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呪いなど 聖女の前では 無力です

 こっちの世界に来て以来、何人かを殺した。

 それについては悪い事をしたとは思わない。殺した者は何れも、殺されても文句の言えない奴等だと思っている。

 だが今思う。


 死にたくない!


 図々しいのは百も承知だが、死にたくない!

 口元に右手を当てて、酸素マスクをイメージして風を送る。これで幾らか楽になり、まだ苦しいながらも呼吸が辛うじて出来るようになった。

 しかし、一体何が起こった?

 健康的な生活とは言えないが持病は無いのに、こんなこと突然に。


「エイジ殿!」

 ここに居ないベンの声が聞こえてきた。今日は来ないはずなのに何故?幻聴か?

「エイジ殿、如何されましたか?」

 どうやら本物だ。安心したが事情を話そうにも言葉が出せない。

「報告します」

 一部始終を見ていたベンの部下が報告してくれたが、聞き終えたベンが怪訝な表情を浮かべる。

「エイジ殿、これはきっと呪いですね。この大蛇の」

 大蛇の呪い?

「呪いは光属性を使える熟練した魔術師でなければ解けません。しかし生憎、現在この街にはいません」

 ベンは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。

 俺は呪いという物がよくよく分からない。だから呪いを解く魔法なんて練習はおろか、存在すら知らなかった

 

 そうだ!今朝ミラにしてもらったリフレッシュ効果の有る魔法を真似してやってみるか。

 右手の酸素マスクを一時的にミラのリフレッシュ魔法に変えて試してみる。

「ふぅ」

 少しだけ楽になったが、気休め程度だ。状況が状況だけに、俺の魔法にミラ程の効果が有ったのかも疑問だが。

 すぐに苦しくなるので右手は再び酸素マスクにするが、ある考えが浮かんだ。

 ミラなら呪いを解けるのではないだろうか?

 光属性魔法については俺を凌駕しているし、リックが居ないのならこの街で呪いを解ける可能性低い有る人間はミラしか居ない。


「先生、お呼びで?」

 左手でロンを手招き、呼び寄せた。

 リフレッシュ魔法を使う前では声が出なかったが、今は辿々しいがなんとか使える気がする。

「ミラを連れて来てくれ!」


「エイジ殿、もう1度言って下さい」

 確かにベンの言った通り、喋れたが聞き取り辛かった様だ。それに代償として呼吸が更に荒くなった。

「早くミラを連れて来てくれ」

「畏まりました!」

 今度は通じた。その前はそんなに聞き取り辛かったのか?話せると思ったのは俺だけで、声になってなかったのかな?

「お前達も一緒にご婦人を迎えに行け!私の乗って来た馬車を使え!」

「はっ!」


「ベン、今日は来ないはずじゃ?」

 俺は何とか出せる声でベンに尋ねた。副市長ともなれば忙しい筈なのに。

「昔の資料を見ていましたら、180年前の出来事をエイジ殿にお伝えしようと思い」

「出来事?」

「はい。偉大なる伝説の大魔道士シーナと半人半蛇の魔物、ラミアの戦いがここでありました」

 椎名さんが戦った相手だったのか!

 でも、椎名さんも仕留め切れなかったのか?

「まだ話す事はお辛いでしようから、私が勝手に進めます。偉大なる伝説の大魔道士シーナは180年前、ここに住み着いて人々を困らせていた魔物ラミアを倒しました。彼はラミアの亡骸をその場に埋め、手厚く弔ったそうです」

 椎名さんの戦い振りは魔導書にも多少は書いてあったが、第三者が記録した物は初めてだ。何だか新鮮だな。

「今回エイジ殿が戦った大蛇は、そのラミアが蘇ったのか、別の個体なのか分かりませんが無関係ではなさそうですね」


 程なく馬車が到着して、ドアが開くと同時にミラが飛び出して来た。

「エイジ!」

 かなり慌てている。後ろにはクレアも付き添いで来た様だ。

「毒蛇に噛まれたって?」

「違う!」

 呪いである事をベンが説明すると、ミラは大きく頷く。

「エイジ、すぐに楽にしてあげる」

 こんな状況だからか、ミラの優しげな声が染み入る様に癒される。

 ミラは俺の手を両手で握ると目を閉じ、精神を集中させている。

 ミラの金色のしなやかな髪がスゥッと浮き上がると同時にミラの身体が光を放つ。

「どう?」

 呪われていたのが嘘の様だ!体も軽いし、苦しさも全く無い!

 完全復活だ!

「ミラ、ありがとう!」

「どういたしまして。クレアお姉ちゃんが知らせを聞いて半狂乱だったから連れて来たの」

 それでクレアも来たのか。

「違うでしょう!ミラちゃんが慌てていたので、落ち着く様に同行しました」

 クレアがさらっと否定する。即座に否定しなくても良いでしように!


 そんな事はさて置き、ミラの癒しや浄化の力は凄い!

 聖女アリアである事は間違いないと思うが、本人にどう伝えた物か。

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