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各事業 特技活かして 再編成

「つまり、クレアに絵を描いて欲しいのね?」

「さっきから、そう言っているんだが」

「全然違うでしょ!」

 卒倒はしたが、すぐに意識を取り戻した2人に最初から説明した。

 理解はされた様だが、誤解を招く言い方だと怒られている。

「ねえ、早く食べよう!」

 こういう時のミラは本当に助かる。まるで救いの女神に見える。


「こんなに美味しいなんて!」

「初めての味です!」

「エイジ、美味しいよ!」

 ハンバーグは三者三様に褒め称えてもらえて、作った甲斐が有ったというものだ。後でクロエにもう1度改めて教えやるか。


「それで、クレアに改めてお願いなんだけど」

「絵の事ですか?」

 完成予想図が有ると無いとでは大違い。言葉だけではイメージなんて怪しいものだ。俺の模型の出来は、自信が持てないし。

「クレアの絵を見たら、これはもう頼むしか無いと思ったんだ。どうかな?」

 クレアは俺をジッと見て、次にクロエに視線を送る。

「クレアは小さい頃から絵が上手かったからね。私は良いと思うわ。明日、エイジさんの手伝いで絵を描いてきたら?」

「姉さん、お店は大丈夫?」

「明日は大丈夫よ!エイジさん、代わりにミラちゃんを借りるわよ!」

「うん!」

 聞かれたのは俺なんだが、代わりにミラが元気に答えた。

「エイジさん、お役に立てる様に頑張ります!よろしくお願いしまふ」

 ここでクレアが、噛みながら微笑んだ!


「クロエ、俺の料理店は今の所は何とか黒字だが、物品の販売の方はもう見切ろうと思っている」

「だから私は言ったでしょ!」

 ドヤ顔のクロエは、強い口調だ。

「だから、ちゃんと賭けに負けた分の金貨は払うよ」

「いいわよ!こっちだって手伝いに託けて新しい料理を教えてもらったし!」

 今度は右手を顔前で、ブンブンと横に振る。クレア視線をやっても同じ仕草をする。流石は姉妹!

「それと、レストラン事業の見直しを考えている。営業時間のバランスも悪くて。他の店が閉まっている時間にやっているから客は入るが、このままでは体の負担が大きいんだ!」

 現在は早朝と深夜に営業している。

 営業時間は1日に7時間程だが、それもクロエに手伝ってもらってだから、健全な営業形態とは言えない。


「クロエ、クレア、レストラン事業をどうにかしようかと思っているんだ。引き取ってもらえないかな?」

「えっ!」

 俺以外のそこに居る全員が絶句している。

「どういう事?」

「俺はこの国に来る前に携わっていた建設業をやろうと思う。従業員でも雇えればレストラン事業も続けたかったが」

 俺にバイト育成のノウハウは無い!

「それで諦めるの?」

「もちろん、レシピも渡す!」

 これでクロエは食らい付く筈だ。

「それはありがたいけど、私はエイジさんの手伝いを好きでしている!エイジさんに続けてもらいたいからよ!」

 食らい付かなかった!

「そうですよ、エイジさん。私もエイジさんの新しいお店のお手伝いは楽しんでしていますよ。この店よりお客様は入っているので」

 クロエとクレアが嬉しい事を言ってくれるが、マンパワー的にレストラン事業をしながらでは、建設業に入れない。

あの堀と土塁のプランで落札出来れば、濡れ手に粟だから建設業にシフトしたいのが本音。


「じゃあさあ、一緒にしちゃえば!」

 突然、ミラが言い出す。

「ミラ?」

「大体エイジは、やりたい事が変わりすぎ!」

 ごもっとも!ミラに説教されるとは。

「だから、みんなでやれる事をやればいいんだよ!」

 和やかな表情でミラが訴え掛ける。

「ミラちゃん、それは私達がエイジさんとレストランも建設業もするって事?」

「うん!」

 クロエの問い掛けに明るく答える。こういう所はまだ子供らしさが残っている。


「ミラの言う事にも一理あると思う。まずメリットだが、この店の客入りも今ほど気にしなくていい!」

 俺の言葉で一同、事実上貸し切り状態の店内を見渡す。

「悪かったわね!」

 クロエがぶっきら棒に言うが、もはやネタの様になっていて、クロエ自身もう含み笑いがいる。。

「店舗が増えれば仕入れも増えて、購入価格が下がるし、営業時間が違うのでこっちの余った食材をエイジさんの店で日替わりメニューで出せば、かなりの節約になります!」

 クレアは乗り気の様だ。事務作業もしているクレアは、この店の苦境に頭を悩ませているからだろう。

「クレアはそれでいいの?」

 クロエが力無く訊く。妹が乗り気であることに少なからずショックが有るようだが、それは姉妹の、そして俺達との関係が僅かでも変わる事への抵抗なのかもしれない。

「姉さん、その方が良いと思うの。私がエイジさんの建設業の事務作業も手伝えば、エイジさんも助かるでしょう!」

 俺もクレアの事務作業には期待している。この店の整理整頓の徹底を見れば、クレアの生真面目さが分かるというものだ。

「分かったわ!でも条件が有るの」

「条件?」

 サッパリした表情を浮かべるクロエに条件を訊く。

「この店はいじらせない!いいわね?」

「創業の地として、大事にしよう!」

 企業理念のしっかりしている会社は、創業の地も大事にしている会社が多い気がする。


 ミラが俺を見て、ニタッと笑って口を開く。

「会社の名前は、エイジでいいんじゃない?」

 ミラよ、それは嫌だ。


 詳しい事は改めて考える事にして、俺の店は明朝の営業はするつもりだ。

 今ではリピーターも出来て、それがコンビニ事業と違って簡単に閉められない理由でもある。

 そのリピーターは全員男で、ミラ目当てなんだが。

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