敵城に 乗り込む前に ブチかます
さゆりの傀儡となっていたエドガーの身体が雑巾の様に捻じれ首はもげた。
「何だか判らんが凄い魔力だったな!」
あれは間違いなく王宮内からエドガーを狙った魔力。正確に言えばエドガーだけを狙った強力な魔力だ。コントロールも正確で、かなりの魔術師である事は間違いない。
「閣下、如何なさいますか?」
「どうやらあちらは、平和的に争いを終わらせる意思は無い様だな。とは言えあの魔力は侮れないな。警戒すべき魔力だ」
王宮へ入るメンバーまで選んだのにまたプラン変更か。
魔法を使えない一般兵は危険だな。標的になって無駄死にするだけだ。ここは少数精鋭で乗り込むしかないだろう。
「兵士を連れて行くのは止めだ。乗り込むのは俺の他には、アンドレイ!」
「御意」
「ラーイ!」
「おう!」
「シルヴァ!」
「畏まりました!」
「以上だ。通信用にプチゴーレムを各自持って行け!」
「あの閣下、私の名がございませんが」
マキシムが食い下がってくるがこの先は危険が満載だ。少なくてもエドガーをボロ雑巾にした魔力攻撃から自分の身は自分で守れる魔力を持った人間しか連れて行けない。
そう言う訳で残念ながらマキシムはプチゴーレムでのリモート参加となる。
「私も行くわ!」
「ダメだ!」
さゆりも行こうとするが、当然ながら却下に決まっている。
「何でよ?」
「危険だって言ったろ。中の構造だって判ってないんだ。何が起こるか判らない以上は連れて行けない!」
「私なら中の構造をある程度は知っているわよ」
そうか、宰相の中の人としてエドガーを操っていたから王宮の中の事を知っているのか!
「それに私はエイジが守ってくれるんでしょ?」
「もう、しょうがない。俺の傍から離れるな」
「うん」
さゆりが不意に赤くなって俯くと、何とか聞こえる程度の小さな声で答えた。
「なぁ大将、口説くのは終わってからにしてくれや!」
ううっ、正論を言われてしまった。それもラーイに!
「行くぞ! 忘れ物するなよ!」
とは言えこのメンバーに持って行く物なんて殆ど無い。強いて言うならマキシムの代役をしてもらうアンドレイくらいか。
「特にアンドレイ、持って行く物は余分に持って行け。これはお前にしか頼めないからな」
「御意」
答えながらアンドレイはクックックと含み笑いをする。どうやら俺の言いたい事が通じて要る様だな。
「ねぇエイジ、抵抗したら極大魔法って言ってあるんだから、入る前にドカンとやっちゃえば?」
それもそうか!
何も敵が待ち構えている所にバカ正直に行く事もないか。罠とか絶対に有るだろうし。
「よし、派手にブチかましてから乗り込むぞ!」
そうと決まれば先ずは爆裂魔法だ!
右手を王宮に向けると、ニュース映像で見たミサイルの着弾時をイメージして爆裂魔法を放つ!
見た映像は数発だが、俺の魔力は無尽蔵だ!
「次はこれだ!」
次は何処かの海軍の戦艦による艦砲射撃をイメージ!
こっちは左手を王宮に向ける。これで王宮は正面と上空から砲撃されている訳だ。
「エイジ、打ち方止め!」
俺の背中を叩いて砲撃を止めさせたのはさゆりだった。
「どうかしたか?」
「最上階は無くなって、もう建物の形が変わってしまったわ。ねぇ、このままじゃ乗り込みようが無くなるわよ!」
確かに。これでは敵城に乗り込むって言うより、廃墟の探検になってしまう。




