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森の中 クマさん見付けて つかまえて

 エセドワーフ達の経歴を聞いてみると、実は彼等は元々は建築業や製造業等、その道のスペシャリストであった事が分かった。

「それが何故ドワーフに?」

「人間として出来る事はしたからの。更なる向上を目指すならドワーフになるしかないと思ったんじゃ!」

 よく分からんが、これだけは言える。

 馬鹿と利口は紙一重!

 この言葉を実践したエセドワーフ達には元のスペシャリストに戻ってもらおう!


 建物は建築界の鬼才、トニー・ヒューズの30年振りの新作って言うだけで、国中の建設業界で話題になるだろうとリーチさんは睨んでいる。

 この変人は、そんなに天才なのか?


 それに他の連中だって、その技術を眠らせておく事は実に勿体ない!

 スペシャリストならば、適材適所で使うのみ!

 

「エイジ様、私は何を」

 エリスがまたしても上目遣いで聞いて来た。耳以外は正にエルフの顔でその上目遣いは反則だろ!

「トニーの身の回りの世話でもしてくれ」

 

 エセドワーフは技術者はだけではなく、その妻や子供達も居る。独身の者が多いが、妻子持ちがトニー以外にも居た事が意外だ。

 尤もその家族が自給自足の生活に嫌気が差していたらしい。当然だろうな、よくあんな所で生活していたと思う。

 あの岩山には縫製技術は有ってもオシャレは出来ないし、カフェも無ければ雑貨屋も無い。

 食生活も貧しいし、具合が悪くても医者も居ない。エリスの母親も病気で数年前に亡くなったそうだ。

 それでよく、エリスはグレなかったと感心する。亡き母親は聡明な美人であった事は想像に難しくない。


「それでは早速、仕事に取り掛かるかの」

 トニーはそう言うと俺とリーチさんに色々と尋ねて来た。

 この地には地震が無いそうなので、耐震性とかは要らない。最初は俺の設計施工でもやれると思っていた。

 でもトニーというスペシャリストならば石を建材として使う事に長けている筈だ。

 トニーに賭けてみようと思う。


「まず図面作成だな。後、必要な材料をピックアップだ。大きさと数だけでなく、カットのリクエストも有れば言ってくれ」

「取り敢えず、石材はまだまだ足りん。木材も多めに用意してもらえんかの。大まかな量は明日迄に出す」

 トニーの表情が俄に引き締まった気がした。

「了解!」

 明日迄って早いと思ったが、それは敢えて言わない。その一言で妥協されても困る。


 今度は木材の確保だ。

 俺は今度はロンを伴って森へ行く。

 森の木に所有者は居ないそうなので、良さげな木を手当たり次第に伐採だ!


 先ずは魔法で風の刃を作り、つむじ風と言うべきか、幹の周囲を旋回させて枝を切り樹皮を剥ぐ。

 風の刃は景気良くグルグルと回ると、ほんの数秒で先端迄登って行き全ての枝を切り落とした。

 これは最新の樹木伐採ロボットを参考にさせてもらった。これらの作業は立木の状態で行った方が効率が良いそうだ。

 それが終われば今度は、風の斧とでも言うべき巨大な風の刃で本格的に伐採だ。

 切った木を運ぶ役は当然ゴーレム。こういった使い方をする分には、重機よりも使い勝手が良くて助かる。

 

「先生!」

 良さげな木を見付けに森の奥まで行ったロンがこれ以上無いくらいの全力疾走で戻って来た。

「ロン、そんなに慌てる程の良い木が有ったのか?」

「ハァハァ、たす……けて、ハァ…く…だ…」

 息を切らせながらロンが森の奥を指差すと、そこには巨大な熊が唸りを上げて迫って来ている事が肉眼で確認出来てしまった!


「あれは魔物か?」

「はい!間違いありません!」

「名前は?」

「確か、ナントカベアー」

「全然確かじゃねぇ!何だよ、ナントカって!」

「すみません、忘れました」

 元テイマーが聞いて呆れる。


 見た目は普通に熊に見えるが、この世界における魔物と動物の違い。それは体内から魔力が発生しているかどうかの違い。

 魔物の特殊能力は、魔力無くしては不可能だと言われている。

 飛ぶには適さない体形であっても大空を我が物顔で飛んでみたり、火を吹いたり、呪いを掛けるのも魔力が有ってこそだが、魔物の魔力の根源は判明していない。


 元の世界で見た深夜アニメだと魔物の体内には魔石が有って、それが魔力の源だった。

 だがこの世界では魔石は確認されていない。

 オウルドラゴンを解体している連中にその事を言ったが、やはり心臓とかから石は出て来ずに諦めた事があった。

 あれ以上解体して石が出たとしても、胆石とか尿道結石とかだと嫌だし!


 取り敢えず便宜上、クマと呼ぶ。 

 クマは俺達から5メートル位離れた所で立ち止まり、咆哮して威圧してきた。

 その迫力にロンは腰を抜かしているが、俺は多少の緊張感が走っただけだった。

 あのクマの魔物は大きさは3メートル位で一見するとヒグマの様だ。

 等と思っていると今度はクマが腕を上げ、爪で空を切り裂く!これは威圧ではない!

 見た目はヒグマだが、やはり魔物だ。真空波が俺達を襲ってくる!

「せっ、先生!」

 半泣き状態のロンの叫びが俺の鼓膜に達する頃には既に魔法で防御は固めてある。


 クマの真空波は全て防いだ。今度はこっちの攻撃だ!

 何の魔法を使うべきか考える俺の視界に木を運搬するゴーレムが映った。

「ゴーレム!」

 クマにはゴーレムで格闘させてみようと思う。

 他の魔法で森に影響を与える事は、今後の木材供給を考えると好ましくない。特に火を使ったら火事になって最悪だからな。


 狭い木々の間を難無く通れる様にゴーレムは2メートル級の中サイズ。サイズ的にクマよりも一回り小さい。それでも中々の好勝負をしている!

 腕を振り下ろす事が主な攻撃のクマに対し、ゴーレムはローキックで距離を保つ。

 かと思うとクマの腕を掻い潜り懐に飛び込み打撃を胸に打ち込む!だがクマの分厚い皮下脂肪に阻まれて効いてはいない様だ。

 ゴーレムは今度はレスリングのタックル様にクマの足を取って倒すが、クマは直ぐに立ち上がりゴーレムに一撃を加える!

 ゴーレムの身体を形成している土が大きく抉り取られた。人間が真面に喰らえば命を落とすと思わせる様な一撃だ!


 思わず手に汗を握る!これぞ格闘技の醍醐味!


 魔物とゴーレムの対決を見て考えた。

「ロン、あのクマの名前を何が何でも思い出せ」

「先生、何かお考えが?」

「ああ、あのクマを生け捕りにするぞ!」

「どうされるのですか?」

「あのクマには、祭りに出てもらう!」

「祭りですか?」

「ああ、ゴーレム祭りの重要キャラだ!」


 ゴーレムは選手交代して、大サイズの5メートル級のゴーレムを出す。

 大サイズゴーレムはプロレス技を仕掛け、文字通りの熊の抱擁(ベアハッグ)で暴れて抵抗するクマを抱き締めて森から連れ出して行った。

 邪魔な木々はその都度、風属性の魔法で切断する。


 イベントとして、ゴーレムと魔物の対決は盛り上がるに違いない!


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