目が覚めて 全裸の金髪 横にいる!
勝つには勝ったが寧ろ負けた気分だ。
そう思うと、魔術師の修行というのも意義が有ると、ようやく理解出来た気がする。
もっとスマートに、そして圧倒的でなければ恥ずかしくて天才なんて名乗れない!
「ドラゴンを魔法で仕留めるなんて、凄いですよ!流石です!」
リックが興奮気味に駆け寄って来るが、そんな事を言われても今の精神状態だと却って恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
「貴方の魔法前では私の魔法など、子供の火遊びの種火にもなりません」
ベンなりの最高級の褒め言葉なんだろうが、今の俺には褒め殺し以外の何物でもない!
まあ、今回は勝ったから良い事にする。
次が有るのか分からないが、練習はしておかなければ!
オウルドラゴンの死骸は証拠の為にゴーレム達に運ばせる。大型ゴーレム数体がドラゴンを運ぶって、異世界ならではの圧巻の光景だ。
町の門も普段の夜は閉めて、門番が待機している。その門番もただ驚き、慌てふためきながら俺達が通過するまで見送った。
市庁舎の前にオウルドラゴンを置かせると、大型小型問わずゴーレム達に囲ませる。誰も持ち去ったりしないだろうけど。
「夜も更けた。今日はもう休もう!」
「そうですね。今から市長を起こす訳にもいかないでしょうから」
「了解しました。市長には明朝、報告します」
ベンとは明朝の再会を約束して、ここで別れる。
「ベンも疲れただろうから、ゆっくり休んでくれ!」
「ありがとうございます。魔術師殿こそ、休んで下さい」
俺とリックはクロエの店に馬を進ませる。
「今回はリックが守ってくれなければ、俺は死んでいた!ありがとう!」
「当然の事をしたまでです。それよりもエイジの魔法はやはり凄いです!」
「そんなに言わないでくれ!」
小っ恥ずかしい!
「普通ならば、あの者のファイヤーボールの様に効果はありませんよ!」
「そうなの?」
ベンだから魔法が効かないだけで、真っ当な魔術師ならば効くと思っていた!
「それじゃ、ドラゴンってどうやって討伐していたんだ?」
「剣士による人海戦術です!」
リックはキッパリと言い切った。それ以外はあり得ないと言わんばかりだ!
「そ、そうか。それは大変だな」
効率悪そうだし。
「だからドラゴン討伐なんて滅多にありません。ドラゴンを見た事が無い騎士や魔術師も多いですよ」
「リックは?」
「僕も初めてですよ!それも亜種なんて!」
それじゃ、この異世界で早くも貴重な体験をした訳だな。
「その割には堂々としていたぞ!」
「そんな事ありませんよ」
当たり前だが街灯なんて無くリックの表情は伺えないが、きっと照れているに違いない。
「お帰りなさい」
店ではクロエが起きて待っていてくれた。
「クロエ、起きていてくれたんだ!」
「私まで寝たら戸締まりしなければいけないでしょう!あなた達は何処で寝るつもり?」
「そりゃそうだ!」
「クロエのお気遣いに感謝します」
ここで3人で笑う。こういう雰囲気は好きだ。
「そんな事よりもドラゴンは?」
クロエが聞きながら接近して来た。
「討ち取ったり!」
空元気だろうが何だろうが、右手を上げて勢い良く言う!クロエの笑顔でも見れば気分が変わる気がした。
「本当?」
「ええ、エイジの見た事の無い素晴らしい魔法で仕留めました!」
目を丸くして聞いて来たクロエに、リックが更に勢い付く様な事を言う!
「クロエ、詳しくは朝起きてから話す。今日はもう休もう」
目を輝かせて俺を見つめるクロエが抱き付いて来てもおかしくない雰囲気だったので、未然に防止した。闘争心が昂ぶったり、落ち込んだりして不安定な状態で抱き付かれでもしたら、自分を抑えられない!
「お休み」
俺は仮眠を取った部屋に行き、寝る事にした。
クロエによると、ミラはクレアと寝ているそうだ。これでゆっくり寝られる。
やっぱり疲れた。バタンキューだ。
この部屋は朝日が差し込む部屋だった様だ。
まだ体にダルさは残るが、人間の習性で朝日を浴びると起きてしまう。
何かが布団でモゾモゾと動いている。
当たり前の様に布団を剥ぐと、寝ている!金髪の女性が全裸で!
見るなと言うのは無理だ!金色の長い髪、出る所も出てるし!
ため息の出る様な、うっとりする様な、余りに美しいと、例える言葉が見つからない。
白くきめ細やかな肌に、1度目にしたら視線を逸らす事など出来ないボディライン。
この心臓の高鳴りは、どうしてくれようか!
人間ではなく、女神が降臨したのではないかと思わせる程、圧倒的に美しい!
顔を覆っている金色のしなやかな髪をどかすと、いよいよその顔を拝める。
この顔立ち。もしかしなくても、ミラ?




