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油断して 余裕なくなり 必死こく

 地上に落ちたオウルドラゴンは、すぐにうつ伏せのまま大型のゴーレム3体が取り押さえる。

 殊勲の小型ゴーレム達は、その殆どが落下の衝撃で砕けてしまっている。自動修復機能が有るとはいえ、この戦闘中の復帰は難しいだろう。

 でも小型、よくやった!


 オウルドラゴンはその小型ゴーレムがぶら下がっていた左翼から落ちた。その為、落下時の全重量が変な体勢で左翼に掛かれば、流石にドラゴンだって骨が折れる。

 ゴーレムが押さえ付けている右翼はまだ力強いが、左翼は動かせない。

 このオウルドラゴンはもう飛ぶ事は出来ないだろう。


 この体勢でオウルドラゴンをじっくりと見てみた。

 フクロウと呼ばれた様に体が寸胴で首がほぼ無い事は最初に見て分かった。

 改めて見ると翼は予想以上に大きいが、手足は異常に短い。足なんて、膝が有るのか分からない。

 表皮は鱗で覆われているが、翼はフクロウの様に羽で覆われている。これが名前の由来か?


「リック、魔法が効いたみたいだけど」

「ええ、見ました!」

「どういう事だ?」

「分かりません。ドラゴンには魔法が効かない事は常識なので、考えた事もありませんでした」

「考える前に確認してみよう。おい、ベン!」

 ここで、襲われる覚悟で走り回り注意を引き、見事に汚名返上したベンを呼んだ。

「遂にやりましたね!」

 駆け付けたベンが興奮を隠さずに言った。

「ベンのファイヤーボールで右の翼を燃やせ!」

「えっ!」

 驚き過ぎたのか、何も言えずにいる。

「どうした?弟の仇なんだろ?」

「良いのですか?足を引っ張った私が?」

「確かに頭に来た。しかし、しっかりと挽回する立派な働きだった!」

 これは本当にそう思う。上出来過ぎてびっくりしている。俺はベンの肩をポンと叩いて労った。

「感謝します!」

 ベンは目を潤ませている。お互いにいい歳だけど、こういうのも悪くないと思う。


「ファイヤーボール!」

 至近距離からベンの渾身の魔法が放たれた!

 至近距離でも、効果が無い?

「ベン、もっとだ!」

「ファイヤーボール!」

 ベンの魔法では翼の羽すら燃えなかった。普通に考えれば、炎と羽だから燃えても良さそうなものなのに、燃えない!

 焦げ目くらいは無いかと翼に近付いたその時、オウルドラゴンの首が後ろまで回った!

 オウルドラゴンと俺の目が合った瞬間だった。その口が開き、炎が放たれる!


 完全な油断だ。フクロウ同様、真後ろまで首が回るとは!

 今日は防御魔法を掛けていない。もうダメだ!


「光よ!我を守る盾となれ!」

 俺が死を覚悟した瞬間に、リックが咄嗟に光の防御魔法を唱えた!

 間一髪だ!

 光の属性は攻撃よりも防御や治癒が得意らしいので、一緒に居たのが光属性のリックで良かった!

 途端に安心した俺は腰を抜かしそうになる。いや、認めたくないだけで抜かしていたのかもしれない。


「エイジ、大丈夫ですか?」

「助かった。もうダメかと思ったよ」 

「死なせませんよ!」

 リックの表情に余裕は感じられない。今の防御魔法も必死だったのだろう。


 オウルドラゴンはまだ死んではいない。

「リック、もう大丈夫だ!次は俺も魔法を試してみる!」

「了解しました。気をつけて」


 オウルドラゴンを落としたのと同じ、サッカーボール位のファイヤーボールを放つ。


「グアーゴワァ!」

 形容し難い声を上げるオウルドラゴン。その右翼は炎に包まれ、辺り一面には焦げ臭さが漂う。

 翼は燃えた!体はどうか?

 同じ様に放つ。ダメージは有る様だが鱗で守られているからか、体は燃えない。

 こうなれば、球ではなく、弾丸だ!

 詠唱も、名前を考える余裕も無い!

 ただ勝つ事に必死な俺は、機関銃をイメージして炎を出す!

 水や風で倒せるイメージが湧かないから炎だ。

 その炎は弾丸となり、鱗を物ともせずにオウルドラゴンの体を貫く!

 何発かは体内に留まっているが、この留まっている事がポイントだ!貫いたらそれで終わりだが、体内に有れば体内でメラメラと燃え続ける!

 オウルドラゴンは今までに無いほど、苦しそうにしている。

 

 紛いなりにも戦った相手。苦しみを長引かせるのも可哀想だ。絶命するまで連射を続ける。

 程なく、断末魔を上げてオウルドラゴンは絶命した。

 はしゃぐリックや、男泣きするベンを尻目に俺は打ちのめされていた。

 

 こんな戦い方で、何が天才だ。

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