王宮が 巨人改め 巨狸か
「王宮が巨人になった?」
俺は早速マキシムの持つプチゴーレムが見た映像を確認してみる。
確かに建物の中央部分がそのまま上半身となり、下半身は土で出来た巨人が立っている!
建物の両端は巨人が立ち上がる際に引き千切られて地上でそのままになっている。そしてその上半身側の千切れた部分からは、やはり土製だと思われる腕が生えている。
確かに巨人だ!
「さっきの揺れはこれだったのか!」
周囲の建物との対比からしてもかなり大きい!
巨人の上半身になった王宮の中央部分は5階建てだが、千切れた方の建物だって3階建てだ。それが膝位の高さなのだから恐らくは50メートル以上はあると思う。
この大きさ、最大限に巨大化したインフェルヌスでさえも、全く敵わないだろうな。
更に言えば下半身と両腕は土なのだから、インフェルヌスで対抗しても燃えないって事か。
「お前ら許さん。覚悟しろ」
またスティード国王の声がする。どうやらこの巨人で俺達に対抗しようって魂胆か。
「余に逆らう者は皆殺しだ!」
この声色からしてかなり怒っているな。
「私達を倒す為に王宮を巨人にしたのね。でもそれで勝ったとしても、その後に王宮はどうするつもりなのかしら?」
さゆりが随分と冷めた口調で言う。でも確かにそれもそうだな。多分だけど、もう元には戻らないだろうから随分と無駄の多い戦い方だ。
「それによ、俺達は中に居るのにどうやって戦うんだ?」
ラーイの素朴な疑問だが、もっともだ!
大声出せば聞こえるみたいだから、ちょっとスティード国王に聞いてみよう!
「おい、この王宮はどうなるんだ?」
「なに?」
「俺達を倒したとしても、王宮も無くなって何処に住むつもりなんだ?」
「うっ、うるさい! そんな事はどうとでもなる!」
見た感じ国王が住むに相応しい建物は他に見当たらなかったけどな。
「それに、俺達は中に居るのにどうやって倒す?」
「えっ!」
スティード国王は絶句し、その後は沈黙が訪れる。
後先考え無しに切り札を出してきたって事なんだろうけど、どうして良いのか判っていない様だな。
「ねぇエイジ、スティード国王ってバカなんじゃないの?」
俺もそう思う。
「だっ、黙れ! 殺ってやる! お前らなんか、こうしてやる!」
ドッオォォォン!
「なっ、なんだ?」
再び激しい音と振動が俺達を襲った!
ドッオォォォン! ドッオォォォン!
それは繰り返されるが揺れるだけで俺達自身に特段のダメージは無い。
「閣下、如何されましたか?」
プチゴーレムからはマキシムの心配する声が聞こえた。
「いや、特には何も」
「そうでしたか。あの、巨人が…」
「どうかしたのか? 中に居ては見えない。プチゴーレムに巨人を映させてくれ」
俺はマキシムのプチゴーレムから送られる映像に精神を集中させる。
「!」
言葉を失った!
巨人が中にいる俺達を叩こうとしているのか、左右の手で交互に腹を叩いている!
まるで昔話の狸みたいに!
「何をしているんだ、スティード国王?」
「フッフッフ、驚いたか? お前らを叩き潰してやる!」
確かに驚いたけどそれは違う意味だ!
「もう行くぞ。スティード国王とは話し合う価値は無い。近くの壁を破壊して脱出するぞ!」
もうこんな巨人ならぬ巨大タヌキに付き合う道理は無い。
外に出たら躊躇無く破壊してやる!




