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アラサーに 見える美女が お義母さん

「家で朝食を食べて。リックの分も用意するわ」

「何だか申し訳ないな。お気遣いなく」

 ソフィとリック、この美男美女が話していると未だに落ち着かないが、ソフィは俺に好印象の様だ。このチャンスを逃したくはない。

 

「ソフィの家って、村長の家?」

「ええ、エイジの事は話してあるわ」

「俺の事?何て?」

 自分が何て言われたのか、気になって仕方ない。


「カールに襲われそうになったけど、何処からか現れた素敵な人が助けてくれたって」

 素敵な人か。素敵なんて言われたのは初めてだと思う。今までは、いい人って言われた。


 好意を持った女性に、いい人って言われると、キツいものがある。

「長崎さんって、いい人ですね!」

 それは異性としては見ていないっていう事だ。

 どうでもいい人、使い勝手がいい人、居ても居なくてもいい人。

 だが今回はいい人に終止符を打つ千載一遇のチャンス! 


「着いたわ。ここよ」

 ソフィの案内で連れて来られたのは、少し大きめな家だった。

「さあどうぞ」

 ソフィはドアを開いて俺達に中に入るように促した。


「ようこそいらっしゃいました。ソフィの母のステラです」

 18歳のソフィの母とは思えないほど若く見える。見た目は30歳前後に見える、ソフィとは違うタイプの美女で、スレンダーなクールビューティという感じだ。


「お母さん、こちらが私をカールの魔の手から助けてくれたエイジ。エイジと倉庫で一緒だったリックよ」

「エイジ・ナガサキです」

「リック・レイスです」

 俺達はソフィの母、ステラと握手を交わす。

「エイジさん、ソフィを助けて頂きありがとうございました」

 ステラは丁寧に謝礼した。

「狭い所ですが、どうぞ中にお入り下さい」


 俺達は奥の間に通される。そこにはテーブル狭しと料理が並んでいる。

「田舎料理でお口に合えばよろしいのですが」


 俺の毎日の朝食は大体はふりかけご飯を掻き込んで終了だ。目の前の朝食とは偉い違い。

 一品一品は豪華ではないが、歓迎されている事は理解出来た。

「エイジさん、変わったお名前ですね」

「エイジは外国から来たそうなの」

 俺に代わってソフィが答えた。

「外国?」

 ステラが意外そうな表情を浮かべると今度はリックが割って入る。

「聞いて驚かないで下さい。エイジはあの、偉大なる伝説の大魔道士シーナと同郷で、200年もの間、誰も読めなかった魔導書が読めるのです!」

「まぁ、あの偉大なる伝説の大魔道士シーナの魔導書を!」


 偉大なる伝説の大魔道士って、椎名さんの事を口にする際に枕詞みたいに付けないといけないのか?


「エイジさんはお歳は?」

「40歳です」

 こうなったら、40歳で通すしかない。こんな事ならサバ読むんじゃなかった。

「それじゃ、ソフィは18歳だからちょうど良いわね」

「ちょっとお母さん!」

 ソフィが顔を赤らめステラを制止する。その仕草もかわいい!


「所で村長、僕等はこれで晴れて釈放って事でいいですか?」

「ええ、ごめんなさい。盗賊と交渉が決裂して以来、村人は疑心暗鬼になっているの。村の外から誰か来たら盗賊の一味が下見に来たって思い込んでいるの」

 思い込んでいる奴に何言っても無駄だろうし、下手に反論でもしたら収拾付かなかっただろう。

 そんな事を考えながら豆かなんかのスープを味わっている時だった。


「村長、盗賊の一味が逃げた!」

 村人が大声を張り上げ、飛び込んで来た。

「え?」

 飛び込んで来た村人の目が点になった。そりゃ逃亡した盗賊が村長の家で客人としてスープを飲んでるのだから。

「村長、こいつら…」

「彼らの容疑は晴れました。閉じ込めたお詫びも込めて朝食に招待しましたよ」

 ステラは、さも当然と言った感じで答える。

「でも村長、こいつらを入れていた小屋の屋根が飛ばされているし…」

「それは仕方ありません。何と言ってもこちらのエイジはかの偉大なる伝説の大魔道士シーナを継ぐ者なのですから!」


 ステラが顔を斜め上に上げて言い放つ。

「え?」

 驚いたのは俺だ。話が大きくなっている!

「偉大なる伝説の大魔道士シーナを継ぐ、現代の大魔道士エイジの伝説はこのソマキの村から始まる!」


 ステラが悦に入っている。

「そして私は伝説の始まりを見届ける村長にして、彼の妻の母よ!」


「もう、お母さんたら」


 ソフィ、赤くなって俯いていないで、彼女を止めてくれ!

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