異世界で 昭和のデパート 再現か
10日間ほど自宅に滞在して関係各所を回ったが、野菜工場もショッピングモールも好調で思わず笑みが溢れる。
特にショッピングモールはわざわざ他の町から泊まり掛けで来る程に好評で、宿屋の宿泊客も増えているそうだ。
「へえ、凄いな!」
同じ日本から転移したハルまで驚いているけど、ハルがこの世界に来た頃の日本にはショッピングモールなんて殆ど無いと思うから驚くのも無理は無いか。
「見てみろハル、目新しい物が陳列して野菜も歩いて数分の野菜工場で作っていて新鮮だ。それに劇場まで在って劇団が交代で上演している他に、テイマーによる小型魔物のショーも見られるんだ!」
「へえ、エレベーターまで有るのか!」
「流石は閣下の魔法でございますな」
ハルとアンドレイを案内しているけどアンドレイはともかく、ハルは何だかお上りさんみたいになっているな。
まぁハルに限らず来場者にこう反応してもらえるとプロデュースした甲斐が有るって物だ。
実際に娯楽の無いこの世界では、このショッピングモールは建物自体がエンターテイメントになっている。
魔法を駆使した照明、エレベーターにエスカレーター、それに劇場も入っている。
特に物珍しさから用も無いのに何度もエスカレーターやエレベーターに乗る人も少なくないそうだ。動力は俺の魔力由来のゴーレムだからランニングコストは抑えられているから構わないけど、これが1種のアトラクションになってしまっている。
「なぁエイジさん、屋上にはやっぱり遊園地が有るのか?」
「!」
ハルがこの世界に転移したのは昭和の末だ。そして昭和のデパートと言えば屋上の遊園地だ!
「それだよハル! 何か足りないと思っていたんだ!」
これで更に娯楽性が増して来客数が凄い事になるに間違いない!
早速責任者を集めて打ち合わせ、と言いたい所だけどいつまでもこっちに構ってばかりもいられない。帰国した目的はまだ全てを果たしていないのだ。
早い所このエリクソン伯爵領の領都に行かなければ。指示を出して帰宅した俺は、領都に向う準備を始める。
「クレア、エリクソン伯爵家の事でアルフレッドと話をしてくる。今度はすぐに戻るからスティード王国に行く準備をして待っていてくれ!」
「判ったわ。私とアーロンだけならすぐにでも行けるけど、姉さんとお店の事を話すわね」
スティードに行くと言う事は移住を意味する。つまりこの地に戻る事は無い。突き放す様で申し訳ないが諸々の事は姉妹で話し合ってもらうしかない。
出来ればクロエも連れて行きたいけれどな。
「閣下、ワイバーンの準備が整いました。いつでも飛べます」
またしても移動はアンドレイに任せるしかない。魔物であるワイバーンを本当に器用に扱う奴だ。
「エイジさん、1年前のクーデターでエイジさんが成敗したエリクソン伯爵の長男に話をしてくるだけなんだろ?」
「ああ。領地を事実上治めている気の良い奴なんだよ。エリクソン伯爵家の事とか話さないとな。あっ、そうだハル、お前はここで待っていてくれ。話をするだけだから」
「ん? 別にいいけど」
滞在時間は1日か2日だろうけど、俺の留守中にまたアーロンが狙われたら洒落にならないからな。ハルが居れば大丈夫だろう。それに昭和のデパートを知る者として屋上遊園地のアドバイザーになってもらわなくては。
流石にヒーローショーまではやらないだろう。
でもやればウケそうだな。考えておこう。
「それじゃ行くぞアンドレイ」
「御意」
俺達は領都に向かって飛び立った。




