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コンビニの 資金稼ぎに 竜を狩る

「コンビニ?」

「それは何ですか?」

 当然ながら、2人揃って不思議顔だ。

「分かりやすく言うと、便利なお店って事だ」

「お店?」

「ここは食事をする店ですけど」

「これだけ外に人がいて、その殆どが腹を空かせている。弁当のパンくらいは持っているかもしれないが、良くてそれだけ」

「はい」

「そこで、この店でモーニングを出す!」

「モーニング?」

「朝からお店を開けるのですか?」

 俺の提案に姉妹揃って驚いている。

「エイジさん、それじゃあ夜の片付けが終わってすぐに下ごしらえしないと間に合わないわ!」

 料理人のクロエは真っ向から反対するだろうと思ったが、やはりだ。

「簡単な物でいいんだ!例えば、パンに目玉焼きと少量の肉、あとはサラダ。これを適正価格で提供する。ついでに旅に有ったら便利な物を売るんだ!」

「それじゃ私たちは何時に寝て、何時に起きれば良いの?」

「最初は厳しいだろうが、軌道に乗れば従業員を雇おう」

「エイジさん、私は昨日の天ぷらみたいな料理を教えて欲しいの!」

 クロエは強く反対する。当然クレアもだろう。


「もう教えられる料理は殆ど無い」

「えっ!」

「材料が違い過ぎて、後はどう合わせるかを試行錯誤するしかない」

 今になって思う。醤油って偉大だな!


「そんな!」

「それに思ったんだけど、この店って経営状態って厳しいよな?」

「え!ええ」

 突然、話題をそっちに振られて驚いたクレアが声を絞り出す。

「魔物が出て、材料が滞る前からだろ?」

「どうしてそれを?」

「高い志が有って役人に裏金を渡さないのではなくて、渡す金が無かったんだろ?」

「……はい」

 クレアが力無く答えた。

「だったら尚更、他と差別化する必要があるだろ!」

「それは…」

 姉妹はそれっきり、黙ってしまった。


「そのモーニングをやればお客様が来てくれるの?」

「保証は無い!だけどこのまま座して死を待つよりかは良いだろ!」


「上手くいかなかったら、どうするの?」

 クロエが無愛想に聞いてきた。見るからに不機嫌と言わんばかりだ。

「お前は新メニューに取り組む時に、絶対に失敗すると思って試作品を作るのか?」

「えっ?」

「俺は、どうやって成功させようかを考えている!」

 でなければ、労力と材料と時間が勿体ない。


 クロエとクレアはまだ納得出来ない様だ。新しい試みは何時でも反対は付き物。

「ここに金貨が8枚有る!一月経っても成果が無ければ進呈しよう!更に、俺がこの店の下働きをするって事でどうだ?」

「分かったわ!一月よ!」

 言質は取った!

 金貨の話から表情が変わったから、経営状態は今より悪くなりようが無いくらい、悪い筈だ。


 後は、資金繰りだな。原材料や販売する物を買い揃えなくては。

 今日、売り払う物は俺だけの物ではない。リックと山分けが基本だし、ミラの為にも取っておきたい。


「昨晩の魔物って、退治したら賞金は出る?」

「出る筈よ。詳しくはその辺の冒険者にでも聞いた方がいいわ」

「エイジさん、魔物退治されるのですか?」

「ああ、俺がこれからやる事にも邪魔だからね」

 早速、店の外に出て情報収集だ。


 旅人に声を掛ける。

「町の外の魔物?賞金目当てで挑む連中が多いけど、ことごとく失敗して大怪我しているよ」

「ちなみに、朝食は何を?」

「宿屋が朝食を出す時間まで居られないからね。歩きながらパンでもかじるさ」

「もし、すぐに食べられる安価な朝食を出す店が有ったら利用するかい?」

「あればね!」


 次は冒険者風の男に声を掛ける。

「昨夜の魔物?あれはドラゴンだ!ドラゴンの亜種、オウルドラゴン」

「オウルドラゴン?」

 梟の竜?

「梟みたいなドラゴンだ!夜行性で凶悪なんだ。俺も5日前の討伐に参加したのだが、跳ね返された魔法の氷が当たって怪我してしまったて、ようやく動ける様になった」

「賞金って、いくらだ?」

「金貨300枚!」


 それだけ有れば、足りる! 

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