ドワーフの 娘のエルフは 超美人
「石材が必要なのじゃろう?好きなだけ持って行けば良いじゃろう」
石材搬出の承諾は得た。後は切り出すだけだ。
「代わりにと言う訳でもないのじゃが、実はお願いが有ってのう」
「願い?」
代わりにお願いって、アンタら此処に勝手に住み着いただけで、岩山の持ち主でもないだろ!
それにこのシチュエーションは、面倒くさい事が多い。でも流れ的に聞かざるを得ないんだろうな。
「ワシらをそこで働かせてもらえんかの?」
「えっ!」
思わず声が出た。こんな変な趣味を持った老人を働かせる事に抵抗が無い訳が無い!
「ここでドワーフとしての暮らしはどうなる?」
「実は、そろそろ限界を感じてのう」
トニーはしんみりと俯いて呟く様に言った。
「限界?希望と信念を持っていたんじゃ?」
でなければ、こんな事はとてもじゃないが出来る訳も無い!
「此処は静かな所じゃが、自給自足の暮らしは楽ではなくてのう」
そりゃ、岩山だから生活向きの環境ではないだろうな。難を逃れて来た人でない限りは、こんな所に住もうなんて思わない。
もっと早く移住しようと思わなかったのか?
「体も動かなくなってきたし、ドワーフに成るべく磨いた腕も、奮う機会が無くては錆び付いていく一方じゃ」
そりゃそうだ。技術は使わなければ落ちるだけだ。
「それに、子供の事も考えて」
「子供?」
子供が居たのか?って言うか、奥さんが居たの?こんな変な趣味の人に。
「子供が言ってたんじや、「ドワーフとエルフの間に生まれた自分は何なの?」とな」
「はっ?」
「妻はエルフだったんじゃ!」
表情には出さないが、思いっ切り脱力した。似た者夫婦か!
なるほど、奥さんはエルフ志望で、子供が自分は何なのか悩んでいると。
「子供に言ってやってくれ!」
「何と?」
「人間だと!」
何か言いたげなトニーに移住の支度を促し、俺とロンは来た道を戻った。
「先生、彼等は街での暮らしに順応可能でしょうか?」
「難しいかも知れない。でも親の変な趣味に子供を付き合わせたら、ダメだよな」
話しながら開けた所に出てきた。此処なら搬出作業もし易い。
「ウォータージェット!」
実際の石材加工でも使われているウォータージェットを使う。硬い石でも良く切れるし、水なので摩擦熱による焦げ付きを気にしなくて済む。
幾らか切り出した所で一旦岩山から離れて土の有る所まで移動。ゴーレムを作る。
今回は石を運ぶ為にゴーレムを作るので、必要なのはパワーだ!と言う訳で、今迄で一番巨大なゴーレム作りに挑戦した!
従来モデルは大サイズでも5メートル位だったが、今回は8メートル位はありそうだ!
大体、3階の天井の高さ。
ゴーレムを引き連れて、切り出した石を運ぶべく戻ると、そこにエルフが居た!
スラリとした女性のエルフ。淡い金色の長い髪に透き通るような白い肌。正確には緑らしいが、信号機の青の色の様な瞳。
うっとりするほど美しい。
全身に白い服。ギリシャ神話の女性の様な服を纏っている。
「この岩は貴方が切ったの?」
喋った!見た目通りの可愛らしい声だ。
「ああ、魔法でね」
「魔法?魔法でこんな事が出来るの?」
会話が成立した!でもよく見るとエルフとは何か違う気がする。
「普通の魔術師ならば不可能なことも、先生の手に掛かればこの通りだ!」
ロンが自分の手柄の様にドヤ顔だ!さてはロンの奴もこの美人エルフと話したかったんだな!
「此方に在すエイジ・ナガサキ先生はお1人でドラゴンも倒せる、唯一絶対の魔道士だ!」
自分で言うのは烏滸がましいから良いけど、ロンのドヤ顔は後で説教だな。
「唯一無二の魔道士?」
エルフはそう言って俺をじっと見つめる。なので俺も、此処ぞとばかりに見つめ返す。
「耳が普通!」
気が付いた事を口に出してしまったが、エルフの特徴である耳が普通の人間と変わらない!
「此処に居たのか、エリス!」
トニーが駆け寄って来た。
「お父さん!」
このエリスと呼ばれたエルフっぽい娘がトニーの娘なのか?
「この魔道士の方がこれからお世話になる方?」
「そうだ!」
するとエリスはくるりと俺に向き直ると、改めて俺を見つめる。そんなに見られると、照れる!
「エルフ担当のエリスです!」
エルフのエリス?ややこしい!
それに担当って何だよ!
「前のエルフ担当の母が亡くなったので、後を継いでエルフ担当になりました」
担当って、バンドじゃあるまいし!
「魔法だって使えますよ!ほら!」
エリスが手を翳すとそこにつむじ風が起こった!
「属性は風か?」
「はい!貴方は?」
「先生は全ての属性に通じていらっしゃる!」
俺がニッコリ微笑むエリスに答え様としたことを、またロンに言われた。
「貴方ってスゴいわ!」
「確かに、こりゃ凄い!」
親子揃って俺をスゴいと言うが、エリスは俺が全属性の魔法を使える事を。父親のトニーは石の切断面を見ての言葉だ。
「ワシが30若ければ、ドワーフにならずに弟子入りしておった!」
「魔法を使えるの?」
「属性は土じゃ!」
土じゃ無理だ!トニーが感心したウォータージェットは水!
「そうじゃ、このエリスを弟子にしてもらえんかの?ほれ、お前も頼んでみろ」
エリスは美しいけど、弟子に手を出すって気が引けるんだよな。それに弟子入り随時募集って訳じゃ無いぞ!
「お父さん、私はこの方の弟子にはなりません!」
堂々と言い切った。少し残念な気持ちも有るけど、安堵する方が大きい。
「私はこのエイジ様の嫁になります!」
とんでもない事を突然言うな!
確かにエリスは綺麗だけど、俺の意思は?




