明日から 工事始める 前夜祭
つまり市長の話をまとめると、
ドラゴンテイマーの市長の息子が俺との対戦を求める。
市長は断り、政策で息子に立ちはだかる。
対策として壁の補強を指示するが地元業者では壁の補強に半年掛かる。しかし俺の堀と土塁なら6日で完成出来る。
しかし6日後に息子がドラゴンを引き連れて来る事が分かり、俺に5日で全部工事する様に頼みに来た。
って感じだ。
「でも市長、伺いたい事が2点有ります。1つは、私が全部やったら副市長や既存の業者と軋轢を生み、市長の望む形にはならないと思います」
「確かに、そうなりましょう。貴方には業界の馴れ合い体質という岩に打ち込む楔となって頂きたいのです!」
「楔ですか?」
「ええ、業界の結束は固く体質を変える事は容易ではないでしょう。しかし、税金を使う以上は公正で開かれていなければならないと思います」
「それでベンも?」
「はい。助役ならばと思いまして」
冷静に考えれば、市長の息子対策に税金を使っているんだけどな。
「もう1つは、息子さんに説得は出来ませんか?」
市長は再び渋い顔をする。
「倅は私を憎んでいます。私が仕事に打ち込んで家庭を顧みなかったと」
よくあるパターンだ。俺は未婚なので分からないが、それで家庭の為に仕事を疎かにしたら本末転倒だろう。一家の長は家族を養う為に働いているのだから。
「息子は、半年後に来るなんて言っていたのに、今日になって使いの者を寄こして6日後だなんて。全ては私の力不足、不徳の致す所です」
市長は淡々と語った。たまに俺やベンに視線で配りながら。
「市長、続きは竣工式にしましょう!」
放っておけば、責任を取るとかとんでもない事を言いかねない雰囲気だ。何とか流れを断ち切りたかった。
「はい。そうしましょう!」
市長はスッキリした様な表情で答える。
「せっかくですから、何か召し上がっていって下さい!」
「よろしいのですか?」
「大した物は出来ませんが」
俺自身も腹が減った。残った材料で何か作って親睦会だ!
クロエ達を呼び、支度に掛ける。俺とクロエで調理、ミラは俺の店から使えそうな食材を調達、クレアは配膳やその他の準備をしてもらって何とか親睦会のスタートだ。
材料が限られているので気の利いた物は出来ないが、皆さん珍しい料理を楽しんでくれたり様でなにより!
今回はジャガイモが活躍した。油で揚げても良いし、蒸してバターを添えればじゃがバターになる。マッシュポテトにしても良い。
酒にも合う!これが大事だ!
ポテトはハンバーグの添え物にしても良い!後でクロエに教えてやるか。
散会して市長、ベンそしてリーチさんを送り出した後は後片付けだ。
「エイジさん、工事期間中はエイジさんのお店は休みよね?」
「現実問題として無理だろうな。工事にかなりの魔力を使うから、睡眠は不可欠だ」
実際に計算すると、3メートル級の大サイズのゴーレムは、 高さが3メートル、横幅が1メートル、厚みが50センチだ。
工事が倍になった条件として、設計の見直しを要求した。
堀の深さを5メートルから3メートルに変更した。3メートルでも充分な筈だし、随分と楽になる。
単純な計算だが、ゴーレム20体で堀が1メートル出来る。千倍にすると、1キロで2万体が必要か。
町の円周が13キロなので、26万体!
さすがにそんなに作ってられない!
当然、全部ゴーレムは無理なので昼にゴーレムを作って、夜はゴーレムに土木工事をさせるしかない!
魔力その物は無尽蔵だが、集中力が無くなると魔法が使えないので、休息はやはり必要だ。夜は休もう。
そう思ったら、途端に睡魔が襲って来た。猛烈に来た!
今日は珍しく気を張っていたし、ゴーレムも多数作ったし、酒も飲み過ぎたかもしれない。
もうろうとして、後の事は覚えていない。
カーテンから漏れた朝日で目が覚めた。
まだ眠いから爽やかな朝ではないが、今日から本格的に工事を始める。
本音言うと、市長の息子のドラゴンテイマーと戦って、ストレス解消したい!




