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戦利品 鏡が割れて 女の子

25話から28話を飛ばされた方

あらすじです。


 ソマキの村に戻ったエイジを待っていたのは、死んだと思われていたソフィの最初の婚約者のアランであった。

 ソフィを巡ってエイジとアランは決闘をする事になるが、実力差は歴然としていた。

 手加減しながら戦うエイジだが、負けを認めないアランに痺れを切らして特大のファイヤーボールを用意する。

 だが、それを止めたのは身を楯にしたソフィだった。

 勝負はエイジが勝ったが、ソフィが選んだのはアランであり、エイジは失恋する。


 そして、「連れて行って!」と懇願するステラに未練を残しつつも、ステラ以外の村長は考えられないエイジはリックとソマキの村を後にした。

 俺とリックがソマキの村を出たのは、俺の心境とは対照的な、穏やかな昼下がりだった。

「リック、何処に向かっているんだ?」

「僕たちは北に向かっています。この分だと夕方には町に着けそうです」

「どんな町だ?」

「アベニールという町です。結構大きい町ですから、色々と楽しめると思いますよ」

 それは楽しみだ!

「じゃあ、荷台の物も売れるかな?」

 荷台に視線をやる。俺が決闘の前に積んだ物とは違う。どういう事だ?

「えっ!売る為に積んであったのですか?」

「リックこそ、それでこの馬車にしたんじゃないのか?」

「他の馬車にも積んでありましたが、この馬車が1番荷物が少なかったので、これににしました」

 それじゃあ、俺が倉庫から積み込んだ馬車は偶々、保護した娘達を乗せた馬車で、他の馬車には積みっぱなしだったのか?

 荷車の分だけで倉庫が一杯とは、カールの奴はどれだけ持って来たんだ?


 このアベニールという町は4メートル位の高さに積まれた古い煉瓦造りの壁に囲まれた町で、町に入る門には行列が出来ている。

 どうやらアベニールの町に入るには、通行手形というか身分証明書の提示が必要の様だが、俺は無い。

「大丈夫ですよ。僕がいますから」

 リックは笑みを浮かべ、自信満々に言った。


「次!」

 俺達の番になった。本当に大丈夫なのか?

「王宮魔術師のリック・レイスだ」

 リックは何かを見せる。王宮魔術師の証か何かか?

「アベニールにようこそお出で下さいました!お通り下さい!」

 検査など全くされずに馬車ごと門を抜けて町に入った。

「王宮魔術師はこんな感じですよ」

 どうやら王宮魔術師の効果は俺が思っているより大きいみたいだ。


 改めてアベニールの町並みを見ると、これぞ!と言った感じの光景が広がっている!

「おお!」

 思わず声に出してしまったが、これは凄い!

 変な表現だが、欧州の古い町並みの新品バージョン!

 何かのテーマパークに来たかの様だが、リアルな感覚なのでテーマパークよりも遥かに高揚する!


「これを売って、金を作って宿屋に泊まろう!」

「そうしましょう。身軽な方が何かと便利ですから」

 積荷で1番の大物は、巨大な鏡台!

 割れ物だし、早く手放したい。

 リックの話だと、鏡は高価で贅沢品らしい。異世界ってやっぱり現代日本とは違うな。

 町の人々から情報を得て、引き取ってくれそうな家具屋等を廻り、当然、最高値の店に売る。


「鏡台を売りたいのだが」

「鏡台?見せてもらおうか」

 家具屋の店主は億劫そうに答えた。

「中々無い逸品で、大きいから運ぶのも大変だ。馬車に積んであるから、見に来てくれ!」

「分かった。どれどれ」

 店主は、よっこらしょという感じで立ち上がり、ヨタヨタと馬車向かう。


「これは!」

 鏡台を見た店主の態度が変わる!

「あんた!これを何処で手に入れた?」

「頂き物だから」

「これなら、金貨5枚、いや6枚出す!」

「6枚か」

 店頭のこれよりも小さい鏡台が金貨20枚とあった。この鏡台は30枚位か?

 30枚だとしたら、原価3割の法則からすると金貨3枚足りない。

「ありがとう。他を当たってみる」

「待ってくれ!」

「金貨6枚じゃあ」

「今すぐ売ってくれるなら、10枚出す!10枚以上出す店は無い筈だ!」

 日も傾いているから、早く決めたいのが本音だ。

「分かった。その熱意に負けたぜ!」


 商談も終わり俺は金貨10枚を受け取る。

 貨幣価値が分からないが、リックが聞いて驚いて言った。

「一般労働者の半年分の収入と同じ位ですよ」

 この鏡台は多分その3倍の値段で売られる。アンティークの価値も有るが、どれだけ高価なんだ!


 だが、その場はそのままでは収まらない。

 鏡台を馬車から降ろして店に搬入している時だ。若い店員が重さに耐えかねて落としてしまった!

 鏡には大きなヒビが入り、商品価値が無くなってしまった!

「バカヤロー!何やってんだ!」

「すいません!」

 怒鳴り散らす店主に、必死に謝る店員。俺も今までは怒鳴られる側の人間だったから、自分が怒られている感じがして気分は良くない。


 ペキペキ!

 ヒビの入った鏡から音がする。よく見れば、ヒビが入った箇所が動いている。


「気持ちは分かるが、店の前は怒る場所ではないだろ」

「あんたは売り切った後だから良いだろうけど」

 当然だが、店主は俺にも憮然としている。

「怒るなら店の中でやってくれ。天下の往来で晒すもんじゃないだろ」

「ふん、それもそうだ。お前、こっちに来い!」

 怒っている店主と、しょぼくれる店員は店の中へと消えた。


「エイジ、この鏡の割れ目から魔力を感じます」

 まさか、魔法の鏡なのか?

「鏡の裏に何か有る様だ」

 そういえば、鏡台の鏡の裏に覚せい剤を入れて密輸した事件があったけど、まさかね。

「何が入っているのでしょうか?」

 ヒビの動きが激しくなる。そして遂に鏡が割れて姿を現した。


「ここ、何処?」

 まだ小さな金髪の女の子が、鏡の中から眠そうに出てきた。

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