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空の球 おジャ魔ですから 片付けます

「魔法は見せる為には使いません!」

 王宮魔術師であるリックが魔法を見せろと言う村人を制する。

「でもエイジもあの陰魔法の黒い玉は片付けた方が良いですね。害が無いとしても。何とかして打ち消さないと。」

「あれか!」

確か椎名さんの魔導書に消し方も書いてあった筈だ。

 俺は徐にスマホを取り出し、その頁を探す。

 ふと周りを見渡すと御一同様、目を見開いている事に気付く。

 目を引くのはやっぱりソフィ!ソフィ、驚いた顔もかわいい!ステラの驚いた顔も美しい。さすがはソフィのお母さん。

「エイジ、それは何ですか?」

 代表してリックが尋ねる。そうか!スマホは見たこと無いよな!

「これはスマートフォンと言って、魔道具の一種だ。魔導書もこの中に収めた」

「そんな魔道具を使い熟すなんてさすがだわ!」

 ソフィがうっとりしてくれるが、スマホいじって褒められるなんて初めてで照れる。

 やっと見つかった。


(自分の魔法を取り消したい場合ですが、簡単です。消えるようにイメージして念じれば消えます。複数の属性に適合して、同時に使っている場合ですが、一つずつ消すもよし、同時に消すもよし。ただし、絶対に守らなければならない事があります。)  


 守らなければならない事?一体何だ?


(まず、勿体ぶる事、そして格好つける事です)


 読んでいてコケそうになる!


(精霊か何かと契約したらしい魔術師は魔法そのものを消せません。彼らは魔法を消すのではなくて、打ち消します。火の魔法に対して水の魔法、若しくは魔力その物を放出して打ち消すといった具合です。だから、簡単に消したら有り難みが無くなってしまいますから、消すにしても勿体ぶりましょう)


 なるほど!簡単に出来る事でも仰々しくやれと。


(そして、いざ消す際には格好つける必要があります。他人は出来ない事をする訳ですから、見せ場以外の何物でもありません。僕はテキトーな呪文を詠唱して、最後は指を鳴らして、つまり指パッチンでキメました)


 指パッチンで魔法って、どこかの魔女見習いのアニメですか!


(ちなみに、魔法は消えても魔法がもたらした効果は消えないから注意して下さい。例えば、火の魔法を消してその炎を消しても、炎が燃やした物は元通りにはなりません。映画か何かで元通りになるのもありましたが、少なくともこの世界ではなりませんから注意して下さい)

 なるほど、そもそも論だが魔法は取り扱い注意って事か。


「リック、君ならあの陰の球体をどう消す?」

「陰の属性なら光の属性の魔法で打ち消しますかけど…」

「それ、出来ると思うか?」

「出来ません。実はさっき1人でやったのですが、歯が立ちませんでした。そもそもあんな陰の球体を見たことありません」 

「製造者責任だ。俺がやる!ちょうど食べ終わったし、現場に行ってみよう」


 俺達は昨夜監禁された小屋まで来た。

 村人達が集まって気持ち悪がっている。


「何だい、あれは?」

「悪の魔王が来たにちげいねぇ」

「もう終わりだ!」


「みんな、落ち着いて」

 ステラが呼びかけるも騒ぎは収まらない。

「エイジ、お願い」

 ソフィは俺の正面に立ち懇願した。これはやらなきゃダメでしょう!

「ソフィ、見ててくれ!ショータイムだ!」


 俺は前に出ると、詠唱を始める。と言っても呪文なんか知らないので、椎名さんの言う通りテキトーにやる。

 あるヒット曲の歌詞を聞き取れないように呟く。そしてサビの所で指パッチン。


 パシュ


 鳴らなかった!まさかの不発。

 俺は周囲を見渡すが、ソフィの顔は見られない。リックなんてイケメンとは思えないくらいに口をあんぐり開けている。

 あんた、そこで外しますかって言いたいんだろうな。

 俺はやっぱり、何処まで行っても負け犬なのか?自問自答しても答えなんかない。


「初めて見ました。こんな事…エイジ、貴方は属性は何なんですか?」

「え?」

「陰の中に光の玉だなんて、あり得ません!」

「あっ、あれ、眩しいから消すね」

 今度は鳴った指パッチンをすると光の玉がスッと消えた。


 リックは頻りに、「あり得ない」を連発しているが肝心な事を忘れていた。


 光の玉を消す時に、格好つける為の詠唱を忘れていた!

  

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