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とりあえず 邪魔する奴は 潰すのみ

「副市長が画策したと?」

 言葉を失っている俺に代わり、リーチさんがベンに尋ねる。リーチさんにとっても青天の霹靂であったであろうに。

「はい。今日で工事が完了する事を報告に行こうとしましたら、副市長が待ち構えてまして「こちらの工事は今日で終わりますが、そちらの壁補強の進捗状況はどうですか?」などと言うので調べましたら」

 苦しそうなベンを見ていると、責める訳にもいかない。ベンが悪い訳ではないのだから。

 恐らくは、悪人特有のニタニタとした含み笑いで言われた事だろう。

「またですか」

「えっ?」

 静かにそれだけをリーチさんが呟いた。

「リーチさん、またって?」

「実は…私がエリックに会社を乗っ取られた時も、各書類が改ざんされていました。それで!」

 込み上げる物があったであろう、リーチさんは苦悶の表情でそこから声を出せなくなった。

「リーチさん!」

 始めて見るリーチさんの苦しそうな姿は、数分前まで仕事の達成感に満ち溢れていた姿からは想像出来ない。

「副市長は私が憎いのです」

「えっ?」

 リーチさんは意外な事を言い出した。

「エリックに会社を乗っ取られる前の事です。談合と見返りを求めて来ました」

「キックバックですか…」

 キックバック、凄く簡単に言うと賄賂。

 本来よりも多い金額で請け負わせて、その分の見返りを貰うというやり方だ。

「断る私を苦々しく思っていた様ですが、私の気が付かない内にエリックと話をまとめていました」

「そんな不義理が…」

 情けない話だが、リーチさんに掛ける言葉が見つからない。

「リーチ殿、今度は私がそれを許させません!」

 助役であるベンの力強い言葉が頼りだが、疑問が残る。

「ベン、副市長はそんなゲスなのに、何故そんな要職に就いている?」

「副市長は、前市長の息子だからです。市長も前市長への義理立てで副市長に就任させています」

 考える間など無く、ベンが即答する。彼自身も不満は有ったのだろう。

「なぁベン、俺はこの町に来る前に寄った村では、村長の家の者が代々村長を受け継いでいた。この町では違うんだな」

 ソマキの村ではステラが村長だった。その後はソフィか夫のアランになるのだろう。

 しかし、このアベニールはそういう訳ではなさそうだが。

「エイジ殿は外国のご出身なので分からないかもしれませんが、小さい村では確かにそうです。しかし、ある程度の規模の大きい町になりますと、前任者の推薦と領主様の承認が必要になります」

「それじゃ、自分の息子を次の市長にする事は?」

「可能です。実際にそうしている町も在ります」


 なるほど、副市長の資質に疑問を持った前市長は息子を次の市長にしなかったって事か。

 副市長の件、理解は出来たがそうなると市長にも任命責任が生じる。息子の件まで考えれば、この責任問題は深刻だと言わざるを得ない。


 とりあえず順番に対処しよう!取り急ぎは市長の息子だ!

「ベン、市長の息子はいつ来る?」

「もう来ます。東から来ます!予告がありました。」

「予告?」

「はい、旅人が伝言を頼まれたそうです」

 意外と律儀だな。

「分かった!」

 東側ならちょうど今居る方だ。

「エイジ殿、迎え撃たれますか?」

 それは愚問だぞ、ベン。

「ベン、オウルドラゴンを倒した時の事を覚えているか?」

「もちろん!」

「俺はあの時から更に精進した!それに今はムシャクシャしている!」

「了解しました!」


 遠くに土煙が立つ。あれはドラゴンの群れか?数は20匹くらいだろうか、赤や黒や緑の色取り取りな小さいドラゴンは2足歩行で、恐竜の様だ。その動きは中々に早い。

 先頭の赤いドラゴンに人が乗っている。市長の息子か?

「こんなの防御の内にはいらねぇ!軽く超えてやる!」

 ご丁寧に土塁の上に立つ俺を見つけて、駆け寄って来た。黒いマントで体を覆って強く見せようとしているのだろうが、残念ながらやけに甲高い声がそれを打ち消している。

「そんなドラゴンに超えられやしない!試してもいいが、まだ引き渡し前だ。その堀に入れば俺がドラゴンを全て殺す!」

「お前がドラゴンを倒せる魔道士か?」


「いかにも!」

「面白い!勝負だ!」

 いや、戦いの前には名乗り上げて欲しかった。さもないと、何時までも市長の息子って呼ばなければならない。


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