ドラゴンの 墜落作戦 実行中
ドラゴンとしての闘争心なのか、餌への執着心なのかは分からないが、警戒はしつつもオウルドラゴンはこの場を離れない。
見た目だが、100メートル位の高度で旋回している。
それはこちらには好都合だ!
俺は昼間の練習で作った竜巻と同程度の竜巻を3つ作り出した。こんな芸当は、昼間の成功体験が無ければ難しかっただろう。練習はしておく物だ!
2つは行く手を遮り、本命の竜巻に向かわせる為の言わば囮だが、オウルドラゴンにはまだ距離が有る。
竜巻を近付けなくては話にならない。
何か使えないかと周囲を見渡すと、ひたすら馬で走り続けるベンが目に留まった。
「ベン、走るの止めてオウルドラゴンの気を引け!」
俺の叫びが聞こえたベンは、馬の手綱を引いて右手を上げてみせた。そのままの姿勢で、効果が無い事は百も承知のファイヤーボールを放った。
案の定、効果云々以前に、届かない!
だが、オウルドラゴンの動きが変わり、旋回する速度が遅くなった。気を引く効果は有った様だ!
「ベン、ファイヤーボールをもっとだ!」
「おう!」
ベンの太い声が響く。
「ファイヤーボール!」
掛け声虚しく、またしても届かない!しかし、オウルドラゴンは自分に向かって来ても届かない光に興味が湧いた様だ。実害が無いから、遊びのつもりか?
ベンが気を引いている今の内に、3つの竜巻をジリジリと近付ける。
本来、竜巻は積乱雲が発生の条件だが、この満天の星空の下での3つの竜巻というのも中々の光景だ。
頃合いを見計らって、ありったけの小サイズのゴーレムを竜巻に吸い上げさせる。
「ベン、もっとだ!」
「承知した!」
ベンの魔力の残量は分からないが、ベンは汚名返上とばかりにファイヤーボールを放ち続ける。
昨夜だって討伐隊はファイヤーボールを使っていたのに、オウルドラゴンはベンの何を気に入ったのか、気を引く事には成功している。
或いは、単騎で挑む人間が珍しいのか?
竜巻は順調に近付く。
左回りで旋回するオウルドラゴンに対して、正面やや右から1つ目の竜巻を近付ける。
気流の乱れにバランスを取られて不機嫌になった様だが、旋回を続けている。
だが竜巻の影響で旋回の円は小さくなった。
空かさずに2番目の竜巻を同じ様に近付ける。やや怒った様な素振りを見せるが、それも計算の内。
オウルドラゴンが完全に体勢を立て直す前に、本命の竜巻を近付ける。
ゴーレムをぶつける訳ではない。殆どのゴーレムはオウルドラゴンよりも高く上げてある。
俺はタイミングを見て指をパチンと鳴らして竜巻を消した。
「エイジ、何をするのですか?」
「すぐに分かるさ。派手な魔法で撃ち落とせれば良かったけど、魔法は効かないっていうから」
スマートな方法ではないが、勝てれば良い!
竜巻が消えて、巻き上げられたゴーレムは次々とオウルドラゴンの上に落ちて、しがみ付く!
勿論、全てが成功した訳ではなくて、良くて半分程度だろう。それを見越して大量のゴーレムを投入した訳だから、ここまでは作戦通り!
小サイズのゴーレム達はオウルドラゴンの左翼の先端を目掛けて移動を始める。
1体のゴーレムが左翼の先端に取り付いた!それを切っ掛けにして、2番目のゴーレムは最初のゴーレムの足を掴んで下に垂れる。
3番目のゴーレムは2番目のゴーレムの足を掴んで下に垂れる。といった具合に繰り返す。全てのゴーレムがぶら下がると、遠目にも分かる。
オウルドラゴンの翼の先端からブラブラしている様が!
先端という事が大事だった。先になればなる程、掛かる力は大きくなる。
正確な重さは分からないが、仮に1体が100キロだとしたら、10体以上がぶら下がっているので1トン以上が片方だけの翼の先端に掛かれば真面には飛べない筈だ。
おまけに、ゴーレム達がぶらんぶらんと振り子の様に振れれば尚更だ。
後は持久戦だ。
オウルドラゴンも苦しそうだが、こっちだって早く落ちてもらいたい!
待ちきれない俺は、効かないと言われた魔法を使ってみる事にした。
「炎の球!」
サッカーボール位の炎の球を放つと、ベンのそれとは違って勢い良くオウルドラゴンに命中した!
するとすぐに、オウルドラゴンは悶え苦しみながら落ちて来た!
魔法、効くじゃん!




