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報奨金 俺の金貨が 消えていく

 クロエが作ってくれた朝食が並んだテーブルを皆で囲むが、やはりミラには違和感が有る。

 俺、リック、クロエ、クレアが順番でチラチラ見るが、ミラは気にしていない様子。

 案外、大物かもしれない。


 食べ終われば俺とリックは市庁舎に出向くつもりだが、食べている最中から何だか外が騒がしい。


「市庁舎の前に魔物らしい死骸が有るぞ!」

「早く見に行こう!」

 なんて声まで聞こえてくる。

「エイジさん達が昨夜討伐した魔物ですよね?」

「如何にも!」

「そんなに強い魔法を使えるなんて、信じられないわ」

 クロエとクレアはまざまざと俺を見る。女性に改めて見つめられると、なんか照れる。

 

「それではエイジ、行きましょう!」

 身支度が終わり、俺達は市庁舎に向かう。

「私も行く!」

「ミラはここで待っていろ!」

 色々と大人の話も有る。ミラは連れて行けない。

「えーっ!」

 こういう所は子供のままだ。

「それじゃ」

 と言って俺は金貨を1枚を取り出し、テーブルに置く。

「クロエ、クレア、すまないがミラに必要そうな物を見繕ってくれないか?」

「分かりました。ミラちゃんに似合う服を何着か買いますね」

「クレア、頼んだ!」

 今日、300枚貰うから1枚くらい使ってもいいだろう。


 気を改めて、市庁舎に向かう。

 既に群衆がオウルドラゴンの死骸を取り囲んでいる。

「魔術師殿!」

 声を掛けて来たのはベンだ。どうやら俺達を探していた様だ。

「ベン、早速だけど市長の所に行こう。オウルドラゴンの死骸も、このままって訳にもいかないだろう」

「そうですね。ご案内します」

 俺とリックはベンの後を進んだ。

 市庁舎は初めて入るが、気品の有る木造建築で好感が持てる。


「市長はこちらです」

 ベンは俺達にそう言うと、大きなドアをノックする。

「どうぞ」

 低い男の声が入室を許可する。

「失礼します。オウルドラゴンの討伐に成功した魔術師殿をお連れしました」

 部屋の奥に落ち着いた雰囲気の初老の男性が机に向かって座っている。この男性が市長か。

 ベンが手で、前に出る様に促している。こんな場は初めてだ。戸惑っていると、リックがスッと前に出た。堂々としていて凛々しい!


「王宮魔術師、リック・レイスです。こちらは此度の魔物討伐の殊勲者、エイジ・ナガサキ殿です」

「エイジ・ナガサキです」 

 こういう時は何を言って良いのかが分からない!余計な事は言わない様にしよう!


「首尾良く魔物討伐は成功した様ですね。流石は王宮魔術師殿です。市長として御礼申し上げます」

 市長はこちらに歩み寄り、両手で俺とリックに手を握った。

 握手の際に両手で握るというのは、格下が格上の人間にする行為。又は、深く感謝している場合だ。


「市長、報告します。実を申しますと私が大変な迷惑をお掛けしましたが、お2人は寛大にもお許し下さり、その上で討伐を完遂されました!」

 ベンは直立不動で言い放った。


「これで、少なくとも夜間は肉牛の搬入が出来る訳だな?」

「はっ!」

 市長は興奮を隠しきれない様子でベンに確認した。

「はい、夜間なら。それでこそ討伐した甲斐が有ったと言うものです!」

 俺はリックに一瞬だけ視線を送り、敢えて堂々と言い切った。盗賊が居なくなった情報はもしかしたら何かのカードになるかもしれない。だから隠す。

 

「報奨金の金貨300枚だが、一括払いか?それとも分割にするのか?」

 リックが切り出したが、口調が変わっている。これは王宮魔術師として、地方自治体の長に対する口調なのか?

「分割だと金利が発生するが…」

「その事ですが王宮魔術師殿の業務ですので、支払いの義務は無い物と心得ております」

 市長は丁寧な口調だが、したたかな主張をする。

「市長、お言葉を返すようですが討伐はエイジ・ナガサキ殿によるものです!」

 ベンは慌てて横から口を挟む。有り難いが、これでベンの立場が悪くならない事を望む。この市長は意外とやり手っぽいし。

「エイジが倒した!私はエイジの戦いを見ていただけだ!」

「しかし、王宮魔術師殿が討伐に加わっている以上は、王宮魔術師の業務となります。つまり地方の窮状に王宮が魔術師殿を遣わせて頂いたと考えれば、報奨金をご用意する事は適切ではないと」


 つまり金貨300枚どころか、報奨金は無し?

 すまん、日本語で頼む。

 って、日本語は無理か!

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