異世界の 日給かつての 1年分
ゴーレムの息の揃った?ダンスの前に、皆一様に目を大きく見開き驚愕している。
ゴーレムは1体しか作れない?
いっぱい作りましたけど。
ゴーレムは器用に動かせない?
踊っていますが、何か?
「私は証人としてこの目で見届けた。ドラゴンを討伐した時にはもっと大きいゴーレムを何体も同時に操っていた!」
ここでベンが透かさず補足情報を入れる。
「皆さんには有り得ない事でも、私には普通の事です。特別な事はございません」
サラッと言って次にいく。
「この様に自在に動かせるゴーレムでほぼ全ての工事を行います。ですから、工期も大幅に短縮」
ここで一旦止めて、さっきから俺を睨むあの男に睨み返す。リーチさんから会社を奪ったあの男に。名前を覚える事もウザいから聞かなかったこの男の顔を歪ませてやる!
「この工事、急ぎだと聞いております。それを最大限に努力して半年?」
ここでリーチさんに視線を向けると、リーチさんはそっと頷く。やれのサインだ。
「こんな梯子を掛ければ簡単に上れる壁に半年?遅い!遅すぎる!」
派手に怒ってみせる!
「半年なんて冗談じゃない!急ぎですよ!私達ならば、6日で完成させてご覧に入れます!」
その瞬間、会場は響きに包まれた。
「6日だって!」
「確かに、この人なら出来るのかも」
「どうするんだよ!」
会場から色々と聞こえて来る。
あの男はただ、苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。
「詳しく聞かせて頂きたい。何故、壁ではなくその方法なのですか?」
居たことを忘れる程に、ここまで沈黙を守ってきた市長が初めて発言した。
「まずは、先ほど述べた通り壁は梯子を掛ければ簡単に上れる事です。更に言えば、市長は壁にどれだけの耐久力が有るとお思いですか?」
「耐久力?」
「ええ、失礼ながらあの壁では、崩す事は難しくはないと思います。硬くて大きい物が勢いを付けて何回か当たれば」
地震がなければ必要ないかもしれないが、鉄筋が入ってない壁なんて簡単に崩れる。
「それで壁ではなく堀に?」
「はい、市長。堀があれば勢いを付けて当たる事は不可能。更に、掘った土を土塁とする事で抑止力となります。侵入者は堀を泳いで渡って、角度の有る土塁を登らなければなりませんから」
「本当に6日で出来ますか?」
「出来ます!」
俺が言い切ると市長は腕組みして考え込んでしまった。
「しばしお待ち下さい」
市長のこの一言で一旦休憩となった。
「エイジ、どうなったの?」
「市長が考える時間が欲しいそうだ」
ミラが不思議顔だ。
「何も迷う要素は無いじゃない!」
場違いな大きい声を出すミラだが、今日は場の雰囲気的に合うようにクレアから借りたシックな服を身に纏っている。
それでも会場はオジさんだらけなので、この金髪の美少女はどうしても注目を集めてしまっている。
この休憩時間では、俺やリーチさんに擦り寄って来る輩もいて、正直ウザかった。
計った訳ではないが20分程度経ち、市長と副市長、助役のベンと職員達が入って来た。
「お待たせしました」
市長が落札業者を発表する様だ。
「落札方式を変更し、西半分と東半分に分割します。その上で施工して頂きます」
会場から響めきが起きる。無理もない。ここに来てそんな変更をするとは!
「西半分は副市長に担当して頂きます」
「心得ました」
この副市長、落とし所が定まって安心した様だ。
「東半分は助役に」
「はっ!では早速、東半分の落札業者は…」
あっさりと東半分の工事を落札した俺とリーチさんだが、工事区域が半分に分けられる為、提出済みの見積金額も半額となった。
俺とリーチさんの出した元々の見積金額は金貨800枚だが、半額の400枚となる。
俺とリーチさんで半々だとしても、200枚!
日本円に換算すると、金貨1枚が約10万円だから、6日間で2千万円!日給300万円以上!
1日の稼ぎが、この異世界に来る前の求人広告が嘘だらけのブラックなリフォーム会社の年収並みだ!




