俺死ぬの? 横隔膜が 動かない
リノベーションの方はリーチさんに任せて、俺は前日に竜巻で水を吸い上げた湿地に行く。
すると先に来ていたベンの部下が駆け寄って来て、現状を報告する。副市長になったベンは忙しくて今日は来られない事は聞いたが、そんな事よりも耳を疑う事が。
「水が戻っている?」
「はい。昨日、吸い上げる前と全く同じ状態です」
見える場所まで移動すると、確かに昨日と同じ状態だ!
湧き水なのか?それにしては水量が多いと思うのだが、どうなんだろう?
「ならば、また吸い上げる!」
今度は水だけでなく、泥も吸い上げられる泥は吸い上げる。
様子見なんかしてはいられない。早く水の出所を突き止めなくては、何時まで経っても変わらないし、場合によっては井戸水にも影響が出かねない。
「先生、準備が整いました!」
ロンには、周囲に泥が飛び散らないかを監視させる事にした。気を付ける事は間違いないが万一、周囲の人や家に飛び散った際の謝罪要員という重責を任せた!
準備も出来たし、昨日よりも盛大な竜巻を起こし、水を一気に吸い上げる!
やがて泥も吸い上げ終わり、竜巻ではもう吸い上げられない粘土質の土肌が露見した。
ここからは土木工事となる。水の出所を探る為には掘らなければならないが、掘削を兼ねてゴーレムを作る事にした。
粘土質でゴーレムが作れるのか不安だったが、意外と上手く行く物だ。どんどん掘れて行くし、歩かせれば除去出来る。
その内に、ある箇所から水が湧き出ている事を突き止めた。
だがその水勢は脆弱で、一晩で湿地を一杯にするには程遠い。
「フガァ!」
何処からか不気味な唸り声がする。
同時に水勢が一気に激しくなった。もしかしなくても、この唸り声の主が水の出所?
こんな地中に居て、この唸り声を上げるなんて魔物だよな?
「総員、退避!水場から離れろ!」
これから使う魔法は練習はしたが、実戦での使用は初めてだ。
消防設備士試験の為の勉強で得た知識だ。電気火災には感電の恐れが有るので、流石に普通には放水出来ない事からヒントを得た魔法だ。
使用するに当たって此方も感電の危険性が有るので気を引き締めなくては!
「レビン!」
昔の車の名前だが、本来は稲妻という意味らしい。
兎に角、吹き上がる水に向かって稲妻を落とす!
水勢がどれだけ激しくとも、電気は容赦なく光と同じ速さで達する。雷って何属性なのか分からないが、属性があまり関係ない俺だから出来た魔法だと言う事にしておこう!
一瞬の光の後、水はパタリと止まり、嘘の様な静寂が訪れた。
電気工事士の資格は持っているが、試験の為に覚えた知識なので正直、あまり詳しくはない。
死んでたらいいな。
振り返るとロンを含めた全員が、ポカーンと口を開けている。まさか通電して呆けた訳じゃないよな?
「せ、先生、今のは何でしょうか?」
「今のは雷だ!」
ベンの部下達が一斉にざわつく。
「雷?」
「本当か?」
「信じられない!」
やっぱり一般的ではなかったか。
「魔法で雷なんて聞いた事がありませんよ!」
「俺だから出来た!未熟な者が真似すると却って自分の身が危ない。絶対に真似するな!」
もっとも、ロンには出来ないだろうけど。
後はピンポイントで掘り下げ、感電して動けないと思う魔物を回収するだけだ。
2メートル位掘ると何かが出てきた。
ん?蛇?
平均的な成人男性くらいの胴回りの巨大な蛇の尻尾の様な物が見えてきた。2メートル位見えているが、頭はまだ埋まっていて見えない。
何体かのゴーレムに綱引きの要領で引っ張らせるが胴体が太い分、体長もかなりありそうだ。
なので参加させるゴーレムを増やさざるを得ない。
普通車2台分位だから、10メートル位まで引き上げるが、まだ頭は見えない!何という大蛇だ!
更にゴーレムを加勢させるが頭は何かに引っ掛かっていたのか、大蛇の体が引き千切れてしまった!
まあでも!これだけ引っ張ってもピクリとも動かないから間違いなく死んでいるだろうし、水ももう出て来てないから一件落着で良いだろう!
さて、この土地の開発計画を作成すれば、建設だけでなくて不動産事業にも進出の足掛かりになるかも知れない。
「ヨシ、引きあっ!えぉっ!」
何が起こった?
引き上げようとした俺は、急に体の自由が利かなくなった!
「先生!」
「魔道士様!」
「ああっあ…」
何だ!呼吸が出来ない?声も出せないし、何より体が動かせない。
突然、一体何なんだ!
く、苦しい。
このまま死ぬのか?




