒くせぇことはしねぇからな。あっ、いや、まあなんだ……」

 思わず本音が漏れる。

 術士たちのレベルアップを「面倒」のひと言で切り捨てるのは、委員会メンバーとして、あるまじき発言だ。だが、これで開き直った。今さら取り繕っても仕方がない。


「まあ、オレはリタを見限っちまったからな。改革なんてもんは、まだリタに愛着のあるもんがすりゃいいさ」

「結局のところ、変わるにしろ、変わらないにしろ、決めるのは個々の自由だ。我々がとやかく言う問題でもあるまい。それは上層部に任せよう」

 

 フレディの結論に、コトリも同意する。

 実際の所、いくらフレディやコトリが何かを画策したところで、リタ術士会を変化させるなんてことは、かなり難しい。

 下手に動けば、潰されるのがオチだ。

 いやまあ、ここに居る三人は、十分に目立っているのだが……


 コトリ自身、上層部から疎まれているが、害より益のほうが大きいと思われているから泳がされているに過ぎない……と理解している。

 なので、術士会以外の、より強い権力を利用して身の安全を図るという案は、一考の余地があると思った。

 それに、この子の将来に関わると言うのなら、戦闘を見せるぐらいなら構わないだろう。参考になるかどうかは、別にして。


「よし、了承する。ただし、身の安全は保障できないが」


 突然のことに、キョトンとするフレディ。


「あー、何のことだ?」

「その言葉が本気だとすれば、頭の検査をしてもらうべきだな。貴様が言い出したことだろ? その子に実戦を見学させてもいいぞ」

「ぉ、をぅ、そうだ。そう、了承? ……ってことは、いいってことだな」

「そう言っている。ただし、安全までは保障できない。いつも通り、私は堕ちたるモノ(ソルカイル)を滅ぼすだけだ」

「そ、それで構わねぇよ。カグラはオレが全力で守るから、いつも通りやってくれ。カグラもそれでいいか?」


 正直なところ、シノはそれほど見学にこだわってはいない。もちろん、貴重な経験になるとは思うが。

 完全にフレディの先走りなのだが、ずっと話を聞いていたシノは、空気を読んで即答する。


「はい。お願いします」


 結局この日、シノとコトリは八個ずつ、フレディが三個のスイーツを平らげ、残ったものは包んでもらい、この不思議で奇妙なお茶会は終了した。


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