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復興で 新しい国 作ろうか

 早い物で終戦から1年近く経った。

 

 既に戦勝国であるディラークによる戦争裁判が行われ、スティード王国の国王だった男、ラファエロ=スティードの処刑が速やかに行われてスティード王国はその歴史に幕を閉じた。

 とは言う事になってはいるが処刑なんて書類上だけの事で、実際の前国王は至って健やかに軍の監視下に在る。

 国王だった時よりも食事は質素になった筈だがそれが良かった様で、規則正しい生活を送って顔色も良くなっている。

 早速どんな魔導具を造ろうか構想を練っているらしくて、偶に様子を見に行く度に表情も穏やかになっていった。

 報告によれば監視役とも親しげに話す様になったそうだ。

 彼にとっては国王でなくなった事は歓迎すべき事なんだな。やりたかった魔導具造りに没頭出来るし。


「閣下、ディラーク本国より追加の文官が到着した様です」


「ようやく到着したか。長旅で疲れているだろう。先に行って出迎えてやってくれ。俺もすぐに行く」


 プチゴーレムを通してリックと話し合った結果、スティードはディラーク本国に併合しないで、属国にすると決まった。

 これはディラーク王国が急激に領土を広げる事により生じる周辺諸国との緊張関係を考慮した為だ。

 下手したら周辺諸国巻き込んでの領土争いに発展しかねないからだそうだ。

 この国はこの先どうなるのか? 新しい国の形はまだ未定だけど、取り敢えず統治に関してはディラークの文官達が頼りだ。

 最初はスティードの連中に気を遣っスティードの官僚を使って新しい国を作ろうと思っていたが、連中に任せていたら一向に進まなかった。どうやら各方面から賄賂を受け取った為に便宜を計ろうとして事が進まなかったらしい。

 なのでディラークから人材を送ってもらっている。

 今日は追加でディラーク来てもらった文官が到着する日だ。やってもらいたい事は山程有る。期待しよう。

 あと頼りにするのは早々に寝返った貴族達。早々に主君を裏切る行為は考え物だけど、王都攻めの際には国王の説得を願い出て来たのは評価出来る。

 その辺の身の振り方からして決して愚鈍な連中ではないだろうし、単なる裏切り者ではない。所領は安堵したし、この土地に詳しいのだから頼りにするしか無いな。



「閣下、一大事です!」


「どうした?」


 俺なりに新しい国をどうしようか考えながら出迎えの支度を整えていると、先に文官の出迎えに行っていたマキシムが血相を変えて飛び込んで来た。


「兎に角、お急ぎ下さい!」


 理由も告げられないまま急かされても気乗りはしない。それでも早足で向かった先に立つ人物を一目見ればそんな気も吹っ飛ぶ。


「やぁエイジ、本当にお疲れ様でした」


「!」


 文官に混ざって来た爽やかイケメン、リックだ!


「リック、何故ここに?」


「何かおかしい事が有りますか?」


 確かにリックはディラーク王国の若き国王だ。新たに属国化する土地に来ても何の不思議も無い。

 でも来るなんて聞いて無い!

 しかも長旅で疲れているだろうに、何故そんなに爽やかなんだ?


「リック、一国の国王が来るのなら言ってくれよ!」


 思わず声が裏返ってしまったが、それくらい驚いた。


「サプライズですよ」


 そんな事をやっていい立場じゃないだろ!


「それよりもエイジ、お疲れ様でした。各種人材を連れて来ました。少しは楽になりますよ」


「それは有り難い。これで休めるか」


 終戦して復興にも取り掛かっていたからな。寧ろこっちの方が休みが無くて困ってた。元々疲弊していた国だから本当に苦労している。

 でも復興が遅れて得する人間なんて居ないから必死だった。よく働いたと思うよ、我ながら。

 

「取り敢えず場所を変えましょう。積もる話も有るでしょうから。それに僕からも提案が有ります」


「提案?」


「はい。ディラークとスティードの将来についての提案です」


 リックの口元が緩くなっている。これは何か企んでいるな。

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