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ロン語る 昔話は ミラなのか

 昔々、まだ王国が建国されて本当に間もない頃、突如として各地に魔物が現れました。

 建国されたばかりの国では騎士の数も足らず、また魔物は強く、やがて騎士団は壊滅状態となりました。

 このまま魔物によって国が滅びると思われた時、風にしなやかな金色の髪をなびかせ、エメラルドの様な瞳を輝かせた希望の聖女、アリアが現れました。

 アリアの放つ聖なる光は人々を癒し、汚れを浄化し、魔物を消滅させる効果がありました。

 国中を浄化したアリアは最後まで魔物が残っている土地が、最初に最初に魔物が出現した土地でもある事に気が付きました。

 アリアはその地に赴き、誰も居なくなった町で魔物を退治していると、急に空は暗くなり、風が吹き荒れました。

 暫くするとアリアの前に、魔物を作り出し操る魔の者が現れたのです。

 アリアは良く戦い、もう少しで勝てると言う所で魔の者は鏡を出してきました。

 アリアが鏡を見てみると、鏡の中に町の人々が捕らわれているではありませんか。

 アリアは町の人々を解放する様に求めましたが、魔の者は代わりにアリアに鏡に入る様に言います。

 考えた末にアリアは魔の者の求めに応じる覚悟をしました。

 町の人々が出た鏡に吸い込まれる瞬間に、アリアは全ての力を込めた光を放ちます。

 その光はとても眩しく、町の人々は最後の瞬間を見られませんでした。

 それでも、僅かに見た人の話を合わせると、魔の者はアリアの放った光を浴びて消えた。

 そして、同時にアリアも鏡に吸い込まれた。

 その話を裏付ける様に、2人が居た所に2人の姿は無く、1枚の大きな鏡があるだけでした。

 人々が覗き込んでもアリアが映る事はなく、皆はとても悲しみました。

 その鏡は『聖女の鏡』として王様の元へ届けられ国の宝とされ、国中の人々がアリアへの感謝を忘れませんでした。


 俺は別室にロンだけを連れ出して昔話を語らせた。ミラに聞かせるべき話なのかを吟味する為に。

「ロン、その話はこの国では誰でも知っている話なのか?」

「いえ、殆ど誰も知らないと思います。私は国中を旅して、各地の伝説を調べていて分かりました」

「各地の伝説を調べた?」

「はい!好きなんです。そういう話」

 意外な趣味を持つ奴だな。そっちの道に進んだ方が良かったのではないだろうか。

「何故ミラをアリアの様だと思ったんだ?」

「特徴です。アリアはしなやかな金色の髪に鮮やかなエメラルドグリーンの瞳とあります。黒や茶や青はありますが、ミラさんの様な鮮やかなエメラルドグリーンなんて瞳は他ではありませんよ!」 

 確かにな。

 それに、ミラが断片的に思い出したワンシーン。「嵐の中、町の広場に1人で居る」にも当て嵌まる。


「なぁ、ロン。何故その話は今じゃ誰も知らない?」

 王宮魔術師であるリックはかなり高度な教育を受けていると思われるが、そのリックでも知らなかった事が解せない。

 本来ならば、救国の聖女として学校で必ず習うとか、王都に聖女の像が建っていてもおかしくないぞ。皇居に楠木正成の像が建っている様に!

「すみません。それは分かりません」

 ロンが申し訳なさそうに言ったが、それはロンのせいでは無い事は理解している。

「それで、その話の舞台となったアリアが鏡に吸い込まれた町は知っているか?」

「すみません。この話については内容しか分かりません。でも、この話が伝わっていた土地なら知っています」

「何処だ?」

「西の最果て、ベルガー辺境伯領です」

「辺境伯?」

「はい。辺境伯の先祖は聖女アリアと共に戦った騎士らしいです」

「そうか!」

 アリアの功績が消され、国宝の筈の鏡が盗賊の手に渡っていたとか、まだ謎は有るが何かヒントが見えた気がした。リックが戻ったら辺境伯領に行ってみるか。


「先生、どうされたのですか?まるでミラさんがアリアで在るかの様にされて」

「いや、気になるだろう。自分の女に似てるヒロインなんて」

 ロンは知らない。知らない方が良い事も有る。

「それよりもロン、今の俺とのやり取りは他言無用だ。誰かに漏らしたら破門だ!」

「破門ですか?」

「分かったか?」

「はい、先生!」

 返事は良いんだよな。それが余計に不安だが。


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